恋の魔法が解けたとき
〔あー可愛い…〕
「まーた、松本の惚気が始まった…」
〔可愛すぎんだからしょーがないだろーが〕
「はいはい…」
〔今年は別のクラスになっちまったからなー〕
「去年は、地獄だったからな…」
〔おい、俺の幸せを地獄とは何事だ、こら〕
「だってよー 普段惚気まくってるくせに、ちょっとでもなんかあると機嫌悪くなるしさー」
〔素直って言え〕
「あれ?」
〔あ?〕
「あ!お前さ、宿題やってきた?」
〔何だ、いきなり、なんかあんの…〕
「あ!バカ!見んな!!」
〔…〕
うわぁ…湯気でも出てんじゃねーかってくらい
顔が赤いし、めちゃくちゃ怒ってる…
〔またか、アイツ…〕
松本の彼女、蘭々(らら)ちゃんは
良く言えば…誰とでも仲が良くて いい子だ
悪く言えば…誰とでもベタベタする…
女の子とだけじゃなく、男とも平気で…
今、廊下でとなりのクラスの坂口と手と手をくっつけて
掌の大きさを測っているような仕草をしている…
はぁ…松本がキレそう…あ、走ってった
こうなった松本を止めるのが俺の仕事だ…はぁ…
〔おいっ!ららっ!!〕
[どーしたのぉ?まーくん]
松本がららちゃんと坂口の間に入って手を離し、
坂口を睨んでいる…
「ほらほら、まぁまぁ…坂口、この子は…」
あー…すまんすまん…行くわ、そう言うと坂口は教室に入っていった
[あれぇー?なんでー?]
〔なぁ…何回言えばわかってくれんの…〕
[んー?]
〔手なんか、つないでて引っ張られたら?
男の力に勝てんの?なぁ?〕
[考えすぎだってばぁー…あたし、そんなにっていうかモテないしぃ…]
〔…モテるモテないの話をしてるんじゃねぇ〕
この子は…ずっとこんな感じなんだよな…
だからってうまくいってないわけではなくて
この2人はもう2年の付き合いになる
「ほら、そろそろ先生来るぞ 俺たちも教室戻ろうぜ」
〔…らら〕
[んー?]
〔昼、迎えに行くから〕
[うんっ!待ってるねぇ!]
〔おう…〕
ららちゃんが教室に入っていくのを見届けて、
俺達も戻る
〔すまんかったな〕
「いや、いいけど…」
〔お前も、俺が過保護だと思うか?〕
「うーん…心配になる気持ちはわかるよ」
〔…アイツさ、付き合い始めの頃に変な男に連れて行かれそうになったことがあんだよ〕
「そうだったのか」
〔あの時は、俺がちょうど通りかかったから
無事だったけどな だから、必要以上に男との関わり方には気をつけろって言ってんだけどよー
わかってくんねーんだよな…〕
「…うーん…考え方の違いかー でも、少しずつでも伝えて行くほうがいいんじゃないのか?何かあってからでは遅いし」
〔…だな〕
大変だなー 彼女があんな感じなら、俺だって心配すぎて無理だもんな
4時間目が終わって、松本はららちゃんを迎えに行った…はずだった…
〔アイツ!!!〕
ガラガラッと扉を開けてドスドス入ってくる
紛うことなく機嫌が悪いぞ、これは…
「おわっ、びびった どーした?」
〔神崎とどっか行きやがった!何もわかってねぇ〕
「連絡はしてみた?」
〔あ…通話かけてみるわ〕
「うん」
すごいな…ここまで、他の男と…って、なんか…
わざとやってんじゃないかってくらい…
いやいやいや!松本の彼女のことを悪く言うのは違うな
ぽやぽやしてるし、何か頼まれごとでもされて断れないだけかもしれないもんな
〔あ、らら?どこにいんだよ…うん、うん…はぁ!?俺との約束……ちぃっ!!!わーったよ〕
なんか盛大に舌打ちして通話を終えたようだ
「…なんだって?」
〔なんか…神崎が約束してた人が来なくて1人で寂しそうだったからご飯食べてる、とかなんとか…
もう、アイツだめかもしんねぇ〕
「…お疲れ…飯行くか?」
〔おう 食わなきゃやってられん〕
…なんというか…ららちゃんが考えてることがよくわからないな…
〔…〕
「…」
学食に来たら、2人の世界でご飯を食べている2人がいて
〔…〕
松本が、顎をクイッとしたため
学食は諦めてコンビニに来た
〔俺さ〕
「うん」
〔なんか、冷めたわ〕
「…パン買ってやろうか」
〔おう…〕
松本がスマホで"何か"をしたあと、
着信の音がずーっと鳴っている
これはきっと…
松本は、その着信を完全にスルーして
電源を落としてポケットにしまっていた
「…」
〔すっきりしたわ〕
「そっか」
〔なぁ、久々に放課後カラオケ行かね?〕
「あーいいよ 誰か誘う?」
〔おう、何人か声かけとくわ〕
ららちゃんと付き合ってからというもの、
松本は俺達と帰ったことはなかったから
たしかに久しぶりに遊びに行くなぁ
昼休みが終わるから教室に戻ろうとしたら
松本の後ろから、ららちゃんが…
[やーだぁ!わがれだぐないいいいい!]
あー…
〔…ほら、坂口でも神崎でも誰でも好きなやつのとこいけや〕
…っ
俺でもこえぇ…って思うほど、目が冷たい…
朝まであんなに惚気てた男と同一人物とは思えない…
[なんで…ぞんなごどゆーの…まーく…]
〔わりぃけど お前とは終わりだ じゃーな〕
松本が腕に纏わりつくように縋ってきた彼女を振り払った
彼女は、体勢を崩して倒れてしまいそうになる
「…」
頭をぶつけないように、支えてあげたけど
何も声はかけなかった
[うぅ…]
彼女の周りには男たちが群がっていて
彼女の姿は見えなくなった
「…」
〔…アイツのこと助けたんか わりぃな〕
「いや…頭でもぶつけたら大変だからな」
〔…どーでもいい それよりよぉ…〕
松本は話を強引に変えた
まぁ、本人がそれでいいなら 俺には何も言う資格はない
放課後、ららちゃんのクラスの前を通ってきたけど
何も話しかけられることもなく
俺達は数人でカラオケに行くことに
途中で女子も加わった
松本が別れたことを聞きつけてきたらしい
ららちゃんのことを悪く言う彼女たちに、
〔そういう話がしてーんなら帰れ 俺たちカラオケに来てんだわ〕
自分たちを良いようにアピールしたかったみたい
女の子たち、すごいな…
松本にそう言われて帰っていったけど
3時間くらいかな?
カラオケで歌いまくって、声もガラガラで
お互いの声がひどくて、爆笑しながら店をでる
ららちゃんが男たちとカラオケに来たみたいだったけど、
松本は何も見てないみたいに通り過ぎた
…あー…人って、あんなに好きだった相手でも
好きじゃなくなると
こうなるんだ
嫌いではない
ーー無関心
恋人ができたとき、気をつけよう
なんて思った
〔ありがとなー楽しかったぜ〕
「声、まだひでーけどな」
〔たまにはいいだろ〕
「そだな」
〔んじゃ、また明日なー〕
「おうー」
5分くらい歩いてたら、突然Rileが鳴った
ん?誰だろ
え!?ららちゃん?
"お願い!まーくんとの仲を取り持ってほしいの"
うわぁ…
とりあえず、松本に電話…
〔あんだよ〕
「あのさ…言いづらいんだけど…Rileが来てて…」
〔シカトでいいぞ まさかあっちにつくつもりじゃねーだろーし〕
「ないない
だけど、一応言っておこうと思って」
〔つか、いつの間に連絡取り合ってたんだよ〕
「さっき、初めてきた 誰かに聞いたのかも」
〔へぇー まぁ、どーでもいいわ
次からはそういう連絡すらいらねぇ〕
「わかった じゃーな」
…それなら…
「おはよー」
[ちょっとぉ!!]
「…なんすか」
次の日学校に来たら捕まった…
[なんであたしからのRile無視するのぉ!?信じらんない]
「それは俺の勝手だと思うけど 君に手を貸すつもりもないよ Rileはブロックさせてもらったから
じゃ、そういうことで」
[…どーしてもだめなの?]
「っていうかさ…あんなに心配してた松本の話を全然聞かなかったの君じゃん
そんなに別れたくないのなら、他の男にちやほやされても相手にしなきゃよかったのに」
[…心配されてるのがうれしかったの
ちやほやされるのも、うれしかったの
本当に好きなのは、まーくんだけだったのに
どうしてこんなことになっちゃったんだろ…]
「なにそれ…自業自得だね じゃ」
なんて愚かな…
これもまた、人間というものの一つの行き着く先なんだな…
要は、他の男にもちやほやされていたいし
彼氏にも甘やかしてほしいってやつか
それを望んだことで、
本当に好きになった人がいなくなるんだから…
ふーやれやれ…
疲れた…
なんというか
甘ったるいデザートを食べさせられたみたいな感覚
「ふー…」
〔なんだ、朝から 恋煩いか?〕
「胸焼けしてんだよ」
〔食いすぎかよ!気をつけろよ?〕
「ほんとだなー」
誰のせいだよ
そんなことを思いながら
憑き物が落ちたように穏やかな顔になった松本に
次はいい子に出逢えるといいな、と
心のなかで励ました
ま、俺も相手募集中だけど
タイトル〘恋の魔法が解けたとき〙
Fin…
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
再編集して投稿しております。




