真夏の夜の夢
〔ふぁーあーあ…ねむ…〕
「…でっけー口…」
〔あ、見てた?〕
「…バッチリ見てた 寝不足だったのか?」
〔よく寝てるー〕
「じゃあなんでそんなあくびばっかりしてんだよ」
〔うーん…いい夢見てるからかなぁ?〕
「夢?」
〔うん!忍とね、海行ったり花火したりーBBQしたりしてる夢!〕
「なんだよ 出かけたかったのか?
そんなのいつでも連れてってやるのに」
〔何言ってんのー?そんなこと言っていつも出かけないで家で寝てばっかりじゃーん!〕
「いやー最近、仕事がハードすぎるんだよなー疲れが取れないんだよ」
〔あたしだって忍にゆっくり休んで欲しいけどぉ…〕
「ありがとな
でもまぁ…もうすぐお盆休みもあるから BBQはさすがにアレだけど…焼肉でも行くか!」
〔本当!?やったぁー!〕
あたしたちは、結婚2年目の夫婦だ
まだ子供はいないけど、2人で仲良く暮らしている
この夏、あんな不思議な経験をすることになるなんて…
あたしも忍も露ほども思っていなかった
【忍point of view】
やっとまとまった休みが取れたー…疲れた
ここ最近、仕事が忙しくて本当に疲れが取れなくて
妻の香織をどこにも連れてってやれてなかったから
明日は少しドライブでもして
帰りに焼肉でも食ってこよう…なんて考えてた
〔しのぶー!ちょっとこっち!こっちきてー〕
「なにー?今テレビ見てんだけど」
香織が呼ぶ声が聞こえた
「はいはい…何だよ?」
〔ん?何?まだご飯出来てないよ?〕
「は?お前が呼んだんだろ」
〔え?呼んでないってば〕
「こっちきてーって呼んでたろ?」
〔ううん?今、用事もないし〕
「は…?」
いやいや…確かに俺を呼ぶ声が聞こえたのに…
あ、こいつ…ドッキリでもしかけようとしてんのか?
…しょうがねぇな
騙されたフリしてやるか!
そんな風に思ってたのに、香織は本当に何のことか
わからないようなリアクションだった
食事してる時も
〔ねぇ、本当にあたしの声だった?〕
なんて聞いてきていた
「そうだよ だからわざわざキッチンまで行ったんだろ」
〔えー?なんだか怖いね…〕
「本当に呼んでないんだな?」
〔本当に違う!〕
「うーん…気味悪いな…」
なんだか、後味が悪い感じがしたから
片付けしながら違う話して
テレビつけてさっきのことは忘れることにした
「あ、そうだ 明日なんだけどさ」
〔うん〕
「ドライブとかどうよ 久々にさ!」
〔行くー!どこらへんに行くの!?〕
「それは明日になってからのお楽しみー!
道が混むとだるいから、今日は早く寝て明日早めに出発しようぜ」
〔わかった!早く寝る!で、何時にアラームつけようか?〕
「あー…そうだな 6時にするか!」
〔オッケー!じゃあ、お風呂入ってくるー〕
「たまには一緒に入るか?」
〔やーだ!恥ずかしいじゃん…〕
…こいつ、まだ恥ずかしがってんのかよ…
何年一緒にいると思ってんだ…
かわいいやつ
さてと、俺も明日の準備して…
香織が出たら風呂入って寝るか!
【香織point of view】
なによもうー忍ってば…
普段、あんなこと言わないのに…
何か悪いことでもしてんのかな…
なーんて
忍に限ってあるわけないか!
さてと…
〔しのぶー出たよーおまたせー!〕
「はいはい…俺も入ってくるよ 先寝てていいぞ」
〔はーい ふあーーあ〕
さてと…
今日はどんな夢見ようかなー
こんなことを考えてても
希望の夢なんて見られないんだけどねー
あたしはこの寝る前の妄想timeが好きだ
そうだなー…
忍とドライブに行ってー
サービスエリアでメロンパンとか買っちゃって…
《なにしてるんだ?香織》
え?この声は…
《こらこら、どこに行くんだ?こっちだぞ》
あ…
〔どうして…?三浦先輩がここに…?〕
《?なんだ、懐かしいな その呼び方
夫婦なんだから、名前で呼んでくれよ》
〔え?先輩と…夫婦?え?…忍は…〕
《忍って近藤のことか?懐かしいなー何年前だっけ…でもさっきからどうしたんだよ、あー朝早かったから、ぼーっとしてるのか?》
この人は…あたしたちと同じ部活の先輩だった
三浦正美さん
好きな人だったけど…
気持ちも伝えられなかったし、その後に忍が告白してきてくれたんだよね
忍とは1年付き合って、結婚して2年
結構経つのに…どうして三浦先輩が…?
あ、そっか…夢だ、これ
夢だもん 浮気には…なんないよね?うんうん…!
〔正美さん!ごめんなさい!
ぼけちゃってたみたぁい〕
《ははっ、まったく…可愛いなぁ 香織はーほら、
メロンパンとコーヒー買ってきたよ》
〔やったぁ!早く行きましょう!〕
《あ、ちょっと待って!これ香織が好きそう
…ほら》
〔ほんとだぁ…可愛いキーホルダー…!〕
《お揃いにしようか》
〔いいの!?やったぁー〕
《本当に可愛いな、香織は…ちょっと待っててね
買ってくるから》
正美さんはそう言うとレジに向かった
かわいいイルカのついたキーホルダー
後で鞄につけようっと!
《おまたせ 車に戻ろうか》
〔はーい!あ!メロンパン早く食べたーい!〕
《わかったわかった…ほら、走ると転ぶぞ》
〔もぉーいっつもそうやって子ども扱いするんだからーし…正美さんはー〕
あれ…?今なんか…
違う人の名前を呼びかけたような…
《日頃の行いだろう?さ、行こうか》
〔はーい!〕
お互いに無意識に手を出して
手を繋いで車まで戻る
なんだか…手の力が強いような…?
車に乗り込んで
目の前にいる正美さんは、とても眩しい笑顔であたしを見ている
頬に手が伸びてきて
あ…これ、キス…?
《香織…俺とずっと一緒にいてくれないか?》
〔…え?〕
《これからもずーっと…俺と一緒にいてよ》
〔ま、正美…さん〕
唇が触れそうになった時…
「おい!香織!」
え?誰…?
《…香織、どこ見てるの?こっち向いて?》
〔え、あ…〕
《香織…》
「いつまで寝てんだ!起きろ!香織…!」
この声…どこかで…?
《ねぇー、香織がキスしてくんないから
おあづけ食らってるんだけどー?》
〔あ…ごめんなさい…!〕
《いいよね?俺、ずっと好きだったんだ》
〔正美さん…?〕
《高校時代、ずっと伝えられなくて…やっとこうして伝えられた
だからね
このまま、一緒に…》
〔あたし…あたしは…〕
「香織!!」
〔…え…しのぶ…?〕
そう、意識した瞬間に目の前の光景が…
ぐにゃりと歪んでいく
〔しのぶ…!どこ…?〕
「ばか、何してんだ」
〔あ…〕
振り向いたら忍が手を伸びしてる…
あの手を掴まなくちゃ
〔しのぶー!〕
あたしはこの手が…
〔あれ…〕
目が覚めた やっぱり夢だったんだ…
「あーまったく…やっと起きたのかよ…」
〔あれ…しのぶ…〕
「なんだよ お寝坊さん」
〔え?…今、何時?〕
「9時だよ ったく」
〔…うそぉ!?やだぁ!!〕
「どんだけ声かけても全然起きねぇんだもん
心配しただろーが!」
〔…夢を、見てたの〕
「どんな?」
〔三浦先輩の〕
「…チッ」
〔え!?舌打ちした?〕
「なんでよりにもよって…」
〔え?〕
「香織には話してなかったんだけど…三浦さん、亡くなってるんだ」
〔え…?まさか…なんで!?〕
「事故だったんだって
お前、好きだった時期長かっただろ?
だから…しばらくは話さないでおこうって、みんなで話してたんだよ…」
〔嘘…〕
2ヶ月前、忍がお葬式に出かけていったことがあった
会社の人って言ってたのに
三浦先輩だったんだね
三浦先輩…あたしと一緒にいたかったのかな
1人でいたくなかったのかな…
〔お盆だからかな〕
「…お前、まさかとは思うけど」
〔え?〕
「先輩と一緒に…!なんてはしゃいでたわけじゃないだろうな…?」
〔そ、そんなわけ…ないよ、ねぇ?〕
「ほーん…?その割には…ずいぶんゆっくりなお目覚めだったなぁ?香織ぃ?」
〔あ、はは…あ!!焼肉!〕
「昼間から?」
〔お腹すいたぁ!行こう!〕
「はぁ…ったく、わかったよ その前に顔洗え
よだれついてんぞ」
〔むぅー〕
先輩がお迎えに…来てたのかな…
あの時、先輩を選んでいたらどうなっていたのかな
「香織」
〔ん?〕
「…誰のとこにも行かせない」
〔…しのぶ?〕
「なんだよ」
〔顔真っ赤だよ かーわいい!〕
「…うるさい」
この手を離さなければ…
きっと大丈夫な気がして
その日から、手を繋いで寝るようになった
何年経っても…それだけは変わることはなかった
タイトル〘真夏の夜の夢〙
Fin...
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再編集して投稿しております。




