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召喚少女! ~少女たちと召喚士が紡ぐ、カードと絆の物語~  作者: 和泉きよ


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002.最強? ポンコツ?

「まず、召喚少女の基本から教えるわ」


 翌日の朝。

 僕はテーブルの向かいに座るルナから、カードゲームの講義を受けていた。


「よろしくお願いします、先生」


「茶化さないで」


「はい」


 ルナは少しだけ頬を膨らませた。

 その仕草が妙に可愛らしくて、僕は笑いそうになる。


「まず、召喚少女の勝利条件は一つ」


 ルナがテーブルの上にカードを並べた。


「相手の召喚士ゲージをゼロにすること」


「召喚士ゲージ?」


「これ」


 ルナが端末を操作すると、画面の中央に数字が表示された。


『召喚士ゲージ 20』


「最初は二十。少女が攻撃すると、このゲージを減らせるの」


「じゃあ、相手の少女を倒さなくてもいいの?」


「もちろん。相手の少女を倒して安全に攻撃するのが基本だけど、相手を無視して召喚士を直接攻撃することもできるわ」


「なるほど」


「ただし、相手の少女が場にいる場合は、その少女に攻撃を受け止められることがある」


 ルナは一枚のカードをテーブルに置いた。


「それから、重要なのが召喚エネルギー」


「エネルギー?」


「一ターンごとに三ポイント回復する。少女を召喚したり、一部のアイテムを使ったりすると消費するの」


「じゃあ、強い少女ほどたくさん必要?」


「基本的にはそうね」


「ルナは?」


 僕が自分のカードを見る。


「ルナは召喚コスト三」


「ちょうど一ターン分ね」


「そういうこと」


 ルナは満足そうに頷いた。


「つまり、最初のターンから私を召喚できる」


「おお」


「そして、場に出せる少女は最大三人」


「三人も?」


「一人で戦い続ける必要はないの。状況に応じて少女を入れ替えるのが大切」


「なるほど……」


 思ったより本格的だ。

 僕はカードを眺めながら、少しずつ理解していく。


「じゃあ、最後に攻撃」


「そう。攻撃する順番はSPD――速度が高い少女から」


「ルナは?」


「300」


「結構速い?」


「普通」


「普通なんだ」


「GRだからって、何でも一番というわけじゃないのよ」


 ルナは少し不満そうだった。


「攻撃力も300。防御力も300。HPは800」


「バランス型?」


「そう。私は何でもできる。でも、何か一つに特化しているわけじゃない」


「それって弱いんじゃ……」


 ルナが僕を睨んだ。


「……今のは忘れて」


「そうね」


 ルナは腕を組んだ。


「実際に戦えば分かるわ」


「え?」


「今日、初心者向けの練習場に行くんでしょう?」


「ああ」


「なら、そこで試してみましょう」


 ルナは自信満々だった。


「私がポンコツじゃないってことを証明するわ」


「誰もポンコツなんて言ってないけど」


「顔に書いてある」


「そんなに?」


「ええ」


 僕は苦笑した。


 こうして僕たちは、初めてのカードバトルへ向かった。


     ◇


 街の中央にある召喚少女ショップ。


 その二階には、初心者向けの無料対戦スペースがあった。


「ここなら、負けても大丈夫」


 受付を済ませながら、ルナが言う。


「どうして?」


「初心者用の対戦だから、賞金もないし、カードも失わない」


「それは助かる」


 僕は少し緊張していた。


 対戦相手として現れたのは、僕と同じくらいの年齢に見える男性だった。


「よろしくお願いします」


「よろしく」


 お互いに端末の前に座る。


『対戦を開始します』


『召喚士ゲージ――20』


 画面に数字が表示された。


「まず手札は五枚」


 ルナが小声で教えてくれる。


「少女カードがなければ、一度だけ引き直せる」


 僕は手札を見る。


 少女カード。


 アイテム。


 イベント。


 そして――。


「ルナ」


 僕は笑った。


「ちゃんといる」


「当然でしょう」


 ルナは得意そうに胸を張った。


「私がいるんだから、勝てるわ」


「じゃあ、お願いします」


「任せて」


 対戦が始まった。


『先攻――天城ユウ』


「召喚エネルギー、3」


 画面の端に数字が表示される。


『召喚エネルギー 3/3』


「ルナを召喚」


 僕がカードを端末に置いた。


 淡い光が広がる。


 そして――。


「また会ったわね、ユウ」


「さっき別れたばかりだけどね」


「そういう問題じゃないの」


 ルナが場に立つ。


『GR ルナ』


『HP 800』


『ATK 300』


『DEF 300』


『SPD 300』


『絆ポイント 10』


「よし」


 僕が意気込む。


「攻撃!」


「待って」


 ルナが手を上げた。


「何?」


「今は攻撃できないわ」


「え?」


「召喚したターンは、基本的に攻撃できないの」


「あ……」


「召喚したばかりなのに、いきなり殴られたら困るでしょう?」


「確かに」


「だから、最初のターンは準備」


 ルナが苦笑する。


「次のターンから攻撃できる」


「覚えた」


 僕は頷いた。

 すると、相手のターンになった。


「じゃあ、僕も準備……」


 相手は一枚の少女カードを場に置いた。


「召喚!」


 光とともに、赤い髪の少女が現れる。


『R フレア』


「R……」


「レアリティは、N、R、RR、SR、UR、GRの順番」


 ルナが説明する。


「GRが一番高い」


「じゃあ、こっちが有利?」


「……そう簡単じゃないわ」


 ルナが相手を見つめる。


「レアリティだけで勝負が決まるなら、誰も戦略なんて考えないでしょう?」


「なるほど」


 相手の少女も攻撃できない。


 そのままターンが終わった。


     ◇


 二ターン目。


『召喚エネルギー 3/3』


 ルナが教えてくれた通り、エネルギーが回復している。


「ルナで攻撃する」


「了解」


 ルナが剣を構える。

 相手の場には、赤い髪の少女が一人。


「攻撃対象は?」


「相手の少女」


「分かった」


 ルナが駆け出した。

 剣が振り抜かれる。


「いくわ!」


 ガキンッ!


 カードから再現された光の刃が、相手の少女を捉える。


『300ダメージ』


 相手少女のHPが減った。


『HP 500/800』


「おお……」


「これが基本の戦闘」


 ルナが戻ってくる。


「攻撃力から相手の防御力を引いて、残った分がダメージになる」


「じゃあ、相手のDEFが200なら100ダメージ?」


「そう」


「分かりやすい」


 僕が頷いた、そのとき。


『相手ターン』


 相手の少女が動いた。


「攻撃!」


 赤い光がルナへ飛んでくる。


『300ダメージ』


 ルナのHPが減る。


『HP 500/800』


「ルナ!」


「大丈夫」


 彼女は平然としていた。


「まだHPは500ある」


「でも、同じだけ減った」


「なら、次で倒せばいい」


 ルナが剣を握る。


「それに――」


 彼女がこちらを振り返った。


「ユウ。あなたもちゃんと見ていて」


「え?」


「私一人で戦っているんじゃないから」


「……うん」


 その言葉が、なぜか心に残った。


     ◇


 三ターン目。


 僕は新しいカードを引いた。


「アイテムカード?」


「使ってみる?」


 ルナが尋ねる。


「うん」


 僕はカードを端末に置いた。


『妖精のポーション』


『味方少女一人のHPを200回復』


「ルナを回復」


 光がルナを包む。


『HP 700/800』


「これでまた戦える」


「アイテムにはこういう補助効果があるの」


「少女カードだけじゃないんだ」


「ええ。衣装カードやイベントカードもある」


「衣装も?」


「能力が変化するものもあるわ」


「じゃあ、カードを集める意味が結構あるんだな」


「そうよ」


 ルナは少し得意そうに言った。


「ただ強い少女を集めればいいわけじゃない」


「カードの組み合わせが大事ってこと?」


「正解」


 僕は少し楽しくなってきた。


「じゃあ、今度こそ攻撃!」


「ええ!」


 ルナが駆け出す。

 相手の少女に向かって剣を振る。


『300ダメージ』


 相手少女のHPがゼロになった。


『少女カード――退場』


「やった!」


 僕が思わず声を上げる。


「ルナ、強い!」


「当然でしょう」


 ルナは満足そうに微笑んだ。


 ところが――。


「……あ」


 僕は気づいた。


「相手の少女がいなくなった」


「そうね」


「じゃあ、次のターンは……」


「相手の召喚士を直接攻撃できる」


 ルナが頷く。


「相手のゲージを削れる」


「なるほど」


 ゲームの流れが少しずつ分かってきた。


 少女を倒す。


 道を作る。


 召喚士を攻撃する。


 そしてゲージをゼロにする。


「よし」


 僕は拳を握った。


「このまま勝てそうだ」


「油断しないで」


 ルナが言った。


「カードゲームは、最後まで何が起きるか分からないから」


「分かった」


 しかし――。


 次のターン。

 相手の場に新しい少女が召喚された。


「……え?」


 僕は固まった。


『UR ブレイヴ』


 大きな槍を持った少女が現れる。


「UR……」


 ルナの表情が少し険しくなった。


「攻撃力が高いタイプね」


「ルナより強い?」


「単純な攻撃力なら」


「……」


 僕の額に汗が浮かぶ。

 相手が攻撃を宣言した。


「攻撃!」


 UR少女の槍が振り下ろされる。


『500ダメージ』


「ルナ!」


 ルナのHPが200まで減った。


「大丈夫……」


 彼女が片膝をつく。


「まだ戦える」


「でも……」


「ユウ」


 ルナがこちらを見る。


「次は、あなたが決める番よ」


「僕が?」


「カードを使うのはあなた」


 僕は手札を見る。


 アイテム。


 イベント。


 そして――もう一枚の少女カード。


「……これだ」


 僕はカードを置いた。


「召喚!」


 光が広がる。


『R ウィンド』


 風を操る少女が現れた。


「ルナをサポートして!」


「了解!」


 風が吹き抜ける。


『味方SPD+100』


「これで……」


 僕はルナを見る。


「先に動ける!」


「そういうこと」


 ルナが立ち上がった。


「行くわ!」


 彼女の速度が上がる。

 相手より先に動く。

 剣が閃く。


『300ダメージ』


 相手のUR少女のHPが大きく減った。


「まだだ!」


 相手も反撃する。

 しかし、風の効果でルナが先に動いたことで、相手の少女は行動する前に大きく削られている。


「もう一度!」


 僕はルナに指示を出した。


「攻撃!」


 ルナが走る。


 そして――。


『少女カード――退場』


「やった!」


 僕は思わず立ち上がった。


「これで直接攻撃できる!」


 ルナがこちらを見る。


「行くわよ、ユウ!」


「うん!」


 ルナの剣が、相手の召喚士ゲージを切り裂いた。


『召喚士ゲージ 20→10』


「一気に半分!」


「あと一回」


 ルナが笑う。


「決められるわ」


 相手も必死にカードを出してくる。


 しかし――。


 その後の攻防を制したのは僕たちだった。


 最後の一撃。


 ルナの剣が光る。


『召喚士ゲージ 10→0』


『WIN』


 画面に大きく表示された。


「……勝った」


 僕はしばらく画面を見つめていた。


「勝った……!」


「当然よ」


 ルナが胸を張る。


「私たちが組んだんだから」


「僕たち……」


 その言葉を聞いて、僕は少し嬉しくなった。


「うん」


 僕は笑う。


「僕たちの勝ちだ」


 ルナも笑った。


「そうよ」


 その瞬間。


『絆ポイント+5』


 画面に新しい表示が浮かんだ。


『ルナ 絆ポイント 15』


「……また増えた」


「ええ」


「どうして?」


「一緒に戦ったから」


「それだけ?」


「それだけじゃないわ」


 ルナは少しだけ恥ずかしそうに視線を逸らした。


「ちゃんと私を信じて、最後まで一緒に戦ったから」


「……」


「絆ポイントは、戦ったり、助けたり、一緒に過ごしたりすることで増えるの」


「高くなるとどうなるの?」


「能力が上がる」


「それだけ?」


「……まだ秘密」


「なんで?」


「そのうち分かるわ」


 ルナはいたずらっぽく笑った。


     ◇


 帰り道。


「ねえ、ルナ」


「何?」


「今日の戦い、楽しかった」


「私も」


「最初はルールも全然分からなかったけど」


「今は?」


「少し分かった」


「少し?」


「……結構分かった」


「よろしい」


 ルナは満足そうに頷いた。


「でも、まだまだね」


「厳しいなあ」


「当然でしょう」


 彼女は前を向いた。


「召喚少女は、カードの強さだけで勝つゲームじゃない」


「うん」


「相手のカードを見て、手札を考えて、少女の能力を組み合わせる」


「うん」


「そして――」


 ルナが僕を見る。


「召喚した少女と、ちゃんと信頼関係を作ること」


「絆ポイントのこと?」


「それもある」


「それも?」


「もっと大切なこと」


 ルナは少しだけ微笑んだ。


「一緒に戦いたいって思えること」


「……」


「それが、一番大事だから」


 僕は返事をしなかった。


 ただ、その言葉を覚えておこうと思った。


 このときはまだ。


 その言葉の意味を、僕は本当には理解していなかった。


 カードゲームの勝ち方も。


 少女との付き合い方も。


 そして――。


 一緒に戦いたいと思える相手が、どれほど大切なのかも。


 僕はまだ知らなかった。


 ただ一つだけ。


「ルナ」


「何?」


「明日も一緒にやろう」


「……!」


 ルナの足が止まった。


「……ええ」


 少しだけ頬を赤くして。


「もちろんよ、ユウ」


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