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読み切り短編集  作者: おしるこ


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38/61

趣味に生きる者たち

あれ…そういえば…

最近アイツに会ったのいつだっけ?


ま、いいや


元気にやってんだろ


〔えー?それでなに、2ヶ月も会ってないの!?

それ、ほんとに付き合ってんのか?〕

『まぁ…付き合ってるだろ

別れようとは言われていないな』

〔いやいや…好きなら会いたくなるじゃん〕

『んー…やること多いんだわ』

〔…その趣味の多さなんとかしないとやばくねぇか?〕

『なんで』

〔愛想つかされちまうぞー?〕

『…それは困るな』

〔だろー?連絡してやれってー〕

『あー…そうだなぁ…』

〔あ、じゃあ後でな!俺も仕事終わらせてくるわ〕

『おう』


まぁ、それから連絡するのが

1週間くらい過ぎてしまったわけだが


"元気にしてるのか?"


…親かよ


"珍しいじゃん!護から連絡くれるなんて!

元気元気ー!忙しいけど"


"そっか それならいい"


"なぁに?そろそろ会いたくなったー?"


"あー…まぁ、そうだな"


"んーじゃあ、明日の夜とかご飯食べよっか!

時間あるならうちにおいでよ"


"わかった 明日な"


…こうして連絡を取れば

自然と会う流れにはなるから

愛想つかされるとか、何にも考えてなかった


そもそも、莉音に連絡する時も

仕事中の方が早い


夕方以降に連絡しても

ほとんど未読のまま朝に返ってきたりする


アイツはゲームが趣味だから


最初は返事が遅いことが気になっていたが

半年もすればそういうやつなんだ、と

納得もしている


無理強いはさせたくないしな


俺はというと夜釣りに行ったり

バッティングセンターに行ったり

同僚と飲みに出たりしているから

休みの日も基本的にはあまり家にいない


お互いに趣味に生きている


でも、お互いに相手の趣味には立ち入らない


合わないからだ


それでもうまくやってると思っている

俺は、な


付き合い始めてから、もう3年になる


まぁ、アイツがどう思ってるかはわからない


これから先のこととか、なんか考えてんのか?


あ、待てよ…

明日ってことは…




【莉音point of view】


前に護に会ったのっていつだったっけ?


あー…2ヶ月も前なんだ

ちょっと空いたね


だから連絡くれたのかな


最近新しいゲームが出たからそれを進めるのに夢中で…

家にいる間は、ほぼゲームしてる


レベル上げでしょ?

武器や防具買うのにお金貯めなきゃでしょ?

サブイベントでしょ?

毎日の日課もある


それを3こ同時並行で進めている

スマホ2台持ち!


時間が何時間あっても足りない

充電も足りないし


それに、わたしはある程度睡眠時間も欲しいから


休みの日は朝から晩までずーっとゲームできるから

平日はそのためだけに仕事してるってかんじ


明日かー


本当はストーリー進めたかったんだけど


会いたいって言ってくれたから護が優先


会えなくても大好きだし


ご飯作って待ってよう


カレーにしよう 護はチキンカレーが好きだから


そうと決まれば今日は買い物をして帰って

明日帰ってきたらすぐに作れるように準備しておかなきゃね



えーっと…

にんじん、玉ねぎ、じゃがいも…っと

鶏もも肉と、ルーと、コンソメ…

あっ!ローリエがなかったんだ!買わなきゃ


お米あったっけ…?

足りないと困るから2kgだけ買っていこうかな


…

あー…重ー…

これから家まで20分以上歩くことを忘れてた…


『ずいぶん大荷物だな』

《え?護!?なんで…明日だったよね?》

『…お前は俺が行くっていうと、前日に買い物するだろ 俺が持つから』

《…ありがと!》

『…』


思いがけず彼氏に会えたことが嬉しい


あぁ、やっぱり好きだなぁって思う


《護は元気だったの?》

『あぁ 変わりない』

《それならよかった 最近釣りは行ってる?》

『行ってる この間はボウズだったけどな』

《釣れなかったってことだっけ》

『そ』

《それでも楽しいの?》

『そうだなー』

《釣れない間って何考えてるの?》

『え』

《…?》

『あー…まぁ、その、なんだ…』

《なぁに?歯切れ悪いけど》

『釣れたらお前に食わしてやろう、とか…』

《…!え、めっちゃわたしのこと好きじゃん》

『…それは、そうだろう 付き合ってるんだし』

《そだね!嬉しい!》

『お前は、その…』

《大好きだよ!こうして準備するくらい!》

『…ん』


顔赤い…こういうところ、可愛いんだよね


《もう帰っちゃうの?》

『あぁ…今日は先約があってな

これ、カレーだな 明日楽しみにしてる』

《そっか!わたしも、護が来てくれるの楽しみにしてるね!》

『…うん じゃあ…』

《あ!護!》

『うん?』

《…ありがとう、来てくれて!》

『…』



【護point of view】


まったく…

帰り際にキスしてきたアイツが可愛くて


…待ち合わせに2時間も遅れた


『すまん、遅れた』

〚いいよいいよ!先始めてたぞーってか、彼女のとこ行ってたんだろ?リスケして良かったのに〛

『…や、明日も会えるからな』

〔珍しいな、2日連続かよ〕

『…ん』

〔シャワー浴びて来たみてぇだし、愛想つかされずに済みそうだな〕

〚何?お前らやばいの?〛

『…大丈夫…な気がする わからんが』

〚俺らもいい歳だからなーそろそろいろいろ考えないとなぁ〛

〔俺は考えてるけど〕

『結婚か?』

〔しない!〕

〚え?別れたの?〛

〔いや、趣味に生きたいからしないって決めただけ付き合ってるけど、結婚はないって言ってある〕

〚へぇーそれでも付き合ってくれてんのか〛

〔彼女も結婚願望がないらしい〕

〚そういうもんかー 俺も彼女欲しーなー

そんなに会えるかわかんねぇけど〛

〔お前の趣味はゲームだからなー

一緒にできる子とかがいいんじゃないか?〕

〚オンラインで探そうかな〛

《いいじゃん!てか、今から探せるっていいよな

付き合い始めるまでが楽しいみたいなとこあるだろ》

〚それなー〛


同じ趣味の人同士、か…


まぁいろいろな考え方があるよな


あ…

アイツもゲームやる人の方がよかったりするのか…?




今まで考えてこなかったことが

次から次へと心にこびりついてくるようで

途端に心配になってくる


さっきまで愛し合ってたはずなのに

どうしてこんなに不安になるのか


その時はまだ、自分でもよくわかっていなかった




次の日


"もうすぐ着く"


"はーい!準備できてるよー!"


…昨日から、胸が苦しいというか

不安であまり眠れなくて


こんなこと初めてだった


《護!》

『外で待ってたのか』

《うん!会いたかった!》

『…昨日も会っただろう?』

《えー毎日会いたいもん》

『…初めて聞いたぞ』

《そうだね!初めて言った!》

『…他にも言ってないこととかあるのか』

《んー?一緒に住みたい!とか?》

『…』

《なぁにー?その顔ーわたしだって好きだもん!

考えるよ!》

『あ、そうではなくて、だな…』

《ん?じゃあなに?》

『…住むか 一緒に』

《…え、でも…いいの…?》

『問題ない』

《わたしがゲームやってる間つまんなくない?》

『その時は…後ろから抱きしめてればいいだろう?』

《違うとこに集中しちゃいそうだぁー!》


ケラケラと笑っている莉音を

ずっとそばで見ていたくなる


あんなに放っておいたのに

離れたくなくなる


《はい!カレー!召し上がれー》

『いただきます』

《うん!いただきまーす!》

『…おいしい』

《カレーはいつ食べてもおいしいもんねー!》

『…』


カレーは好きだから

外でもよく食べてるけど


そうじゃない

莉音が作ってくれる、このカレーがおいしいって…


『おかわりある?』

《え?なんかペース早くない?おなかすいてたの?まだまだあるよー!…はいっ》

『ありがとう』


うん

やっぱりうまい


《そんなによろこんでもらえてよかったよ!

市販のルーだけどさ♪》

『莉音』

《ん?おかわり?》

『結婚しよう?』

《え…》

『いや、結婚してくれ』

《する!する、けど…どうしたの…?》

『…』

《…いろいろ考えてくれたんだね、ありがとう

ずっとそばにいさせてね、護》

『…ん』


どうしたの?なんて聞かれると思ってなかった


そりゃそうか

今まで放っておいたのに

急に一緒に住むだの、結婚だの…



でも、莉音がいなくなることを考えたら

趣味なんかどうでもよくなるくらい

そばにいたくなった


《えー?わたしが愛想つかすって?あははは!》

『…』

《そんなこと考えたこともなかったよー

こんなに好きなのにー》

『でも俺、だいぶ放っておいたろ…』

《わたしもゲーム楽しんでたからねー

最初の頃はさびしかったけど、お互いが楽しんでるならいいかなー?って

でも、こうしてそばにいてくれるのは大歓迎だけど!》

『そうか 安心した』

《結婚しても、趣味とか減らさなくていいよ

我慢とかさせたくないの

子どもが生まれるとかだったら別だけど!》

『それは莉音もそうだぞ』

《うん!ありがとう!

でもね、わたしの1番好きなものって

護だからなぁー》

『…ゲームより、か?』

《当たり前じゃない!》

『そうか』

《もしかして…》

『ん?』

《わたしのことより釣りの方が好きなの?》

『そんなわけないだろう』

《でしょ?同じだよ!》

『わっ!どうした…』


急に抱きつかれて、おでこをグリグリされる


俺はこれが、マーキングされてるみたいで好きだ


こういうひとつひとつの仕草が

たまらなく可愛い


《護》

『なんだ?』

《愛してるっ》

『…!…あー、今やっとわかった気がする』

《ん?なにが?》

『いや、自分がどうして急にこんな気持ちになったのか、わからなかったんだが…

莉音のことをどうしようもなく愛してるってことなんだな』

《…》

『なんだ、変なことを言ったか?』

《…ううん!

わたしもどうしようもなく愛してるっ…!》





〔あれ?今日、護来ないんだっけ?〕

〚金曜はゲームの日だろ〛

〔あーそうだった!

あいつら、お互いの趣味に手ー出し始めたんだっけか 1番いい形に落ち着いたよなー〕

〚うらやましいぜー〛

〔そういや、どーなったのよ オンラインで彼女探すってやつ〕

〚あーオフ会ってか、飲みに行く約束はしたんだけどなー〛

〔へぇーいいじゃんよ!〕

〚でもなーあいつら見てるとさ

別に趣味合わせなくたってうまくやれんだなーってさ〛

〔相手次第よなー俺の彼女は合わせる気がないしよ〕

〚…やめろ 夢を壊すな!笑〛



タイトル〘趣味に生きる者たち〙


 

                     Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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