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読み切り短編集  作者: おしるこ


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27/61

過去を塗り替えて

遠い昔の記憶


〔やーい!ぶーす!こっち来んな!〕

どうして…わたしにだけそんなひどいこというの

{あー!ゆーすけ、こいつとペアじゃん}

〔は、はぁ!?こっち来んな!〕

『でも…デッサン…』

〔…うっぜぇ また泣いてやがる

おいっ、だれか代われよ!〕

『いいっ…友だちに、入れてもらうから…』


〔…ふんっ おーい、俺も入れろよ〕

{いいぜー}


〈大丈夫?りなー〉

『…あんなに嫌われること、なにかしたのかな』



ーー


ハッ…なんで今頃、あんな夢…



でも、あんな夢見たって もう平気


…もう泣き虫じゃないもの




『おはようございまーす!』

[おぉー今日も元気だなー]

課長が話しかけてくる

『えぇ!元気だけが取り柄ですから!』

[うらやましいよーおじさんに元気を少し分けてほしいくらいだよ]

『おじさんだなんて…』

[君等から見れば、俺なんておじさんなのよ]

『そうかなぁー?』

[そうなの!あ、そうだ!今日から新人が入ってくるからね]

『そうなんですね、はーい!』

[教育係!頼むよ!りっちゃん]

『わたしですか!?』

[そうだよ 彼、大卒だけど君と同い年だし

頼むよー先輩!]

『えー…はーい…』


大卒の人かー…でも、同い年なんだ

仲良くできるかなー…


[あ、きたきた!清水くん、こっち!!]

〔はいっ!清水裕輔と申します!よろしくお願いします〕

その、名前は…

忘れたことなんてなかった…

でも、仕事中だもの 知らないフリしよう…

[りっちゃん!清水くんのこと頼むね]

『はーい』

〔…あっ…〕

『森村莉奈です わたしが教育係ですので、わからないことがありましたら何でも聞いてください』

〔あの、俺…〕

『何かありますか?』

〔あ、いえ…〕

『課長、清水さんのデスクは…』

[りっちゃんのとなりー開けておいた!]

『わかりました 清水さん、こちらです』

〔あっ、はい〕


『はい、ここが清水さんのデスクです

PCは届いていますね 使い方は大丈夫ですよね?』

〔はい〕

『OKです

じゃあ…とりあえず、社内を案内しますね』

〔あ、はい…〕


清水さんを連れて、案内をする

『ここは、1番私たちが寄る部署になると思います

しばらくはわたしと一緒に行動することになりますが、覚えてくださいね』

〔はい〕


『社食はこちらで食べられます 外で食事もできますしお弁当の人もいますね お好きなものを選んでくださいね』

〔はい〕


メモ取ってる…几帳面

ある程度回ったところで…

『はい、ここまでで何か質問はありますか?』

〔…あの〕

『はい』

〔俺のこと覚えてませんか?〕

『…どこかで会ったことありましたか?』

〔▲□大附属小学校 5年2組…〕

『…もう昔の話ですね 気にしないでください』

〔でも俺…〕

『わたしたちは、ここに仕事に来ています

それ以上でもそれ以下でもないので

昔を知っていたからといって態度を変えることもありませんし 教えるところはきちんと教えますから

安心してくださいね』

〔…はい〕

『フロアに帰りましょうか』

〔…〕



昨日見た夢は、これの暗示だったのかな


それでもわたしは…もうあの頃の泣き虫じゃない

大人だし!仕事は仕事…しっかりやらなくちゃ


『課長、案内してきました』

[お疲れー]

『午後から、ご挨拶に行ってきます』

[よろしくねー あ、ランチ行かない?3人で!]

『清水さん、お弁当とか持ってきていますか?』

〔いえ…〕

『ごちになります!課長♪』

[あーしっかりしてるなぁ りっちゃんはー]

〔…〕


ランチに来て、ちゃっかりご馳走になったわたしたちは会社への帰り道に昔話をしていた

『さっき、話してたら同級生だったことがわかって…』

[へぇー?そうなんだー世間は狭いねぇ]

〔あ、はい…〕

[それにしても、小学校で同じだったんでしょ?

昔のことなのによく覚えてたねぇ]

『わたしは忘れてましたよ』

〔…〕

意地悪し過ぎちゃったかな…

[…そっかそっか あ、もう着いちゃったね

じゃあ、午後からもよろしく頼むね!]

『はい!』

〔…はい〕

課長が社内へ入っていくのを見送って

『さてと…行きますか 今日は3社です』

〔はい〕

『運転しますから、乗ってください』

〔…森村さん、課長と仲いいんですね〕

『4年の付き合いですから』

〔りっちゃんって…〕

『子ども扱いされてるんです』

〔…〕

『…清水さんは、どうしてこの会社に?』

〔…説明会の日、あんたを見て…〕

『あの…この仕事、なめてます?』

〔あ、いや…〕

『仕事はきちんとしてくださいね 志望動機が不純だとしても…あなたが受かったことで、落ちた人がいるということをお忘れなく』

〔…すみません〕


『まずはここです 担当の方は菱沼さんです

名刺は、持ってますよね?』

〔はい〕

『行きますよ 受付で、社名と名前を名乗って来てください アポは取ってありますので』

〔俺の名前で、いいんですか?〕

『はい』


受付に行った彼は、きちんと挨拶ができたようだ

しばらくして、3階に通された


『菱沼さん、お忙しいところお時間をいただきましてありがとうございます』

やぁー森村さん、いらっしゃい こちらの彼だね?

〔清水裕輔と申します よろしくお願い致します〕

『しばらくはわたしも同行しますので』

そっかそっか!よろしく頼むね!

『はい、他に何もなければ失礼しますが…』

今日は大丈夫だよーありがとうね

『はい!ではまたご連絡しますね 失礼します』

〔失礼致します…〕




名刺交換もバッチリ…

『さすがです この調子であと2社行きますよ』

〔はい…〕


その後の2社も問題なく終わった

3社目の担当の方は女性なんだけど

清水さんを見て、ちょっと目の色が変わってたなぁ


清水さんは、あの頃も周りにたくさん友達がいた

今も人付き合いはうまいみたい 営業向きだ

さっき…言い過ぎちゃったかな…


あ、そうだ 明日からのアポも取っておかないと…

『うわっ」

〔あぶねぇっ!〕

階段から落ちそうになったところを助けてもらった

『…すみません、ありがとうございます』

〔…〕

『?あの…離してください』

〔その目、やめてくれないか…〕

『?何のことですか』

〔無意識なのか?俺を見るときだけ冷たい目をしてる〕

『…すみません 意識していたわけではないです』

〔…いや、俺のせいだ 俺が、昔…〕

『…もういいですから』

〔よくない〕

『昔話なんてして、何になるんです?思い出したくもないことを思い出して、あなたに何か得でもありますか?』

〔俺は…謝りたくて…〕

『謝られたとしても…あの頃には戻れませんし

わたしたちの関係が変わることはありませんから』

〔…そう、だよな…すみません…仕事はきちんとしますから〕

『よろしくお願いします』

〔…〕


車の中の空気は最悪だった

でも、言いたいことは言えた


これでいい…やっと、心からすべてを忘れられる


【裕輔point of view】


許されるわけなかった


子どもの頃の出来事だ、なんて

軽く見てて

謝れば許してくれるなんて思って、バカだ 俺…


あの冷たい目…

他の人にはしない目


あれは罰だ


俺が…彼女を虐めた罰


それでも…いつか わかってくれるかもしれない

そんな期待を、粉々に砕いてくれた


高校までずっと一緒だったのに…一度もちゃんと謝ることもなかったんだ


こうなるのは必然だった


一緒に仕事ができるだけありがたいと思え


それ以上は何も、望むな


[お疲れさん 清水くん]

〔課長…お疲れ様です〕

[りっちゃんと何かあった?]

〔…〕

[あの子は優しい子だから きっと気にしてると思う]

〔…はい〕

[入社した当初はね たまに、唇を噛んでるときがあったんだ]

〔え…〕

[最近、なくなったと思ってたのに ほら…]

〔あ…っ〕

[何かしちゃったならさ、君じゃないと解決できないんじゃないかな]

〔でも…俺…〕

[今すぐにってわけじゃないよ まだ若いんだから

時間はたっぷりあるじゃないか 急がず焦らずだよ!りっちゃんのこと頼むね]

〔…〕

ポンポンッと、肩を叩かれた


俺に…彼女のために出来ることがあるのか?

拒絶された俺に…


それからは、私情を挟まずしっかりと仕事をこなした 

これ以上嫌われるわけにいかないから



2ヶ月経った頃…


クラス会の案内が届いた

いや、行かなくていいや

俺が行かなければ、彼女は参加出来るだろうし


さて、仕事仕事…


『清水さん』

〔おはようございます〕

『おはようございます 届きました?案内状』

〔クラス会ですか?あー俺その日は都合がつかないんで…〕

『そう、なんですね』

〔あ、この資料なんですけど…〕

『あ、それなら…』


よし、自然に話題を変えられた…


【莉奈point of view】


彼、…仕事はきっちりこなしている

もう2ヶ月も経つんだ 早いな


もう、わたしが教えることなんてないんじゃないかな…

そろそろ独り立ちしてもらっても充分にやっていけると思う


『課長』

[んー?どうしたの?]

『清水さんの独り立ちの件なんですけど』

[もう?2ヶ月だよ まだ早くない?]

『わたしが教えられること、もうないですよ』

[じゃあ、きり良くさ 7月1日からにしよう]

『わかりました』


あと3週間か


あ、どうしよう…クラス会…

みっちゃんは行くって言ってた

行ってこようかな


【6月◯日 クラス会】


『みっちゃーん!』

〚りなー!会いたかった!〛


久しぶりにあった友達は

もちろん見た目は変わっているけど

性格は変わってなくて安心した

{あれ?今日ゆーすけこねーの?}

…岸田くんたちが清水さんの話をしてる

{うわ!森村じゃん…お前、可愛くなったな}

『…』

〚きもー何それあんなに虐めてたくせに〛

{いや、あれは…}

〚何よ〛

{ゆーすけが悪いんだよ あいつ、森村のこと好きだったのに素直になれなくて虐めてたんだから}

『…え?』

〚はぁ!?これだから男子はー!

りな、あっち行こ!〛

『う、うん…』


なんかもう…そこから先のことは頭に入ってこなくて

気づいたら、クラス会を抜け出して外に出ていた


〔森村さん!〕

『え!?ど、どうして…?』

目の前に清水さんがいて…

〔岸田の野郎が…森村さんが可愛くなってたとか、Rileで写真…送ってきて…心配になって…〕

『心配…って、どうして…』

〔や、それは…〕

『あっ…あの…岸田くんが話してたことは…ホントのことなんですか?』

〔アイツ…何言った!?〕

『…好きだから、虐めてたって』

〔最悪…あの、こういうの…人から言われるの嫌だから…ごめん 隠しておこうと思ったんだけど〕

『え?』

〔ずっと好きでした あの頃はごめんなさい〕

『…いえ』

〔今も好きです〕

『へ!?』

〔あれからずっと…忘れられなかった〕

『…清水さん』

〔…はい〕

『初日に、この仕事をなめないで とか…傷つけて

ごめんなさい なめてないのは仕事をしているところを見ていればわかりました』

〔…あれは、そう思われても…〕

『あなたが謝ってくれたんですから わたしも謝りたいんです 話を聞こうとしなくてごめんなさい』

〔それも、俺が悪いから〕

『いいえ 気にしていない、忘れたと言っていても、結局ずっと…気にしてたんだと…思います

というか…ずっと、あなたを見ていました』

〔え…?〕

『心のどこかで、封印してた気持ちが溢れてきてしまって…わたし、あの頃ずっと好きだったから』

〔まじ…?〕

『こんなにかっこよくなって現れるなんて思っていませんでした ずるいですよ』

〔…〕

『ひゃっ!?』

抱きしめられてる…彼の腕の力が強くなる

『っ、痛いです…』

〔あ、ごめん〕

力は弱まったけど

それでも、離してはくれなくて

さっきからずっと 抱きしめられたままだ

『清水さん そろそろ…離していただけると…』

〔ごめん〕

『今日、会えてよかった ありがとう』

〔何帰ろうとしてんの〕

『…だめですか?』

〔俺たち、両想いってことじゃないの?〕

『…そのようですね』

〔付き合ってくれる?〕

『…はい』

〔俺んち来てくれる?〕

『それはちょっと…』

〔なんで!?〕

『明日も仕事ですし』

〔いつならいいの〕

『…金曜日でしょうか』

〔来週じゃん…〕

『ゆっくりいきましょう?』

〔…俺だけがっついてるみたいじゃん〕

『そうですよ』

〔…〕

不機嫌そう

『清水さん…』

〔その呼び方やだ〕

『何て呼んでほしいですか?』

〔裕輔〕

『…裕輔』

〔なぁに?莉奈!〕

『…ご機嫌さんですねぇ』

〔そりゃそうでしょ〕

『…あの』

〔んー?〕

『離してもらえると…』

後ろから抱きしめられている 動けない…

〔やーだ〕

『はぁ…』

〔莉奈〕

ぐるんっとひっくり返されてしまった

『わっ!』

顔が目の前にある…

『な、なんですか…』

〔帰ろ〕

わたしを見る目が真剣で熱くて…困る…

『…』

〔か え ろ〕

『…はい』


初めて男性にお持ち帰りされてしまった


22歳の夏ーー


 

タイトル〘過去を塗り替えて〙


 

                     Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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