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読み切り短編集  作者: おしるこ


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星に願いを

[だめだよ、それ]


あ…見つかった…

初めてやってしまった、万引き…

学校に連絡されるんだ…


「す、すみません…」

[俺、店の人じゃないから さ、置いて、行こう]


…なんで?お店の人に言わないの?


「あ、あの…」

[あのね、万引きしてさ、もしうまくいっちゃったら 引き返せなくなるよ やめなね]

「はい…」

[どうかしたの?]

「え?」

[理由、あるんでしょ?お金持ってなかった?]

「…」

[ま、言いたくないか うん

とりあえずさ 飯でも食うか!]

「…え?」

[パンとろうとしてたんだ、腹減ってんだろ?]

「や、だいじょうぶで…」"ぐーーーっ"

[そうかそうか、行くぞ!そこのファミレスでいいな!]


最悪…


お金がないわけではない…

ただ、なんとなくやってしまっただけ


それなのに、このおじさんは

私に構う

なんで…?

ハンバーグごちそうしてくれて

お金も受け取ってくれなかった


[よし、じゃあ 親御さんも心配してるだろうから、送るよ]

「…してない」

[え?]

「家に帰っても 誰も…」

[そっか でもね、こんな時間に君みたいな可愛い子が歩いてたら危険がいっぱいなんだから

帰ろう]

「…ほっといて…」

[放っておけるわけないだろ]

「!」

[…あ、ごめん 送るから行こうか]

「…うん」


そのおじさんは、家に送ってくれたあと

何かあったら連絡して、と

RileのIDの書いたメモの破片をくれた


なんであんなに良くしてくれたんだろ…

私のこと心配してくれる人なんて、いるんだ


【↷陽介point of view】


あー疲れた…

猫探しもしんどくなってきたなー…仕事だからしょうがないけど


なんか買って帰るか


んー…ん?

え…


恵…!?


いや、恵はもう、いないんだ…落ち着け…

よく似ている…瓜二つじゃないか…


あ!いけない!


[だめだよ、それ]


思わず声をかけてしまった

店員でもないのに…

でも、止めないといけないと思った


「す、すみません…」

[俺、店の人じゃないから さ、置いて、行こう]


彼女を店から連れ出し、

話を聞こうとしたんだが…

まぁ、見ず知らずのおっさんに話すわけもなく


盛大な腹の虫がうるせえから、

飯食わして帰らそうとした

[よし、じゃあ 親御さんも心配してるだろうから、送るよ]

「…してない」

[え?]

「家に帰っても 誰も…」

[そっか でもね、こんな時間に君みたいな可愛い子が歩いてたら危険がいっぱいなんだから

帰ろう]

「…ほっといて…」

[放っておけるわけないだろ]

「!」

[…あ、ごめん 送るから行こうか]

「…うん」


ごめんな

怖がらせるつもりはなかった


ただ…あいつのようになってほしくなかった


それだけ、だったんだ


無事に家まで送り届けて、

俺は手帳にIDを書いて破って彼女に渡した

連絡なんてこないかもしれないけど、

一応、な…


ん?

"お礼言ってなかった、ありがとう"


あ、来た…


"そんなのいいよ また暇だったらいつでも連絡しなよ"


"ん"


ん?うん、ってこと…?

ま、まぁいいや

あ!名前聞くの忘れてた

あ、アカウント名 桃ってのか

桃ちゃんな…おっけー


あーねみー…風呂入って寝よ



♪〜♪〜

あ…?スマホ…鳴ってる

何時だよ、誰だ!?


あ、桃ちゃん

[なに、どしたの こんな早くに]

「…暇だったら連絡してっていったから」

[あー言ったな、確かにな]

「…」

[…暇ならさ、俺のとこで働くか?]

「え?何屋さんなの?」

[探偵さん]

「え!?私、張り込みとか尾行とかできないよ」

[そんなこと頼まないよ 受付とかお茶汲みとか頼むわ]

「それ、私いらないじゃん」

[暇なんだろ?空いてる時間は勉強でもしてなよ]

「…ん どこに行けばいいの?」

[あー駅の前で待ってて 迎えに行くわ]

「わかった」


すぐ切るじゃん こんなもんか


ま、バイト雇うほど儲かってなんかねーんだけど…

一人にしておくと、何するかわかんないしな


着替えるか…ねみー




[へぇー…見違えたなぁ…]

昨日の制服ではなくて、私服で来ていた

「あ、おじさん 制服で来るわけに行かないでしょう?」

[おじさん、はやめろ

お兄さんだし、城島陽介だ]

「陽介さん…」

[君は桃ちゃんなんだろ?

アカウントの名前それだったよな]

「ううん、桃田恵」


え…名前まで…

「陽介さん?」

[あ、あぁ 恵ちゃんな うん]

「? それで?どこなの?」

[あー、こっち]




「ねぇ、一階が喫茶店とかさぁ…」

[しょうがないだろ?ここ家賃安いんだから]

「ま、いいけど」

[あ、ちなみに、下のマスターは俺の友達だから

サービスしてくれるかもしんねーぞー]

「そうなの?ご挨拶しなきゃ」

[寄ってくか!]

「うん!」


【喫茶 夕焼け】


[おう!省吾!うちのバイト連れてきたぞ]

《バイト!?金払えんのかよ!…え》

「桃田恵です!よろしくお願いします!」

《あ、あぁ…前川省吾です よろしくね》

[…じゃ、サンドイッチ作ってやってくれ

どうせ腹減ってんだろ?恵ちゃん]

「うん!」

《…はいよ おい、陽介、ちょっと》

[…恵ちゃん、あっちの席で待ってな

水とおしぼり持ってきてやっから]

「はーい」




《なぁ…どういうことだ》

[…いろいろあんだよ あとでゆっくり話す

今は何も聞かないでくれ]

《…あの子は代わりじゃねーんだからな?》

[…わかってるよ]


[はい、お待たせ]

「ありがと!学生時代からとかのお友達?」

[そうだよ 悪ガキだった頃からなー]

《今度、こいつの悪ガキエピソード聞かせてやるからな、恵ちゃん》

「聞きたい!楽しみにしてるね!」

[おい、余計なこと言うなよ]

《わーってるよ、はい!サンドイッチ》

「ありがとう!いただきまーす」


飯を食った俺たちは、二階に上がってきた

[さて、ここが今日から君がバイトする城島探偵事務所だよ]

「うわー…ドラマみたーい…」

[ドラマみたいに、毎日事件が起きるわけねーけどなー]

「お客さんってくるの?」

[…たまにな]

「たまに!?やっていけるの!?」

[あー…なんとかなるもんなんだよ]

「へぇー」


[恵ちゃんは、電話の応対とお客さん来た時のお茶出しな]

「…それだけ?」

[んー守秘義務もあるしなー]

「ちゃんと守るよ!」

[まっ、追々…な]


そんなこんなで、平日は17時から

休日は彼女の好きな時間にバイトに来ることにして


早くも半年が経とうとしている


[やー今日の調査はなかなかきつかったな

疲れたろ]

「疲れたぁー…」

[なー もう店じまいだ なんか、食いに行こう]

「じゃあ、ファミレスがいい!」

[好きだなー?ファミレス、いいけど]


彼女はいつもファミレスがいい、という

なんでだろうな

もっと、好きなとこ言えばいいのに


あ、俺の財布の心配してんのか!?

そんなこと気にしなくて大丈夫だぞ!?


【恵point of view】


陽介さんのところでバイトしてると、時間が経つのが早く感じる…

楽しいからかなぁ


でも、猫探しとか浮気調査とか

たまにすんごい疲れる仕事があって

陽介さん、ずっと一人でやってたんだもんね…

少しでも力になりたくて、お手伝いし始めたの


最近は、寂しいとかも感じないし

こうして働いてお金をいただく、なんて

楽しくて早く就職したいなーなんて思う


卒業しても、置いてもらうつもりで就職試験とかは受けてない

まぁ、置いてもらえなくても頑張って探すし!


今は陽介さんとファミレスに来てる

あの時、初めて一緒にファミレスに

連れてってもらった時のハンバーグが本当においしくて、うれしくて

つい、ファミレス!って言っちゃう


楽しくおしゃべりしながら、今日も私はハンバーグを頼んだ


「もう!陽介さんがいけないんだよ!?」

[なんでだよ!ったく、恵はー あ、ごめん]

「ん?いいよー呼び捨てで!」

あれ…なんで?

しまった…!みたいな顔して、口を抑えてる

「…陽介さん?」

[あ、いや、なんでもない

さ、食い終わったら帰ろっか]

「…うん」


なんか変…


陽介さんは、家まで送ってくれたけど

その間も、会話らしい会話はなくて

私は家に入るフリして、ある場所へ向かった


そう、喫茶 夕焼け


「よし、お客さんいないね!」

《ちょっとーなんの確認?いらっしゃい》

「省吾さんに聞きたいことがあるの

陽介さんの知り合いで"恵"って私の他にもいる?」

《…なんで?急にどうした?》

「さっきね、急に呼び捨てで呼ばれたの

それだけだったら、気にしなかったんだけど

陽介さん、すごい青ざめた感じで…」

《あのバカ…》

「…省吾さんも知ってるのね 誰?」

《うーん…陽介から聞いたほうが…》

「…教えてくれないと思う…お願い…聞かせて」

《…はぁ》


省吾さんは、昔話を聞かせてくれた

高校時代、陽介さんには付き合ってる彼女がいて

彼女の家はあまり親が仲良くなくて、

彼女は家に居場所がなかった

それでも陽介さんには何も言わずにいた

彼女は就職の内定が決まった頃、

万引きで補導されてしまった

もちろん内定は取り消し 

憧れの会社の内定が取り消され、

学校でも噂になり、そして彼女はーー

陽介さんがそれを知ったのは、次の日の朝


悩んでいたのも、寂しい思いをしていたのにも全く気づかずにいたことを随分悔いていたんだって


その彼女が、私と瓜二つの顔をしていて

名前が"星野恵"といったーー


あぁ…そっか

代わり、だったんだ…


私のことを心配していたんじゃなくて

恵さんを見ていたのね


「話してくれてありがとう、省吾さん」

《…でもさ、気にしないでくれよ

もう15年も前のことだしさ》

「…うん じゃあ、行くね」

《え?どこ行くの?恵ちゃん!!》


もちろん感謝してる

手を差し伸べてくれたことも、悪いことを注意してくれたことも


それでもね


代わりじゃない、なんて思える?

無理だよ…


あーまた…ひとりぼっちになっちゃったんだ…


「元に、戻っただけか…」

[なにが?]

「…陽介さん」

「聞いたんだって?」

「うん」

[まったく、探したよ…足、筋肉痛になりそう]

「帰ってゆっくり休んでよ」

[君も一緒にね]

「私は…」

[恵ちゃん 帰ろう]

「もうほっといてよ…」

[だから…]

「誰かの…元カノの代わりなんて、嫌!!」

[…違うよ]

「…」

[最初は君を、ただ恵のようにしたくなかっただけだったのに、その恵の影がいつの間にかいなくなってたんだって、さっき気づいたんだ]

「…え?」

[本気で呼び捨てにしてたんだよ

恋人を呼ぶみたいにさ]

「…うそ」

[こればっかりはさ、信じてもらうしかないんだけどね

あー、俺の中から、あの恵はとっくにいなくなってたんだなーて思ったらさ

なんか、罰当たりな気がしてね]

「…ほんと?」

[どう思う?恵ちゃんは]

「信じる」

[そっか ありがとう]

「陽介さぁん…」

[ごめんね さっき、手を離して]

「ん…もう、離さないで…」

[うん 帰ろう]




《あーよかった…帰ってきたか》

[お前…話したとは聞いたけど、全部話したんだって?]

《すまん》

「私が聞いちゃったから…」

[ごめんな、俺が話さなきゃいけなかったのに]

「ううん、もういい」

[そっか?もう、一人で悩まないでくれよ]

「うん!」

《コーヒーサービスしてやるから、飲んでけよ》

[ケーキもつけろよ?]

《こいつ!》

「わぁい!省吾さんのイチゴのタルト大好き!」

《ちゃんと取ってあるよ!ほら…》


【陽介point of view】


恵…ごめんな


ずっと、お前だけだって言ってたのに


それでも、俺

あの子を大事にしたいから


君に瓜二つの同じ名前の少女を、

これからは守ってやってくれないか? 恵…



流れ星がひとつ、落ちてきた気がした



タイトル〘星に願いを〙


                 

               Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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