天然には敵わない
〔いおり!あぶなーーーーい!!〕
"ドンッ"
「え…!!かな!?だれか…だれかぁ!!!」
子どもの頃に
車にぶつかりそうになった俺をかばった
香菜の足には消えない"傷"ができたーー
【10年後 香菜point of view】
〔伊織ー!待ってぇー!〕
「おいおい、走らなくていいから
足痛くないか?」
〔だいじょーぶ!
待っててくれてありがとう!
置いていかれちゃうかと思った!〕
「置いていくわけないだろう?…ほら、ハンカチ
鼻の下に汗かいてる」
〔わっ…恥ずかしい…ありがと…!〕
「今日終わったらどっか寄っていくか?」
〔うん!甘い物食べたいよ!〕
「いいな どっか新しいとこでも探すか
店はまかせとけ 調べておくから」
〔ありがとう!楽しみにしてるね!〕
ふぅー4時間目終わったぁ…数学、難しかったぁ…
あとで伊織に教えてもらわないと…
「香菜、飯食おうぜ 腹減ったー」
〔うん!今日おべんとなぁにー?〕
「ウインナー入ってる 食うか?」
〔いいの?ありがと!わたしのシュウマイあげる〕
「サンキューほら、あーん」
〔ふふ あーん!おいしっ!〕
「ふ…っ」
〔ふぅー…おなかいっぱーい〕
「あ、俺5時間目の授業の準備で呼ばれてるから行ってくる またあとでな」
〔はーい!行ってらっしゃい〕
伊織はクラス委員だから、お昼休みに先生に呼ばれることがある
普段は伊織とご飯食べておしゃべりしてるんだけど
伊織、いないし 何しようかなぁ
〈あ、小岩井さん 今、1人?〉
〔うん どうかしたのー?〕
〈ちょっと話があるんだけど、いいかな?〉
〔もちろん!なぁに?〕
〈あ、ちょっと…こっちきてくれる?〉
〔ん?うん〕
この人は青山さん
普段はあまり話したことはないけど…
どうしたのかな
となりの空き部屋に連れてこられちゃった
内緒話かな?
〈あのね〉
〔うん〕
〈小宮くんのことなんだけど…そろそろ彼を解放してあげてほしいの〉
〔ん?伊織を…解放?〕
〈彼、あなたの怪我のことを気にしてずっとそばにいるってわからない?〉
〔え…!?そ、そうだったの…?〕
〈はぁ…いつまで優しい彼を縛りつけておくつもりなの?〉
〔…気づいてなかったよ ごめんね 伊織に聞いてみるから〕
〈本人に聞いたらそんなことないって言うに決まってるじゃない…〉
〔あ…そっか…そうだね、伊織は優しいから
わかった うん 教えてくれてありがとう〕
〈…じゃあ〉
知らなかった…
好き同士なんだって本当にそう思ってたの
わたしのコレ、まだ気にさせてたなんて
あれから10年も経つんだよ…?
でも…解放ってどうしたらいいんだろう
別れろっていうことなのかな
「香菜!いないから心配したぞ!」
〔あ…ごめん…〕
「空き教室なんかで何で1人でいるんだよ
何かあったのか?」
〔ううん…〕
「…とりあえず教室に戻ろう
あ、放課後の店決めたから 楽しみにしとけよー」
〔あ、そのことなんだけど…〕
「ん?」
〔今日は行けなくなっちゃった ごめん〕
「…なんで?」
〔家に帰らないといけないの〕
「そうか なら送って…」
〔大丈夫!!1人で帰れるから〕
「香菜?」
〔ん?〕
「何があった?」
〔何もないってばぁ あ、チャイム鳴った 戻ろ〕
「…」
それから、なるべく伊織と目が合わないようにした
早く解放しないと…
そのことで頭がいっぱいになってしまった
【伊織point of view】
…香菜の様子がおかしいのはすぐに分かった
俺がいない間に何かあったらしい
あいつ、俺に何も言わないで帰ってるし…
「ねぇ?昼休み教室にいた?」
{うん、いたよ どうかしたの?}
「香菜、誰かとどっか行かなかった?」
{あーそれなら、青山さんと教室出てったのは見たよ}
「青山…そう、ありがとう」
青山は、どこだ…?
あ、いた
「青山!」
〈な、なに?〉
「香菜に何か話したのか?」
〈…あの人話さないって言ったのに…〉
「香菜は何も話してないよ」
〈え…〉
「あんたと香菜が出ていくのを見た人がいたんだ それで?何を話した?」
〈…べつに〉
「教えてくれないか?」
〈…本人に聞けばいいじゃない〉
「…それもそうか じゃあね」
〈あっ…〉
「…話す気になった?」
〈…ええっと…〉
ふざけんな!!!
何が傷を気にして…だよ
余計なことを!!!
そりゃ、傷を作ったことは
俺のせいだし、そこは気にはしてるし
もちろん責任は取る!
だけど、そんなのが付き合う理由になるわけないだろう?
"ピーンポーン"
…まだ帰ってないのか?
"ピーンポーン"
〔…はい〕
「宅配便でーす」
〔あ!今開けます!お待ちください!〕
「…」
おいおい…
〔お待たせしてしまってすみません!ハンコを探すのに手間取…えっ!?
伊織!?何で…〕
「俺の声を忘れたのか?」
〔…宅配便って言った〕
「それはごめん 早く誤解を解きたかったからな」
〔誤解?〕
「青山が余計なこと言ってきたんだろ?
問いただして聞いてきた」
〔…〕
「とりあえず部屋に入れてくれないか?」
〔でも…〕
「俺んちに来るのでもいいけど?」
〔…いいよ どうぞ〕
「うん お邪魔しまーす」
〔…〕
「さてと まず、1つ目」
〔うん〕
「俺がお前のそばにいるのは傷のせいじゃない」
〔…ほんと?〕
「当たり前だ 2つ目」
〔うん〕
「お前と付き合ってるのは香菜が好きだから」
〔伊織ぃ…〕
「よしよし 3つ目」
〔?まだある?〕
「これが一番大事 よく聞いてくれ」
〔うん〕
「俺は独占欲が強いんだ だから香菜が別れたがっても受け入れてあげられない」
〔そうだったの?〕
「気づいてなかったのか?俺、香菜のそばから離れたがらないだろう?」
〔わかんなかった!〕
「そういうところも好きだよ」
〔照れるよぉ〕
「頼むから、他のやつの意見なんか聞かないでくれ 俺の気持ちは、俺にしか説明できないんだから」
〔…でもさ〕
「うん」
〔確認したって、伊織は優しいから本当のことなんて言わない…みたいなこと言われたら
わからなくなっちゃったの〕
「俺、優しくないだろ」
〔優しいよ!〕
「うーん…香菜には優しいけど、他のやつに優しくしてる覚えはないからなぁ」
〔そうなの?〕
「俺、お前のことで頭がいっぱいだし、お前のことちゃんと見てないと危なっかしくてさ」
〔えー?子ども扱いしてない?〕
「さっきもそうだっただろ」
〔え?〕
「チェーンもせずにドア大開放してさ」
〔あ、あはは…〕
「俺だったからいいけど、悪いやつだったらどーすんだよ」
〔…気をつけます〕
「よろしい これでわかってくれた?」
〔うん!別れなくていいんだよね!?〕
「当たり前だ!!ったくー心配したぞ」
〔ごめんなさぁい…〕
「いいよ じゃあ、仲直りのデートでも行くか!」
〔うんっ!あ!!言ってたお店行きたいよ!〕
「そういうと思った 行くぞ!」
はぁ…
俺がどんだけお前のこと好きか
全然伝わってなかったのかよ…
まぁでも これで少しは伝わったか?
これからも手放す気なんかないし
〔伊織!!めちゃくちゃおいしいよ!〕
「良かった 好きそうだなーって思って」
〔いいお店だね!ここ見つけてくれてありがとう!また来たいよ!〕
「うんうん また一緒に来ような」
〔お土産お土産ー〕
「俺も買って行こ」
〔大満足ー〕
「可愛いなぁ 香菜は」
〔ほんとぉ?ありがとうー!〕
「家まで送るよ」
〔うん!まだ一緒にいられるんだ!うれしい〕
「…」
くぅぅぅーーー!本当に可愛い
まいるよなぁ 素でやってるんだから
〔伊織?〕
「ん?」
〔顔赤いよ?〕
「香菜のそばにいるからね」
〔ふふーだいすきー!〕
「俺も大好きだぞー」
〔伊織ぃ…〕
「よしよし」
こうして頭撫でるの好きなんだよな
〔ありがと!送ってくれて〕
「どういたしまして
明日の朝、迎えに来るからな」
〔いいの!?〕
「当たり前だ 寝坊するなよ」
〔はぁい!〕
「じゃあ、また明日な」
〔うん!ありがとね、伊織!〕
「うん」
振り返る度に、玄関で手を振ってる香菜が可愛くて足の進みが遅いけど…
ここ、曲がるの嫌だなーなんて思いつつ
帰らないとな
いつになったら一緒に住めるのかな
「おはよ」
〔おはよぉー〕
「よし、行くぞ」
〔はぁい!〕
今日も2人で登校したら…
〔あ!青山さん!別れなくていいって!伊織の愛を再確認できたよ!ありがとう!〕
なんて言って青山の手を握ってブンブン振るんだよこれ素でやってるんだから敵わないよな…
青山、呆然としてたな…
「香菜、こっち」
〔ん?はぁい じゃあねぇ、青山さん!
なぁにー?〕
「いつまで青山の手ー握ってるんだよ
俺の手も空いてるけど?」
〔ふふ 伊織もブンブンしてほしかったの?〕
「ブンブンはしなくていい!」
〔えー?〕
香菜はちょっと不満げに
授業が始まるまで手をつないでいてくれた
そんなにブンブンしたかったのかよ
可愛いな、ほんとに
タイトル〘天然には敵わない〙
Fin…
こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。
再編集して投稿しております。




