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光に溺れた僕たちは -綴じた羽と願う花-  作者: ぺんなす


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諦め方は知らないから

「おつかれ〜かおるる」

カウンターに戻るとあさひに声をかけられた。

「……おつかれ」

「…今日もくもり顔じゃん」

「悪い?」

咄嗟に睨みつけてしまい、自分が嫌になった。そんな俺を見ても、嫌そうな顔をせずあさひが言葉を続ける。

「ん〜?別に。……気持ちは分からなくないし」

その瞬間だけあさひの表情が曇った。お互い様ってやつだ、きっと。

「…曇らず生きていけたらいいのに」

「ん〜それは無理じゃない?……人を好きになるって、いいことばっかじゃないしさ」

「……ちょっと外の空気吸ってくる。すぐ戻るから」

「ん〜いってらー」

店の裏口から外に出てぼんやりとしているうちに自然とため息が出てきた。

おねーさんって今まで誰かと付き合ったことあるのかな。そもそも…俺とかちとせのこと男として認識してるのかな。まぁ、こんな格好してるし意識するわけないか。それに、おねーさんのあれは…今までそういうのを考えたことない人って感じだし。きっとそうやって、誰かの特別に、知らず知らずのうちになって、無自覚に人の心を振り回して、狂わせてきたんだ。今の……俺みたいに。

一人でどうしようもないことを考えていると

「……かおる。お疲れさま」

荷物を持ったセンリに声をかけられた。

「……センリ、買い出し行ってたんだ。おつかれ」

「あぁ、少し足りなさそうなものがあったから。……かおるは、休憩中?」

「ちょっと外の空気吸ってるだけ」

「…そう」

「運ぶの手伝うよ」

「いいのかい?」

「なんかしてた方が余計なこと考えなくていいから」

センリが買ってきたものを一緒にバックヤードに運んでしまっていく。運んでいるうちは余計なことを考えないでいられたけど、単純作業をしているうちにまた頭の中におねーさんが浮かんできた。

「かおる、どうかしたのかい?」

そんな様子の俺に気がついたセンリが声をかけてくれた。おかげで思考を断ち切ることができた。このまま一人で考えてたらおねーさんの前に出れなくなる。それは絶対嫌だ。おねーさんにくもり顔は見せられない。

「センリは……例えば、好きな人がいて…友達がいて、そいつと同じ人を好きになったら…どうする?」

俺よりも年上で、しっかりしているセンリならどうするのかと気になってそんな質問をした。

「ワタシの意見でよければだけど。そうだね…ワタシなら諦めるかな」

帰ってきた答えは想像よりもさっぱりしていた。けれどセンリの表情には単なる諦めとは違う何かが混ざっているように見えた。

「友達を優先するってこと?」

「そうだね……。でも一番は…好きな人を困らせたくないかな。同時に二人の人に言い寄られたら誰だって困るものだと思うし、もしワタシと友達のことを知っているのだとしたら尚更。……好きな人には笑っていてほしいとワタシは思うから」

そう言いながら笑うセンリはいつもと同じ優しいものだったけど、あさひと似たような影が差しているようにも見える。

「でも…今のはあくまでもワタシ個人の意見だから。ワタシしては、かおるは諦めなくてもいいと思う」

「え…?」

予想外の言葉に固まっていると、センリが続けて口を開いた。

「諦めなくていいというか、ワタシのようにはなってほしくない。あまりいいものではないから」

「……センリは諦めたの?」

「そうだね。ずいぶんと昔に。諦めた…というよりは……逃げたんだ。ただ…隣にいる幸せを選んだ。それだけで十分だと自分に言い聞かせて。踏み込んで壊れるのが怖かったから。だけど、その選択を後悔はしてない。でも君にその選択を勧めることはしたくない。ワタシは慣れてしまっただけだから」

そう言いながら話すセンリの表情は何かを思い出しているのか、すごく苦々しくて、笑っているのに辛そうだった。

「それに……ワタシに相談しているのが答えのようなものだと思うしね」

「……それは、そう…かも……」

自分がどうしたいのかも、どうしたらいいのかも本当のところは分かってない。だけど…きっと、センリの言うとおり、俺は諦めたくない。でも俺とちとせが争ってるのをおねーさんに知られるのも嫌だ。それを知ったらおねーさんは悲しむから。そんな気持ちを捨てられずにいるのに、おねーさんが欲しい。隣にいたい。だって、おねーさんは俺を狂わせた人だから。責任を取れるのも、幸せにできるのもおねーさんだけなんだ。だけど……そんなのは全部、俺の独りよがり。

……諦めることに慣れないでほしい…か。簡単に諦められたら楽なのかな。もう、遅い気もするけど。だって…諦め方なんて、俺は知らないし。

「はぁ…」

「ごめん、かおる。余計悩ませてしまったかな」

「センリのせいじゃないし。俺がわがままなだけだから。そもそも…俺が悪いんだ」

おねーさんに嫌われようとした俺が。嫌われようとして、狂わされて。おねーさんが欲しくて…隣にいたくて。責任とってほしいなんて勝手に思って……幸せにできるのも、おねーさんだけって────。

……あの時、あんなことしなければ…こんな思いすることもなかった────いや、あんなことがなくても……俺は───────。

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