幾千の星の中に見つけた恋
この人の文章好きだなぁ
考え方、言葉の選び方
雰囲気…
私はあるサイトで明星というHNでブログを書いている
おかげさまでフォロワーも増えてきて
フォローバックをするために
何人かのブログを読んでいた
その中の1人の文章に目が釘付けになる
こんなに人の文章から目が離せなくなるのは
久しぶりのことだった
その人、
HN.Nashiraさんは2ヶ月前から始めたようで
投稿されたものはそこまで多くなかったから
夜中寝ずに読み切ってしまった
はぁ…寝不足だけど いい時間だったなぁ
読み終わった時にはすでに3時を超えていて
あと2時間程度しか眠れないくらいだったけど
文章を読んでいた高揚感か
眠れることはなく
私はそのまま、会社に向かった
眠かったけど、早く帰って寝ればいいや
そんな風に思いながら
ミスをしないように注意しながら仕事をこなした
定時で上がり、家に帰ってくると
そのサイトにメールが届いていた
【あなたの文章に惚れました】
びっくりした…
私が昨日徹夜で読み切った人からのメールだった
"フォローバックありがとうございます
あなたの文章を読んでからというもの
最初から読みたくなってしまって
すべて読み切りました
あなたの使う言葉や話し方が、好きです
よければメールのやりとりだけでいいんです
文章を送り合いませんか?"
もちろん、駄目なら忘れてください
と続いていた
…こんなことがあるんだ
お互いにそう思っていたなんて…
このブログを始めて1年
初めての出来事に、心が跳ねないわけもなく
すぐに返事を返した
"こちらこそフォローしてくださりありがとうございます
私もあなたの文章を読んで、そう思っていたんです
よかったら…お願いします"
その日、メールが返ってくることはなかったけど
次の日
"昨日は返信できなくてすみません
メールありがとう
お互いにそう思っていたんですね 嬉しいです
私たち、気が合いますね
今日、私は…"
そのメールには
相手のその日の出来事が書かれていて
なんとなく私に似ていると思った
仕事中にミスをしてしまった人がいてフォローをした
ランチにオムライスを食べた
帰り道で虹を見た
同じだった
私はミスをする側だったけど…
同期とオムライスを食べにいった
帰り道で、大きな虹を見た
もしかして…案外近くにいるのかな
私、と言うからには女の人だろう
そのうち会えたりするのかな なんて思っていた
もちろん会いに行く勇気なんかない
だから、
こうして文章を送り合うだけの関係で充分だった
2週間ほど経った頃
ーーおかしい
あまりにも私と同じことがNashiraさんにも起こっている
ゲリラ豪雨にやられてびしょ濡れになってしまった
流れ星が見られた
ランチを食べ損ねた
こんなこと、何回も重なることがあるのだろうか
天気は、住んでいる地域が近いのなら起こりうるとは思う
でも…
私は、Nashiraさんが同期なのではないかと思った
同期は3人いる
・葛西美奈子
・武田章司
・山本貫太
女性は1人だけ
話しをしてみようかな…
いや…でも…
文章だけのやりとりだと言われているのに
踏み込むのはマナー違反かな
私はNashiraさんのことばかり考えていて
集中力が続かなくなっていった
Nashiraさんとのやりとりは続いているのに、
ブログの更新は滞ってしまっている
仕事でミスも増えてしまって、
しっかりしなきゃいけないのに…
Nashiraさんのことばかり考えてしまう
いっそのこと…この関係をやめてしまおうか
そんなことを考えて
…ううん あの文章を読めなくなるのは嫌
そう、思い直してみたり…
【Nashira point of view】
…似ている
もしかしたら、明星さんは近くにいるのでは?
このHN、アカボシではなくてアカリと読むのだとしたら…
職場に1人いる
島崎朱里…目の前でパソコンに向かっている彼女だ
この2週間
天気が同じことが気になっていた
ゲリラ豪雨、雷…晴れて30度を超えた、とか
極めつけはランチ
同じ物を食べたり食べる時間がなかったり…
こちらはあえてすべてを書いてはいなかったけど
明星さんは事細かに教えてくれるようになっていた
さすがに仕事の内容やミスの内容については言ってくることはなかったけど
島崎さんがミスした日と一致していた
最近、集中力が切れているようで
ミスも多いし
それに対して謝る姿が見ていられないくらい…
それでも、私はこれ以上踏み込めない
この関係が終わってしまったら…
彼女とのやりとりは私の1日の楽しみになっていたから
「ごめんなさい、今度からは気をつけます」
〔大丈夫だよ 寝不足だったりするの?明日からは休みだし、ゆっくり休みなよ〕
「はい あ!そうだ あの…この後空いてますか?」
〔あーうん、空いてるよ どうしたの?〕
「ご飯とか、どうかな…って」
〔いいよ みんなも誘う?〕
「…」
黙って首を振る
…2人か…
〔うん わかった じゃ、行こうか〕
「はい」
食事をしながら、少し話しを聞いてみた
〔最近、悩み事とかあるの?〕
「え…あ…よかったら、聞いてくれますか?」
〔うん〕
「あの…みんなには黙っていて欲しいんですけど」
〔うん〕
「私、ブログを書いていて」
〔そうなんだ〕
うまく返事ができただろうか…
「それで、そのブログのフォロワーさんとメールのやりとりをしていて…」
〔うん〕
「その人が近くにいるんじゃないかって…」
…そりゃ、そう思うよね
〔どうして?〕
「同じことが、相手にも起こっていて
ほら、2週間前に一緒に虹見たじゃないですか?あれとか…ランチの内容も一緒なことが多くて…」
〔偶然じゃないの?〕
「うーん…」
〔天気は、地域が近ければありえると思うし、
ランチの内容だって ランチに行くっていうと
だいたい同じような物を食べるんじゃないかな〕
「あ…そっか…そうかもしれない…」
〔それで眠れなくなっちゃったの?〕
「そうなんです…ずっと考えちゃって…」
〔そっか その人とのやりとりは続けるの?〕
「うん!続けたいんです!」
驚いた…すごい笑顔で言ってくるから…
〔そっか 楽しくやりとりができるといいね〕
「はい!聞いてくれてありがとうございます」
〔いやいや でも、楽しそうだね〕
「楽しいんですよー特別なんです!」
〔え?〕
「その人!話しもおもしろくて、優しい雰囲気なんですよね!」
ちょっと、やめて…あんまり美化しないで欲しい
〔そうなんだ〕
「夜空を眺めるのが好きって言ってたから、私も空を眺めるのが癖になっちゃって」
〔星かー確かに綺麗だもんね〕
「うん!会うことはないけど、存在はしているから その人がいてくれるだけで、私…」
〔島崎さん〕
「え?なんですか?」
〔あ、いや…もうちょっと頼んでいい?〕
「もちろん!ごめんなさい、気がつかなくって」
〔ううん 話しの途中でごめんね〕
「いえいえ!」
あれ以上聞いたら
もうやりとりは出来なくなると思った
だって
こちらは明星さんが誰かわかっているんだから
「会うことはないけど、存在はしているから
その人がいてくれるだけで、私…」
意識しないようにしてるのに
頭の中でグルグルと…
島崎さんを駅まで送って
家まで歩く
はぁ…どうしたらいいんだろう
どちらにしても
このまま続けていいんだろうか
こちらはわかっているのに、明星さんには隠し通すのはフェアではない…気がする
それでも…
どれだけ考えても答えは出なかった
家について、風呂に入ったりやることを済ませ
パソコンに向かう
あのサイトにログインすることを先延ばしにしている自分がいた
あぁ…やっぱりメールが来ている
"Nashiraさん
今日はね、会社の人とご飯に行ってきたんです
とても楽しくて
本当はまだ帰りたくなかったんですけど
駅まで送られてしまいました
脈無しですよね
それと!帰り道に星を眺めながら帰ってきたんです
今日はいい天気だから、
星々がよく見られました
Nashiraさんも見ているかな…
同じ空を見ているなんて素敵ですよね…"
え?
どういうことなんだ…これは…
脈無し…!?
Nashiraに対しても、
同じ空を見ているのは素敵だ、って…
どういうことなんだ…
彼女は…俺とNashira、どっちも…?
もしくは
カマをかけられてるのだろうか
しばらく考えたけど
とてもじゃないけど返事は出せなくて
少し早いが 寝ることにした…
と言っても 眠れるわけもなく…
はぁ…
明日は休みだからいいものの…
彼女もこんな気持ちでこの2週間を過ごしていたんだろうか
きつかっただろうな…眠れないのは
しょうがない 返事を書こう
【明星point of view】
Nashiraさん
今日は返事が来るの遅いなぁ
変な文章じゃなかったよね!?
何回も読み返してから送信したもん…
お風呂に入ってこよう
お風呂に入ってスキンケアもそこそこに
私はメールが来てないかチェックした
あ!来てた…え…
"明星さん 遅くなりました
ごめんなさい 好きな人が出来てしまいました
あなたとのやりとりを続けるわけにはいかなくて
勝手ではありますが
これを最後にさせてください
これからのご活躍をお祈りしています
PS.脈無しかどうかはわかりませんが
うまくいきますように… Nashira"
そっか…
そうだよね 私ってば
1人ではしゃいじゃって…恥ずかしい
でも、これでよかったのかもしれない
もうNashiraさんのことで悩むこともなくなったわけだし
よく眠れるようになるなら、ミスも減ると思うし
…うん
あれ、Rileが来てる
"さっきは、食事楽しかったね
明日なんだけど、予定がなければ会えないかな"
"ありがとうございました!ごちそうさまでした!
はい、予定ないです!大丈夫ですよ"
"じゃあ、昼でも一緒にどうかな
11時に…"
わかりました、と返事をした
本当はもう少し話していたかったから…
誘ってもらえてうれしかった
それに、1人で部屋にいなくて済む…
お昼か…楽しみだなぁ
早く寝よ…!
わぁ!寝坊しちゃった…!
あれからすぐには寝付けなくて…
あーどうしよう…もう20分も…
連絡はしたけど…怒ってるかな…
「ごめんなさい!!」
〔大丈夫だよ ゆっくりでいいって言ったのに…
走ってきたの?危ないじゃないか〕
「だって…」
〔…眠れなかった?〕
「え?あ…はい…でも、どうして…?」
〔俺も、楽しみで眠れなかったからね〕
「あ…えへへ…」
そっちかぁ…!そりゃそうだよね
ん?そりゃそうっていうのも違うな…
もう…私ったら
「個室のお部屋なんですね」
〔うん ちょっと話があってね〕
「?どうしました?」
〔島崎さんに謝らないといけないことがあるんだ〕
「え?何ですか?」
〔君を眠れなくさせてたのは…俺だからね〕
「え…?あ、あの…?」
〔会いたくはなかっただろうが…もう隠しておけなくてね ごめんね 俺がNashiraなんだ〕
「嘘…!?」
〔…ログイン画面見る?…ほら、これ 俺のブログ〕
ほんと…だ…
え…ずっと…四宮さんと…話してたの…?
〔島崎さん?〕
「あ…すみません…ちょっと…気持ちが追いつかなくて」
〔昨日のうちに話せばよかったんだけどね
ごめんね〕
「いえ」
〔それでね、好きな人っていうのは島崎さんのことなんだ〕
「えっ!?」
〔君が明星さんだとわかった時点でやりとりはやめるべきだと判断したんだ
だって、こちらのことは気づいてなかったんだろう?フェアじゃないからね〕
「…」
〔ただね、昨日のメールの脈無し発言とNashiraに
対しての気持ちは、島崎さんにとって
どちらが本気なのか気になってしまってね〕
「…すみません 私…ずっと四宮さんが好きで…」
〔えっ!そうだったの?〕
「はい 四宮さん、覚えてますか?私の教育係だったときに、手紙を書いて下さったこと」
〔あぁ…君が辛かった時期に書いたね〕
「はい あの手紙を読んだときに、文章から目が離せなくなって…でも、Nashiraさんが四宮さんだったなんて…」
〔俺も最初から明星さんが君だと分かっていたわけではないからね〕
「ずっと…同じ人を好きだったんだ…」
〔なんだか照れるな〕
「あの…」
〔ん?〕
「今日誘ってくださったのは…」
〔もちろん、君に気持ちを伝えてこれからのことを話したかったからだよ〕
「…はい」
〔俺、君が好きだから これからもそばで支えていきたいんだ どうだろう 付き合ってくれないか〕
「…うれしいです…ありがとうございますっ」
「どうして"Nashira"だったの?」
〔Nashiraは、やぎ座の恒星の固有名なんだ。アラビア語由来の名前で、意味は「喜びの知らせ」「幸運をもたらすもの」とかって言われてる〕
「そうなんだ…!」
〔星、好きだからさ〕
「最初は女性かと思ったんです 私って言ってたし」
〔あぁー性別は言わない方がうまくいくと思ったんだ〕
「どうして気づかなかったんだろう…
あんなに目が離せなくなるなんて
今まで拓朗さんの文章しかなかったのに」
〔それは無理だと思うよ 俺も気づかなかったし
ネットの世界にどれだけ人がいると思ってるんだい?〕
「そう考えると…私たちがこうしてやりとりできているのは…運命かも」/〔運命かもね〕
「えへへ」
〔ふ…さて、朱里おいで〕
「となりにいますよ?」
〔こっち…ほら〕
「あ…」
タイトル〘幾千の星の中に見つけた恋〙
Fin…
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
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