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召喚少女! ~少女たちと召喚士が紡ぐ、カードと絆の物語~  作者: 和泉きよ


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13/42

013.敗北

 大会まで、残り一週間。


 天城ユウは、毎日のようにカードと向き合っていた。


「ここを変えて……」


 机の上には、何種類ものGRカードが並んでいる。


 クロエ。


 ノア。


 エルナ。


 ミレイ。


 モモ。


 セレス。


 そして、ルナ。


 以前なら、この中からどの三人を選ぶかだけでも悩んでいた。


 けれど今のユウには、少しずつ答えが見えてきていた。


「攻撃はクロエ」


 カードを一枚置く。


「防御はノア」


 もう一枚。


「サポートにエルナ」


 最後の一枚を置く。


「これならかなり強い」


 ユウは満足そうに頷いた。


「攻撃、防御、サポート。役割もきれいに分かれてる」


「うん。強そうね」


 隣からルナが答えた。


「ありがとう」


 ユウはカードを眺め続ける。


「この三人なら、前回より安定して勝てると思う」


「……そう」


 ルナは少しだけ黙った。


「ねえ、ユウ」


「ん?」


「明日の大会の練習、一緒にやらない?」


「ああ……」


 ユウは少し迷った。


「明日はクロエたちとの連携を試したいんだ」


「……そっか」


「ごめん。ルナとはまた今度やろう」


「うん」


 ルナは笑った。


「分かった」


 その笑顔を見て、ユウは何も思わなかった。


 今は大会が近い。


 勝つために必要なことをする。


 ただ、それだけだった。


     ◇


 そして大会当日。


 会場は前回の大会よりも小規模だった。


 それでも、強豪プレイヤーが多く集まっている。


「今回も優勝する」


 ユウは受付を済ませながら言った。


「うん!」


 モモが元気に答える。


「私たちならできます」


 ミレイも微笑む。


「当然ですわ」


 セレスが腕を組む。


「……」


 ノアは静かに頷いた。


 クロエは楽しそうに笑っている。


「強い相手、いるかな?」


 エルナは静かに一礼した。


「皆様の勝利をサポートいたします」


 そして。


 少し離れたところにいたルナが、ユウを見つめていた。


「ユウ」


「ん?」


「頑張ろうね」


「もちろん」


 ユウは笑った。


 そして第一試合が始まった。


     ◇


 一回戦。


 ユウの先攻。

 召喚エネルギーを使ってクロエを召喚する。


「行くよ、クロエ」


「任せて!」


 クロエが前線へ出る。

 相手もすぐに少女を召喚した。


 だが、ユウは冷静だった。


「エルナでサポート」


「承知しました」


 クロエの攻撃力を上げる。


「そして攻撃!」


「いっくよ!」


 一気に相手の少女を倒す。

 そのまま召喚士ゲージにもダメージが入る。


 試合はユウのペースだった。


「勝った!」


 数ターン後。

 相手の召喚士ゲージがゼロになる。


「勝者、天城ユウ!」


「よし!」


 ユウは拳を握った。


「やっぱり、この組み合わせは強い」


 クロエが嬉しそうに笑う。


「でしょ?」


 ノアも頷く。


「想定通り」


 エルナも微笑む。


「素晴らしい連携でした」


 ユウは満足していた。


「これなら今日もいける」


 そのとき。


「ユウ」


 ルナが声をかけた。


「なに?」


「……ううん」


 ルナは笑った。


「次も頑張って」


「うん!」


     ◇


 二回戦。


 三回戦。


 ユウは勝ち続けた。


 新しく組んだデッキは強かった。


 クロエの高火力。


 ノアの防御。


 エルナのサポート。


 役割が明確で、隙が少ない。


「このデッキなら……」


 ユウは思った。


「前回以上に勝てる」


 そして準決勝。


 相手は、珍しいデッキを使う召喚士だった。

 大量のイベントカードを使って、相手の戦術を崩すタイプ。


「面白い」


 ユウの目が輝く。


 序盤は互角だった。


 クロエが攻撃。


 ノアが防御。


 エルナが支える。


 ところが――。


「イベントカード、『幻惑の霧』!」


 相手のカードが発動する。


「なっ……!」


 ユウの場の少女たちの能力が一時的に無効化された。


「今だ!」


 相手が一気に攻撃してくる。


 クロエのHPが大きく削られる。


「クロエ!」


「まだいける!」


 ユウはカードを探した。


 回復カード。


 防御カード。


 何かないか。


 だが――。


「……ない」


 手札に必要なカードがない。


 次のターン。


 クロエが倒された。


「くっ……!」


 ノアも攻撃を受ける。


 エルナのHPも減っていく。


 そして。


 ユウの召喚士ゲージは残り三。


 相手は残り五。


 あと少し。


 まだ逆転できる。


 ユウはデッキからカードを引いた。


「……!」


 必要なカードではなかった。


 さらに一枚。


 違う。


 もう一枚。


 違う。


「くそ……」


 焦りが出てくる。


 そして――。


「攻撃!」


 相手の一撃が入った。


 ユウの召喚士ゲージがゼロになる。


「勝者、・・・――!」


 会場の声が遠く感じた。


「……負けた?」


 ユウは呆然とした。


 準決勝敗退。


 前回は優勝。


 その前も、順調に勝ち上がっていた。


 なのに。


「なんで……」


 ユウは手札を見る。


「もっと強いカードがあれば……」


 自然と、その言葉が口から出ていた。


「もっと強いカードがあれば、勝てた」


 そのとき。


「ユウ」


 ルナが近づいてきた。


「大丈夫?」


「……うん」


 ユウは俯いたまま答える。


「ちょっと考えたい」


「そっか」


 ルナは少し迷ってから言った。


「じゃあ……」


 一歩近づく。


「次は、私と一緒に戦わない?」


「……ルナと?」


「うん」


 ルナは微笑んだ。


「二人で最初に戦ったときみたいに」


「……」


「最近、ずっと新しい組み合わせを試してるでしょ?」


「うん」


「だから」


 ルナは少しだけ照れながら言った。


「たまには、私と二人で戦いたいなって」


 ユウは黙った。


 その言葉を聞いて。


 一瞬だけ。


 昔のことを思い出した。


 初めて召喚した日。


 初めて一緒に戦った日。


 初めて賞金をもらった日。


 そして――。


「相棒」


 二人でそう呼び合ったこと。


 でも。


 ユウは首を横に振った。


「ごめん」


「……え?」


「今は、もっと強くならないといけないから」


「……」


「ルナと二人で戦うのも楽しいけど……」


 ユウはカードを見つめた。


「大会で勝つなら、もっと強い組み合わせを探したい」


 ルナの表情が止まった。


「……そっか」


「うん」


「分かった」


 ルナは笑った。


「じゃあ、頑張ってね」


「ありがとう」


 ルナはその場を離れていった。


 ユウは、その背中を見送った。


 そして。


「次は勝つ」


 強く拳を握った。


「もっと強くならないと」


     ◇


 帰宅後。


 ユウはさっそくカードを並べた。


「クロエを外すべきか……?」


「それならセレス?」


「いや、ノアを二番手にして……」


 デッキを組み替える。


 一度。


 二度。


 三度。


 気づけば、夜になっていた。


「……よし」


 ユウは新しい構成を完成させた。


「これなら勝てる」


 満足そうに頷く。


 そのとき。


 テーブルの端に、一枚のカードが置かれていることに気づいた。


 ルナのカードだった。


 月光を背に、こちらへ手を差し伸べているルナ。


 ユウはカードを手に取った。


「……ルナ」


 少しだけ胸が痛んだ。


 でも。


「今度は勝つから」


 カードを大切に戻した。


 ユウはまだ知らなかった。


 この日から。


 勝つために強さを求める気持ちが。


 少しずつ。


 ルナとの距離を広げていくことを。


 そして――。


 その距離が、いつか取り返しのつかないものになることを。


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