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読み切り短編集  作者: おしるこ


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21/61

恋のゲームメイカー

「あっ!勇介さん、この書類を…」

〔…あぁ〕

あ、行っちゃった…


…勇介さんは、最近わたしと目を合わせてくれない

ほかの人とは、普通に話してるのに


嫌われるようなことしたのかな…


《どうしたの?》

陽一朗さんに話しかけられた

「あ、いえ なんでも…」

《何でもない、とか言おうとしてる?何でもなさそうな顔じゃないけど》

「…どんな顔ですかーもう…」

《こんな顔だよ!》

「いひゃいです…離してくださいー」

陽一朗さんにほっぺたをつねられてる…

"ガチャ"

〔…〕

「あ…」


勇介さんが、チラッとこちらを見たけど

すぐにデスクに向かってしまった

《…ねぇ、小雪ちゃんさ》

「はい?」

《終わったら飯行こうか》

「え?ご飯、ですか?」

《そ!暇?》

「暇…ですけど…」

《じゃあ決まり!後でね》

「え!?あ…はい…」


陽一朗さんが部屋を出て行ってしまったから

この部屋にはわたしと勇介さんの2人だけ


でも、会話はない

いつもそうだから 今もそうなると思ってた


〔あんたさ〕

「え?」

〔どーやって落としたの〕

「…?何のことですか?」

〔付き合い始めたんだろ?陽一朗と〕

「えっ!?あの、付き合ってないです…」

〔…そう、なのか?〕

「あの、勇介さん」

〔なに〕

「わたし何かしましたか?もし、嫌なところがあったら謝りますし、直します…」

〔…別に ないだろ〕

「…」

わからないから、聞いたのに…

答えても…もらえないってことなのかな

そっか

嫌われてるかも、じゃなくて

嫌われてるんだ…


「すみません」

部屋を出ていく

どこにも行く場所なんてないけど…

サボりになっちゃうけど…


でも…誰も帰ってこないし

二人っきりなんて気まず過ぎて

その場にとどまるなんて出来なかった


【勇介point of view】


あぁ…付き合ってたんじゃないのか


諦めようと思ってわざと嫌な態度をとってたってのに 傷つけたか…?


部屋を出ていくあの子は、泣いてるように見えた


どっちにしたって

こんなんじゃ 相手にされるわけないよな


《あれ?小雪ちゃんは?》

〔会わなかったか?今出てったが〕

《いや?俺は下から来たけど…何?どこ行ったの?》

〔…〕

え?まさか、上に行ったのか…?

〔ちょっと出てくる〕

《え、あぁ》


どこ行った?


{あれー?小雪ちゃんじゃーん どうしたの、ここまで上がってくるなんてー

元カレの俺に会いに来てくれたの?}

「あ…違う、んです すみません 戻らないと…」

{…泣いてる?どうした?話聞くから、行こう…}

あれは…はぁ…やっぱり…

《小雪!何してる!》

「…!あ、勇介さん…」

《…ここは8階だ 用を言いつけたのは7階の人事だと言っただろう?》

「…あ、す、すみません!じゃあ、行きます…」

手を振り払ってこちらに来る小雪ちゃんを俺の後ろに隠すように引っ張る

《…うちの事務員に手を出さないでもらえるか?》

{…手、出されたくないならデスクにでも縛りつけといたらどうっすかー?じゃ、俺はここで…

小雪ちゃん、またね!}

「…」

…こいつ…

営業所属の飯田だ

女を見れば誰彼構わず手を出そうとする

成績が良すぎるせいで野放しになってはいるが…

小雪ちゃんから昔一瞬だけ付き合って

すぐに振られたと聞いていたから

8階には近づかないように言っておいたのに…


そのまま、引っ張って階段の踊り場まで連れてきた

《…大丈夫か》

「…すみません 大丈夫です」

《俺のせいだな すまない》

「…え?」

《居た堪れなくて部屋を出たんだろう?

だからって8階に来なくてもいいだろ

心配したぞ》

「…すみませ…え?」

〔?なんだ〕

「あの…心配したって、聞こえたんですけど…」

〔…悪いか 俺だって心配くらいする〕

「…嫌われてると、思っていたので…」

〔違う〕

「…え?」

〔とりあえず泣きやんでくれ 仕事中だ

フロアに戻ろう〕

「あ…は、はい…」


そのまま、腕を引いて部屋に戻った

《おー連れ戻してくれたか ご苦労さん》

〔…悪いんだが〕

《うん?》

〔小雪ちゃんとの飯の約束はなかったことにしてくれないか〕

《いいよ しょうがないなぁー》

〔…すまんな〕

《素直になれよなーまったく》"ぽんぽんっ"

〔…〕

「あ、あの…?」

〔飯の約束なんだが…俺と行ってくれ 頼む…〕

「…はいっ!」


【陽一朗point of view】


まったく…誰がどう見ても両想いなのに

なんでお互いに気持ちを伝えるどころか

拗らせてんだよ…


あいつが素直にならないなら、

俺が落とそうと思ってたのに

おかげで俺が手助けしなくちゃならなくなったじゃないか


あーあー

俺だって狙ってたのにな


まぁ、あの子のあんな嬉しそうな顔見ちゃったら

狙ってんのも馬鹿馬鹿しくはなるけど


〈陽一朗さん〉

《ん?なにかなー?》

〈あの、例の営業の彼がそこの廊下をウロウロしてるんですけど…〉

《わかった…ちょっと行ってくる

あの二人には内緒、ね?》

〈はい!あ、内緒にする代わりに

今度ランチごちそうしてくださいねっ!〉

《いいよー じゃ、行ってくるから》


…あーいたいた

しつこいんだよ…

自分から手ー出したクセに

人事の美人に乗り換えて、小雪ちゃんのことこっぴどく振ったんだよな こいつ…


《うちに何か用?》

{あんたに用はない 小雪ちゃん、いるんだろ?}

《小雪ちゃんなら、勇介と出かけたけど》

{は?何であの二人が…}

《何でって言われても…付き合ってるし》

{…}

《あんたみたいなモテ男が、まさか元カノに手を出さないと女に不自由してるわけじゃないだろ?》

{…ちっ}


あー行った行った

まったく…二度と来んなよ


《また来たら教えてくれる?》

〈はーい!〉

《そうだ!今日の夜、ご飯でもどう?予約してたんだけど、ドタキャンされちゃってさ》

〈行きたいです!〉

《決まり!じゃ、後でね!》

〈はい!〉


さて…中の二人はどうしてるかな…っと


【小雪point of view】


嫌われてるわけではない…ご飯にも誘ってもらえた…えっ…うれしい!どうしよう!


勇介さんとご飯…緊張しちゃうけど…

楽しみだなぁ…


〔…わかりやすいな〕

「え?」

〔鼻歌が聞こえてるぞ〕

「あっ!すみません…」

〔いやいい その曲は、誰の曲なんだ?〕

「あ、これは…アイドルグループの曲で…」

〔そういうのが好きなのか〕

「はい!」

〔そうか あとでまた教えてくれないか〕

「え?はい、わかりました!」


気に入ってくれたのかな…ふふ


あぁ…

パソコンに向かってる勇介さんもかっこいいなぁ…


あっ!いけないっ

仕事しなくちゃ…!




ーー


〔そろそろ定時だな 終わってるか?〕

「はい!確認お願いします!」

〔うん…………うん、OKだ 行こうか〕

「はい!」


《お?お二人さんも行くの?俺たちももう行くからさ 鍵頼んだ!》

〔あ?陽一郎!ったく…確認して閉めてから行こう〕

「はい!」



【陽一郎point of view】


《よし!先に出ようか》

〈はーい!あれ?あ、陽一郎さん、あの人…〉

《…ちょっと待ってて 話してくるから》

〈大丈夫ですか?〉

《もちろん♪すぐ戻るよ》




《待ってても来ないよ》

{…またアンタか…関係ねぇだろ}

《関係あるよー》

{は?}

《俺の大事な人なんでね 君みたいなクズに近づいて欲しくないわけ わかる?》

{へぇ…でもあっちのやつと付き合ってるんだろ?}

《そうだね それでも大事なのは変わりないから》

{…}

《あんたもさ、いい加減落ち着きなよ

…待ってるよ?ほら、あっち》

出入り口で人事の美人がキョロキョロしている

{…ちっ 余計なお世話だ}


…行ったな はぁ…


でも気持ちはわかるよ

小雪ちゃんって守りたくなる子だし

あの子と一緒にいると、俺は男なんだって思えるんだよね


俺も諦めが悪い方だけど

あんたも大概だな?


《おまたせ♪》

〈大丈夫でした?〉

《当たり前でしょ 俺があんなのに言い負けると思う?》

〈思わないです!陽一郎さん、強いしかっこいいし大好きですから!〉

《…そう?行こっか!》

〈はーい!〉


…


俺も、前に進むかなー


【勇介point of view】


〔小雪ちゃんは、何が食べたい気分だ?〕

「そうですねぇー…ハンバーグがいいです」

〔わかった あ、そうだ〕

「はい?」

〔さっき、8階に行ったときのことなんだが〕

「はい」

〔思わず呼び捨てで呼んでしまった すまない〕

「いえ!うれしかったです!」

〔そうか〕

「あの…よかったら…また、呼んでくれませんか?」

〔うん その前に確認しておきたいことがある〕

「はい?」

〔さっき8階に行ったのはどうしてなんだ?

俺、近寄るなって言っておいたと思うんだが〕

「…あれは…」

〔…〕

「怒らないって約束してくれますか?」

〔…約束しないと先に進まなさそうだな いいよ〕

「…これ、なんです…」

〔紙?陽一郎の字だな………な、なっ!

あいつっ!!〕

「あ!勇介さん!怒らないで…」

〔ぐっ…それで、あいつの言う通りよ、にしたってことなんだな?〕

「…はい」

〔はぁ…俺が迎え行くのも計算のうちだったというわけか〕

「すみません…」

〔いや、いい ハンバーグだったな?

行こうか 小雪〕

「!はいっ!勇介さん!」




"今から書くことを黙ってやるんだよ


きっと勇介が話しかけてくるから、普通に会話して

どんな会話でもいいから


会話が終わったら部屋の外に出て8階に行くこと

ただし、あまり奥には進まないように


勇介が必ず迎えに行くから 信じて待ってて


そうすれば、すべてうまくいくからね

                  

                   陽一郎"




あいつの思惑通りに進んだわけだ




タイトル〘恋のゲームメイカー〙


 

                     Fin...


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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