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読み切り短編集  作者: おしるこ


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10/61

人の気も知らないで

「んでもあれだよなぁ…飯の時間に飯食わないやつがいるっつーのも、気を遣うわなー」

〔…そう言われれば、確かに、そう、だね〕

『おい…』

「だからよぉ、これ…」

〔あ、わたし今日は早めに休憩入ったんだった!

休み時間過ぎちゃう じゃ、行ってくんねー!〕

「え?おい…」

あいつのために買っておいたサンドイッチは

差し出した手とともに行き場をなくしていた


『お前なぁ…』

となりにいるこの男は、俺の同期の高橋遼

またやりやがったな、てめぇ…と言わんばかりの顔で睨んでくる

「…うるせぇ」

『ま、いいや 俺もそろそろ行くわ

じゃーな 直也』

「おう」


俺が何か言ったって、あいつはいつも肩や背中を

バシバシ叩いて笑い飛ばしてくるのに

本気で言ってないことくらい

言わなくたってわかるだろうがよ…


その後、あいつと話そうにも

俺は青果で場所が違うし、売り場で捕まえて話すわけにもいかねーし…

まぁ、明日にはまた休憩室で会えんだろ


…って思ってたのに

4日経っても来やしねぇ

遼もこねーし…

最初はたまたまかと思ってたけど…

こりゃ、相当気にしてんのか…?

すれ違えば挨拶とかはしてくれんのに…

昼の休憩の時だけ会えないなんてよぉ…


今日は絶対捕まえてやる!


そろそろ休憩だろ…?

あ、きたきた

「なぁ、半田今から休憩だろ?…あれ?それ2つも飲むのか?」

缶コーヒーを2つ持っている半田ひかりを捕まえた

〔太田くん、お疲れさまーあ、これは…〕

『半田、行くぞ』

「え?」

〔はーい じゃあ、太田くん またねー〕


…どこに行くってんだよ

『まったくいらないって言ってんのに、毎回持ってきやがる…律儀だなぁ、お前さんは』

〔そんなことないよー…〕

"バタンッ"


そう話しながら、遼が使っている部屋に入っていく

え…毎回…?

あれから、二人で休憩してるってことなのか?


俺はドアに聞き耳を立てた

人の行き来がなかったからちょうど良かった

あいつら、こんなとこで何してんだよ…


『なぁ、…ひかり…いいだろ…』

〔…すき…わっ!おっきい…〕

『ここ、さわれ…な?…』

〔うん…いい…っ〕

おいおいおいおいおいおいおいおい!!

"バタンッ"「何してんだ!てめぇ…ら…は?」


半田が見ていたスマホから顔を上げてこちらを見ている イヤホンをつけて動画を見ているようだ

遼はデスクで弁当食ってる…

『なんだよ、ノックくらいしろや』

「あ…え?」

〔どうかしたの?太田くん〕

「え!?あ、いや…」

『青果のお前が俺の部屋に何か用か?』

「…別にっ なんもねーよ!くそがっ」

"バタンッ"


何なんだよ、紛らわしいことしやがって…

あーーーー!!くそ!くそっ!!


てっきり…あいつらがイチャついてんのかと思って…


あれ…何でこんなイライラしてんだ、俺…


〔太田くん!〕

「…んだよ」

〔ご飯食べよう?まだでしょ〕

「いい」

〔ほら!好きなやつ買っておいたから〕

半田は冷たい缶コーヒーを俺の頬に当てた

「…つめてぇな」

〔行こう?〕

「…ん」


こいつ…人の気も知らねぇで…


【遼point of view】


「んでもあれだよなぁ…飯の時間に飯食わないやつがいるっつーのも、気を遣うわなー」


おい…お前そんなこと言ったら、半田が気にするだろうがよ…

どーせ、何か餌付けしてぇんだろうけど

不器用すぎるだろ、こいつ…

あーほら、部屋出てっちまったじゃねーか


こいつはいつもそうだ

そんなこと微塵も思ってもないのに、

何も考えねーで発言して嫌がられる

後から俺がどんだけフォローしてると思ってんだ


人の気も知らねぇで…


や、これはあれだな

いい機会かもしれん

いつまでも俺達がずっと一緒に働けるわけじゃねーんだ

あいつに、少し痛い目に遭わせないとな…

それで気づかない、直さないなら

もう知らん


『ま、いいや 俺もそろそろ行くわ 

じゃーな 直也』

「おう」


えーっと、半田は…いたいた

『半田』

〔高橋くん、なに?〕

『…気にすんなよ』

〔わかってるよ…でも、なんだろう なんかね〕

『あいつ、サンドイッチ食わそうとしただけだから』

〔それもわかってる せっかくダイエットしてるのに…〕

『充分痩せてんだろーが』

〔ううん…〕

『それでよぉ、あいつのことなんだが』

〔うん?〕

『明日から、昼休みになったら俺の部屋に来い』

〔え?なんで?〕

『何日かしたら、あいつが絶対近づいてくるから

そしたら、2人で部屋に入っていく

そんときに、あいつがお前に何を言ったのか、

言われたら嫌なことを言ったら傷つく人がいる、

なんて子どもでもわかることを思い知らせてやるんだよ』

〔…なるほどぉ OK 普段は普通に話していいの?挨拶とか〕

『いいぞ あくまでも昼休みにお前が休憩室に来ないってのが効くんだから たぶんな』

〔わかったー!じゃ、明日からよろしくぅ〕

『おう』


さーて…うまくかかってくれりゃいいけど


4日目、やっとかよ…

手がかかるな、本当に…


「なぁ、半田今から休憩だろ?…あれ?それ2つも飲むのか?」

〔太田くん、お疲れさまーあ、これは…〕

よし、行くか

『半田、行くぞ』

「え?」

〔はーい じゃあ、太田くん またねー〕


呆然としてるあいつに、トドメだ

『まったくいらないって言ってんのに、毎回持ってきやがる…律儀だなぁ、お前さんは』

〔そんなことないよー…〕

"バタンッ"わかりやすくドアを閉めてやった


さーて、次はどう出るかな…?

〔うまくいったね!〕

半田が小声で話しかけてくる

『まだ外にいるかもしれねぇ 普通にしてろ』

〔うん〕


俺はスマホとワイヤレスイヤホンを半田に渡して

お勧めのアニメを見せてやった

『なぁ、このキャラクターのひかりっていうやつ

いいだろ 声もタイプなんじゃないか?』

〔わっ!この顔すき 声?再生…っと、わっ!!おっきい…うるさぁい〕

『ここ、さわれよ、自分で調整しろ な、どうだ?』

〔うん!声もいいーっ〕


"バタンッ"「何してんだ!てめぇ…ら…は?」

おわっ!!びっくりした!

まさか入ってくるなんて思ってなくて

箸落としたじゃねーかよ

『なんだよ、ノックくらいしろや』

「あ…え?」

〔どうかしたの?太田くん〕

「え!?あ、いや…」

『青果のお前が俺の部屋に何か用か?』

「…別にっ なんもねーよ!くそがっ」

"バタンッ"

バタバタと足音が遠ざかっていく

『やりすぎたかぁ?』

〔ねぇ…なんか、可哀想だよ…迎えに行っていい?〕

『行ってやってくれ 頼むな』

〔うん!!〕


はぁーまったく…疲れるぜ…


その後直也は半田に連れられて部屋に入ってきた

『わかっただろ?』

「…気をつけるよ」

『それでいい』

「半田、すまんかった」

〔大丈夫だよ でも、次あーいうこと言ったらもう知らないから〕

「!…悪かったよ…」

『ほら、弁当!お前の分』

「さんきゅ…」

『750円な』

「わかってるよ…!」


それからはまた三人で休憩室で休憩するようになった

あいつの軽口もだいぶ少なくなってきた

不器用なのは変わらないけどな…

「これだけでも食えって!」

〔やーだ!高橋くん笑ってないでなんとかしてー〕

『まったく…素直じゃねーな

半田が倒れでもしたら心配だって言えばいいだろ』

〔え?〕

「な、な…うるせぇ!」

〔…ありがと…心配かけて、ごめんね〕

「べ、べつに…でも、ダイエットなんてやめろよ

な?」

『やれやれ…』


俺はいつまで、この二人のドギマギを見守らなきゃならねーんだよ…


ったく…早くくっついちまえ!


【ひかりpoint of view】


「んでもあれだよなぁ…飯の時間に飯食わないやつがいるっつーのも、気を遣うわなー」


…いつもの軽口とはちょっと違って

なんだろう 来るなって言われたみたいで

胸がチクッとした

〔…そう言われれば、確かに、そう、だね〕

『おい…』

「だからよぉ、これ…」

〔あ、わたし今日は早めに休憩入ったんだった!

休み時間過ぎちゃう じゃ、行ってくんねー!〕


うまく笑えたかな…

そもそもわたしがダイエットを始めたのも

太田くんの1言からだった


「俺、スラーっとした子が好きだなぁ」

だから、ダイエットしようと思って…


わたし達は11時から21時までの仕事で

家に着いて早くて夜22時過ぎにご飯を食べる生活をしてるから

16時間後にご飯を食べる断食ダイエットを始めた


休憩は13時から1時間と17時から30分だから

17時に食事を取ることにしていた


だから13時には食べないようにしていたんだけど…

13時は2人と一緒だけど

17時は時間が合わないから、食べてるの知らないんだよね その時はちゃんと食べてるのに…


あの時太田くんがサンドイッチをくれようとしたこともわかってたの

太田くんはわたしに餌付けをするのが好きだから

でも、その餌付けで少し太っちゃったのに…


人の気も知らないで…!


高橋くんと、太田くんの仲間はずれをしてから

太田くんはさらにわたしを甘やかすようになった


どうしてこんなに餌付けしてくるのよ…

「これだけでも食えって!」

〔やーだ!高橋くん笑ってないでなんとかしてー〕

『まったく…素直じゃねーな

半田が倒れでもしたら心配だって言えばいいだろ』

〔え?〕

「な、な…うるせぇ!」

〔…ありがと…心配かけて、ごめんね〕

「べ、べつに…でも、ダイエットなんてやめろよ

な?」


心配、してくれてたんだ…

ダイエットもやめろって…

だって、スラーっとした子が好きって…


「俺、お前がうまそうに食うの見てるの好きなんだよ」

彼はそう言って笑った


…太っても知らないから…責任取ってよね…!


 

タイトル〘人の気も知らないで〙


         

                    Fin…


こちらの記事はnote様で同一名義にて投稿しております。

再編集して投稿しております。

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