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召喚少女! ~少女たちと召喚士が紡ぐ、カードと絆の物語~  作者: 和泉きよ


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015.新たなGR

 大会で敗れてから、二週間。


 天城ユウは、以前にも増してカードバトルに熱中していた。


「もう一回」


「はい」


 エルナがカードを並べる。


「今度はクロエを先に出す」


「了解!」


 クロエが笑う。


「さっきより速く攻めるってことだね!」


「うん」


 ユウは手札を確認する。


「ノアは相手の主力が出てから。エルナは二ターン目に――」


 その横で、ルナは静かに見ていた。


 最近のユウは、ほとんど毎日のように練習している。


 強くなるため。


 勝つため。


 次の大会で負けないため。


 それ自体は悪いことではない。


 むしろ、ルナだってユウに勝ってほしいと思っている。


 でも。


「……ユウ」


「ん?」


「少し休憩しない?」


「あと一戦だけ」


「……うん」


 あと一戦。


 その言葉を、ルナは何度聞いただろう。


 以前なら。


 一戦終われば、


「今日はここまでにしようか」


「じゃあ、散歩しよう」


「夕飯、何にする?」


 そんな会話が自然に生まれていた。


 今は違う。


 一戦が終われば、次の一戦。


 その次が終われば、さらに次。


 ユウの頭の中には、常にカードと大会のことがあった。


「よし」


 ユウがカードをまとめる。


「もう一回やろう」


「……分かった」


 ルナは小さく頷いた。


     ◇


 そんなある日のことだった。


「ユウ!」


 モモが突然、玄関から駆け込んできた。


「大変!」


「どうしたの?」


「新しいパック、今日発売だよ!」


「……!」


 ユウの目が輝いた。


「今日だったのか!」


「うん!」


 モモが笑う。


「しかも今回は、特別なGRが入ってるんだって!」


「特別なGR?」


「そう!」


 モモが一枚の広告を取り出した。


 そこには、新弾の目玉カードが描かれていた。


 黒と白。


 金色の装飾。


 長い黒髪。


 そして、王冠。


「GR――レイナ」


 ユウが呟いた。


 全属性を扱う、最高クラスのGR。


 その能力は「王者の統率」。


 場にいる味方が多いほど、味方全体を強化する。


 さらに、究極技「グランド・オーダー」は、味方の能力をまとめて強力な一撃に変換する。


「強い……」


 ユウは広告から目を離せなかった。


「欲しい」


 ルナがその横から見る。


「レイナ……」


「このカードがあれば、今のデッキをさらに強くできる」


 ユウはすぐに財布を手に取った。


「買いに行こう」


     ◇


 カードショップは、発売日ということもあって大勢の人で賑わっていた。


「一人何パックまでですか?」


 ユウが店員に尋ねる。


「お一人様三十パックまでとなっております」


「三十……」


 ユウは少し考えた。


 そして。


「三十パックください」


「三十パックですね。ありがとうございます」


 袋いっぱいのカードパック。


 ユウは嬉しそうに抱えた。


 帰宅すると、すぐに開封が始まった。


「一枚目!」

 N。


「二枚目!」

 R。


「三枚目!」

 SR。


 なかなか出ない。


 十パック。


 二十パック。


 二十九パック。


「……出ない」


 ユウは最後の一パックを見つめた。


 ルナが隣に座っている。


「ユウ」


「これで最後だ」


「うん」


「頼む……!」


 パックを開く。


 そして。


 カードから、強烈な光が溢れた。


「……!」


 部屋が白く輝く。


 召喚陣が展開される。


 その中心に、一人の少女が立っていた。


 黒く長い髪。


 黄金色の瞳。


 白、黒、金を基調とした気品あるドレス。


 頭には小さな王冠。


 少女はゆっくりと目を開いた。


「私を召喚したのね」


 落ち着いた声。


「ならば証明しなさい」


 少女がユウを見る。


「あなたが私に相応しい召喚主であることを」


「……レイナ」


 ユウは呟いた。


「GRレイナ……!」


 レイナはユウを観察するように見つめる。


「あなたが召喚主?」


「うん」


「ふむ」


 レイナは少しだけ笑った。


「悪くないわね」


「よろしく!」


「ええ」


 レイナは頷いた。


「こちらこそ」


 そして。


 ユウはカードを握りしめた。


「これで……もっと強くなれる」


 その言葉を聞いて。


 ルナは少しだけ目を伏せた。


     ◇


 その日から。


 レイナを加えた新しいデッキの研究が始まった。


「レイナは三人目に出すのがいい」


「そうね」


「場にいる人数が多いほど強くなるなら――」


「最初にノア」


「次にエルナ」


「そしてレイナ」


 ユウの考えは止まらない。


 さらに。


「クロエを組み合わせたら?」


 レイナが言った。


「攻撃力を高めれば、一気に勝負を決められるでしょう」


「なるほど!」


 ユウの目が輝く。


「じゃあ、クロエとレイナを軸にして……」


「回復役も必要ですね」


 エルナが言う。


「ミレイを入れる?」


「それもいい」


「防御はノア!」


 モモが手を挙げる。


「じゃあ私は?」


「モモも入れよう」


「やったー!」


 どんどんデッキが完成していく。


 その光景を。


 ルナは少し離れた場所から見ていた。


「……」


 楽しそう。


 ユウは本当に楽しそうだった。


 強いカード。


 強い組み合わせ。


 新しい戦術。


 以前は自分も、その中心にいた。


 でも今は――。


「ルナ」


「……え?」


 突然、名前を呼ばれた。


「次の大会、応援してくれる?」


「……もちろん」


 ルナは笑った。


「頑張ってね」


「うん!」


 ユウはまたカードへ視線を戻した。


 ルナはその背中を見る。


「……応援、か」


 小さく呟いた。


 その言葉が。


 自分でも驚くほど寂しく聞こえた。


     ◇


 数日後。


 新しいデッキでの初めての大会。


 ユウは快調に勝ち上がっていた。


「レイナ!」


「承知したわ」


 レイナが場に出る。


「王者の統率」


 仲間の攻撃力と防御力が上昇する。


「クロエ!」


「行くよ!」


 クロエが一気に攻める。


「エルナ、サポート!」


「お任せください」


 完璧な連携。


 相手の少女たちが次々に倒れていく。


「すごい……」


 観客から声が上がる。


「GR三枚の組み合わせ、強すぎる!」


 ユウは勝ち続けた。


 一回戦。


 二回戦。


 三回戦。


 準決勝。


 そして――。


「優勝、天城ユウ選手!」


 また勝った。


「やった!」


 ユウは拳を握る。


「勝った!」


 レイナが静かに頷いた。


「当然の結果ね」


 クロエが笑う。


「やっぱりこのチーム、最高じゃん!」


 エルナも微笑む。


「皆さんの連携が素晴らしかったです」


 ミレイやモモも喜んでいる。


 ユウは周囲を見渡した。


「みんな、ありがとう!」


 大勢の少女たち。


 強力なGR。


 完璧に近づいていくデッキ。


 そして――勝利。


 ユウは嬉しかった。


 今までで一番、強くなっている気がした。


     ◇


 大会が終わった夜。


 家では祝勝会が開かれていた。


「優勝おめでとう!」


「おめでとうございます!」


「さすがですわ!」


 少女たちが口々に祝福する。


 ユウも笑っている。


「ありがとう、みんな」


 その輪の中に、ルナもいた。


「おめでとう、ユウ」


「ありがとう、ルナ」


「……うん」


 ルナは笑った。


 そして。


 ユウの隣に座ろうとした。


 しかし、その場所にはレイナがいた。


「次の大会についてだけれど」


 レイナがユウに話しかけている。


「今回のデッキには、まだ改善の余地があるわ」


「やっぱり?」


「ええ。特に――」


 二人がカードを見ながら話している。


 ルナは少し離れた場所に座った。


 誰も気づかない。


 ルナは笑っている。


 いつものように。


「……良かった」


 そう呟く。


「ユウが勝てて」


 本当にそう思っている。


 ユウが勝つことは嬉しい。


 仲間が増えることも嬉しい。


 強くなることも嬉しい。


 なのに。


 胸の奥だけが。


 どうしても、少し寂しかった。


     ◇


 夜。


 みんなが眠ったあと。


 ルナは一人でベランダに出ていた。


 月が出ている。


 最初に召喚された夜と同じような月だった。


「……懐かしい」


 ルナは空を見上げる。


 初めてユウに呼ばれた日。


 初めて一緒に戦った日。


 初めて「相棒」と呼ばれた日。


 どれも大切な思い出だ。


「私は……」


 ルナは胸元に手を当てる。


「まだ、ユウの相棒なのかな」


 答えは出ない。


 ただ。


 最近のユウは、自分よりも新しいカードを見ている。


 自分よりも強い少女を探している。


 そして。


 自分よりも勝てる組み合わせを求めている。


「……私も、もっと強くならなきゃ」


 ルナは拳を握った。


「ユウの隣にいるために」


 そう呟いた。


 しかし。


 その言葉の中に。


 以前にはなかった焦りが混じっていることを。


 ルナ自身は、まだ気づいていなかった。


 そしてユウは。


 新しく手に入れたGRカードを眺めながら。


「次は、もっと強いデッキを作ろう」


 そう呟いていた。


 ――勝利は増えている。


 仲間も増えている。


 カードも増えている。


 それなのに。


 ユウとルナの距離だけは。


 少しずつ。


 少しずつ。


 離れていった。


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