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読み切り短編集  作者: おしるこ


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34/61

どれだけ邪魔されたって俺たちなら…

ずっと好きだった人と

付き合うことになったんだけど


彼には他に好きな人、ううん


"本命"がいるのかもしれない




「それで?どこに行きたい?」

〔浩輔くんの行きたいところで…〕

「えー?千紘の好きなところ言ってよ

わがままも言っていいし」

〔うん…!ありがとう!〕

「こうちゃん、もっとぎゅーってして!とかさ!」

〔…うん、そうだね 少しずつ頑張るね〕

「うんうん!」


うまく笑えていたかな


私、そんな呼び方したことないよ

それは…

みゆきちゃんの口調だよ…




みゆきちゃんと浩輔くんは

とても仲が良くて

誰がどう見ても

付き合ってるって思うくらい


でも、浩輔くんは

私に声が聴きたい

会いたい

もっと連絡してほしいって言う


そんなふうに言われたら…

私だって、浩輔くんのことは好きだから…

うれしかったの

だから、連絡が来るたびにドキドキして…


友達には

『でもあいつ、本命はみゆきなんだろ?

あんまり熱上げるなよ

傷つくの、お前だぞ』

なんて言われた


本気で好きになったらいけない人なのかな…


でも


でもね


連絡が来ると 拒めない


どうしてなんだろう…


自分で自分がわからない



『…あのなぁ』

お弁当を食べていると本橋くんが声をかけてきた

〔え?〕

『そんな暗い顔して飯食ってうめーのかよ』

〔…んー〕

『そりゃ恋愛ってつらいこともあるけど、

楽しいもんだろ ずーっとつらそうな顔してんじゃん』

〔そんなこと…〕

『そんなことないわけないだろ』

〔…〕

『そうだ ちょっと、スマホ貸してくんない?

ロッカーに置いてきちゃったわ』

〔うん、いいよ〕

『…』


『ありがとな』

〔うん どうかしたの?〕

『調べもんしただけ』

〔そっか〕


お昼も終わって仕事へ戻って

『あ、そういや課長から買い出し頼まれてんだ

ついてきてくんない?』

本橋くんにそう言われて買い出しに出た


〔結構多いね…重い…〕

『人使い荒いんだよなー大丈夫か?持つぞ』

〔あ、ううん 大丈夫

もうちょっとで着くし頑張ろう〕

『あ、千紘、髪になんか付いてる』

〔ん?〕

『………ほら、取れた』

〔ありがとう!〕

『おう 行くか』

〔うん〕


ん?浩輔くん?

え?何か…すごい勢いでこっちに…

「…何してんの」

〔え?〕

「千紘は、俺の彼女なんだけど?」

『?だから?っていうか、そう言ってるけどいいのかー?みゆきぃ』

「え」

〈…ふーん…そっかぁ こうちゃんはあたしの彼氏ではなかったわけね りょー〉

〔…〕

「あ、いや…」

そういうとみゆきちゃんは会社の中に入って行った

どうしたんだろう

みゆきちゃん、外に出る部署じゃないのに…

「あ、待って…」

浩輔くんはみゆきちゃんを追って行ってしまった


〔戻ろう、本橋くん〕

『あの二股野郎…』


二股…

その言葉が 胸に刺さった


『だいじょーぶか?』

〔え?なにが?〕

『…思ったより元気そうだな?』

〔うん なんかね、自分でも驚いてる〕

『ま、元気ならいいや』

〔ありがとう 心配してくれて〕

『そりゃ心配はするだろ

言っとくけど俺の方が好きだから お前のこと』

〔…〕

『気づいてたろ?次は俺にしろよ?』

〔…考えさせて〕

『わかってるよ ゆっくり考えてくれや

俺のことだけをさ』

〔…〕


…うん 気づいてた

とても優しいのは知ってるし、

私のことを心配してくれてることも…


でも…

ドキドキっていう感じじゃなくて


贅沢だよね

こんなに想ってくれてる人がいるのに



〈ねぇねぇ〉

〔あ、みゆきちゃん…〕

〈いつから付き合ってたのぉ?〉

〔えっと…1ヶ月経たないくらいかな…〕

〈ふーん それで?〉

〔え?〕

〈どこまでシタぁ?〉

〔あ…私とは…全然…〕

〈ふーん…そう わかったぁ〉

〔…〕


そんなこと聞いてきてどうするんだろう?

二人は仲直りするんでしょう?


私には…もう関係ないのに


『おいっ』

〔あ、本橋くん〕

『今みゆきいたろ?大丈夫だったか?』

〔え?何もないよ ちょっといろいろ聞かれたけど〕

『なんて?』

〔いつから付き合ってたの?とか…その、どこまで…とか?〕

『マウントでも取りに来たのか?』

〔うーん?そんな感じじゃなかったかなぁ…〕

『まぁ、お前が気にしてないならいいや

帰るんだろう?お疲れ』

〔うん、お疲れさま〕


あれから浩輔くんからの連絡はない

これで終わりってことだよね


私は妙に納得して、家に帰った



【浩輔point of view】


↷昼休み


千紘が仕事中にRileを送ってくることなんて初めてで何かと思ったら

"午後から本橋くんと買い出しに行ってきます"

と書いてあった


2人で…?

俺は外回り中だったんだけど

ちょっと心配になって会社に戻ることにした


仕事自体はそれからでもなんとかなるし

なにより…

本橋はあいつに惚れてるから心配だった


…帰ってきたはいいけど

どこにいるんだ…?

連絡しても繋がらないんだよな


まだ出先にいるのか…?

あ、来た来た

随分大荷物なんだな…手伝うか


は?

急に立ち止まったからどうしたのかと思ったら

本橋が千紘にキスした…?ように見えた

ふざけんな…

千紘もなんで抵抗しないんだよ…


俺は走って2人の元に向かってた


「…何してんの」

〔え?〕

「こいつ、俺の彼女なんだけど?」

『?だから?っていうか、そう言ってるけどいいのかー?みゆきぃ』

「え」

〈…ふーん…そっかぁ こうちゃんはあたしの彼氏ではなかったわけね りょー〉

〔…〕

「あ、いや…」

なんでこんなことに…

みゆきが会社の中に入っていく

「あ、待って…」

千紘は後で話せばわかってくれるだろうから

俺はみゆきと話すことを優先した


「みゆき!」

〈こうちゃん 追いかけてきてくれたのね!〉

クルッと振り返ったみゆきは笑っていて…

ゾワッとした…怖いくらいに

「あ、いや…なんであんな嘘ついた?俺はみゆきと

付き合ったことなんてないだろ」

〈えー?これから、付き合うことになるんだからよくなーい?〉

「は…何言って…俺は、千紘と…」

〈こうちゃんこそ何言ってるのー?こんな状況で

このまま付き合っていけると思ってるんだぁ〉

「…え」

〈こうして、あたしのことを追いかけてきてる時点で もう終わってると思うけどぉ?〉

「いや、千紘は話せばわかって…」

〈わかってないなぁー女はね、自分を優先してくれる男が好きなの〉

「…ちょっと、戻るわ」

〈行かせるわけなくなぁい?〉

「え」

〈やーっとこうちゃんを千紘から離せるチャンスなんだもん!それにねぇ 千紘は今頃、倫也とよろしくしてると思うー〉

「そんなことあるわけないだろ…あいつは…」

〈…絶対に別れさせてやる〉

「え…?何かいったか?」

〈あれ、

こうちゃん〇〇商事に行かなくていいのぉ?〉

「あ… くそ…とりあえず、もう変な嘘はやめてくれ!」


早く行かなきゃ…遅れたらまずい


千紘にはRile入れておいて…

あとでゆっくり話そう


あいつなら、わかってくれるはずだから


そんなふうに思ってたのに


…なんで連絡取れねぇんだよ

ブロックされたのか!?

仕事が終わって千紘のとこに来てみたら、

もう帰っていないし…


家もまだ教えてもらってないんだよな…


どうするか…


人事に行って千紘の番号聞いてくるか…?

いや、教えてはくれないだろう…


あ!!

あの人は千紘と仲良い子だ…


「すみませんっ!ちょっと…!!」



【千紘point of view】


ん?なにこの番号…誰?


普段だったら知らない番号は出ない…

でも、この時は…


〔はい…〕

「よかった!俺!なんでRile返してくんねーの」

〔え…来てませんけど…〕

「は!?何回も送ったのに…」

〔あ!ちょっと待って…!〕


やっぱり…

〔ごめんなさい ブロックされていて…〕

「千紘がしたんじゃないの?」

〔するわけないで…あ…〕

「ん?なに」

〔昼間、本橋くんにスマホを貸した時…?〕

「ちょっと待って ねぇ、その前に 昼間俺にRileした?」

〔いえ…お仕事中にRileはしませんから…〕

「だよな…ねぇ、今から会えないか?」

〔あ、はい…どこに行けば…〕

「…家には、呼んでくれない?」

〔あ…どうぞ…その、散らかってますが…〕

「そんなのはいいよ 駅どこ?すぐに向かう」


通話を切った私は、片付けられるものは片付けて…

手を動かしながら

考えていた


本橋くんが何か操作したの…?

もしかして、みゆきちゃんがあの場所にいたことも…


"ピーンポーン"

〔はいっ〕

「はぁ…はぁ、千紘…」

〔大丈夫ですか!?今お水を…「会いたかった」

〔え…〕

抱きしめられている…

初めてのことだった


〔浩輔くん…?〕

「ごめん…ごめんね…」

〔いいですから、もう…私、諦められますから〕

「待って、違うから」

〔え…?〕

「信じられないかもしれないけど、俺はみゆきとは付き合ってない」

〔え…でも…〕

「本当だ 俺ずっと千紘しか見てない」

〔…〕

本当だったらうれしい…けど…

「わかってる 信じてもらえないのは俺の日頃の行いだよな…さっきだってみゆきと話しつけてからって思って千紘を置いてったし…」

〔…〕

「でもね、これだけは信じて

俺…千紘だけだよ 本当に 好きなのは千紘だけ」

〔…ありがとう、浩輔くん

とりあえず、座って…〕

「あ…うん」


私も落ち着かないと…

コーヒーを淹れて、浩輔くんの元へ


「それでね」

〔はい〕

「昼間のことだけど…これ、見て」

〔…えっ、私…送っていません…〕

「…うん めずらしいな、とは思ったんだ

初めてのことだったし

でも、さっき本橋に渡したって聞いて繋がった

あのさ あの買い出しの時、何かされた?」

〔…?髪についたゴミを取ってくれたくらいかな…〕

「よかった…あれさ、俺の方向から見たらキスしてるように見えたんだよ」

〔えぇっ!?〕

「千紘、荷物両手で持ってたでしょ それを利用されたんだ」

〔…〕

「あ、でもね 俺のこともすべて信じなくてもいい これからの俺を見てほしい」

〔…うん あ、あの…〕

「ん?」

〔みゆきちゃんから、いろいろ聞かれたんです

いつから付き合ってた?とかどこまでした…とか…〕

「たぶんだけど…自分はもっと長く付き合ってたとか、最後までした、とか言いたかったんじゃないかな

でも、俺、本当にみゆきとは…」

〔信じています〕

「千紘…」

〔私ずっと不安だったの 本命はみゆきちゃんだったんだって あの時の口調も、みゆきちゃんみたいだったし…〕

「?なんのことだ?」

〔ほら…もっとわがまま言ってって言ったときに、

浩輔くん、

こうちゃん、もっとぎゅーってして!って言ったの…覚えてる?あの口調、みゆきちゃんみたいだったから〕

「え…あ、いやっ、そんなつもりじゃ…

そのくらい砕けてくれって意味で…」

〔うん、冷静になれば分かる

…信じたいだけかもしれないけど

でもね、浩輔くんのことを信じたいの〕

「…千紘…」

抱きしめられているその腕は

少し力が入っていて

痛いくらいだった…

でも、それはきっと

それだけ私のことを大切に想ってくれているってことなんだよね…?


「俺さ ずっと大事に想ってたから

手も出せなかった」

〔…うん〕

「もちろん今も大事だけど…いい?」

〔…はい〕


この日、私たちは

初めて向かい合えたのかもしれない




〈ふーん…雨降って地、固まったんだーつまんない〉

〔みゆきちゃん…〕

「悪いけど、もう邪魔しないでくれ」

〈はぁ…相当大事にされてるのね

なんか萎えちゃったぁ…

あっ、倫也ーあんたも諦めなさいよぉ〉

「…」

『あーあ うまくいくと思ったんだけどなー

うわ、怖っ 睨むなよ』

「千紘に必要以上に近づくなよ」

『…ま、千紘には嫌われたくないからなー』

〔…〕

『まだ諦めねぇよ、俺は』

〔本橋くん…!〕

「…千紘 行こう」

〔はい〕


【深雪point of view】


〈あんたの計画、全然だめじゃーん〉

『なんで仲直りしてんだよ…連絡は取れないようにしたのに』

〈ま、諦めろってことでしょぉ?

ほどほどにしなよぉ?ほんとに嫌われても知らないからぁ〉

『…わかってんだよ』


何も手を出されてないって聞いたときに

もう無理だって思った


大事にしてる証拠だった


こうちゃんは

そういう人だもん


はぁ…

もうこうちゃんを追いかけるのはやーめた



こうちゃんのあんな笑顔


あたしには向けてくれたことなかったもんね



【浩輔point of view】


「千紘、お待たせ」

〔浩輔くん、お疲れさま〕

「うん、お疲れ 今日はどうしようか?」

〔今日は…浩輔くんのおうちに行きたいな…〕

「いいよ!あ…散らかってるけど…いいか?」

〔うん!何か買ってから行く?〕

「食べてから帰ろうか ほら」

〔はい…!〕


千紘が自分のしたいことを少しずつ話してくれるようになったから

俺はそれを、ひとつずつ叶えてやりたいんだ



タイトル〘どれだけ邪魔されたって俺たちなら…〙


 

                     Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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