10. 球技大会 前日 前編 ~連れ出し~
放課後の体育館は、熱気と喧騒でごった返していた。
5月の終わりに行われる球技大会。
その練習と準備のために、どのクラスも残って汗を流している。
運動が苦手なリサは、競技で役に立たないぶん、球技大会の実行委員として裏方から支えることにした。
それが建前だった。
実際のところ、実行委員を押しつけられたマサキの姿を確認するやいなや、「あたしもやります!」と手を挙げて、その隣の枠をゲットしたのが真相だ。
しかし、そんな彼女の周りには、準備の手伝いを名目に下心の透けた男子たちが常に群がっている。
「如月さーん、それ重くない? 運んであげるよ」
本来ならコートでバレーの練習をしてなきゃいけない男子数名が、そこにいた。
「ううん、大丈夫。自分で運べるから……ありがとう。みんなは練習のこと大丈夫?」
リサはいつもの笑顔を浮かべたまま、丁寧に断った。
だけど、男子たちは引くどころか、距離をどんどん詰めてくる。
行事という「お祭り騒ぎ」の雰囲気が、彼らの遠慮を根こそぎ奪ってしまっていた。
「大丈夫だよ、俺らバレー部だし。練習しなくても勝てる」
「このネット、一緒に運ぼう」
「そんなの後でいいだろ。それより如月さんさ、球技大会が終わったら打ち上げ行かない? 二人きりがいいけど、別にグループでもいいし」
「嬉しいんだけど……後片付けも実行委員の仕事だから、当日は無理だと思うの。ごめんね」
断っても、断っても、男子たちの言葉は止まらない。
彼らはリサの言葉を「照れ」か「遠慮」だと勝手に解釈して、ズカズカと踏み込んでくる。
練習をサボる理由に。リサに近づくための免罪符に。彼女の「役割」を利用していた。
リサが「いいから練習に戻って」と言えば言うほど、「如月さんは真面目だなあ」と茶化されるだけ。
「如月さんて、ジャージ姿もいいよね。雑誌とのギャップがすごい。やっぱ可愛い」
「ほんとー?ありがとう」
笑って流さなきゃ、空気が悪くなる。
クラスの団結を乱したくない。
でも、もう限界だった。
(松前くんと一緒にいたかっただけなのに、ずっと囲まれて身動きが取れない……)
一番つらいのは、自分の中にある後ろめたさだった。
練習をサボってまで自分に群がる彼らの「下心」を軽蔑したい気持ちがある。
なのに、自分だってマサキの隣にいたいという不純な動機でこの役目を手に入れたのだ。
(あたしだって……この人たちと同じ…)
そう思うと、強く拒絶する資格なんて自分にはない気がして、余計に言葉が喉に詰まる。
(自業自得だ……純粋にクラスのために動いてる松前くんの隣に、こんな気持ちでいようとしたあたしが悪いんだ)
惨めさと申し訳なさと、どうしようもない苛立ちが、胸の中でグルグル回っていた。
◇
一方、視界の外の遥か頭上。2階ギャラリー。
薄暗い手すりに腕を置いて、一階の喧騒を眺めているマサキがいた。
イヤホンからは音楽が流れているはずなのに、下から響く男子たちの浮ついた笑い声が、鼓膜を不快に揺らしていた。
二階から見下ろすと、リサがどれだけ無理をしているのか、嫌というほど分かってしまう。
「如月さんは真面目だなあ」という茶化し。
それに対して、取り繕った笑顔でやり過ごそうとする彼女。
(……何やってんだ。あんなに囲まれて)
彼女がなぜこんな地味で面倒な役目を引き受けたのか、マサキにはさっぱり理解できなかった。
クラスの華で、常に誰かに囲まれているリサなら、もっと華やかな役割で大会を盛り上げることだってできたはずだ。
自分が助けに行く理由なんて、どこにもない。
自分で選んだ役割なんだし、リサ自身の問題だ。
(……まぁ、オレには関係ない)
自分に言い聞かせるようにして、マサキはもう一度、手元のファイルに目を戻した。
折れたシャーペンの芯を指の先で弾き飛ばしたあと、また眼下を覗き込む。
喧騒の真ん中で、どこか頼りなく揺れている小さな背中。
それを見ていると、なぜか奥歯を噛み締めたくなるような、名付けようのない苛立ちが胸の奥に溜まっていく。
マサキはファイルを脇に抱え直して、ゆっくりと、音を立てないように階段へ向かった。
◇ ◇ ◇
(……何て言って呼び出すか)
階段の中程で、マサキは歩くペースを落とした。
そこからでも、下の喧騒は聞こえてくる。男子たちの浮ついた声と、リサの無理をした笑い声。
申請書類の誤り。用具の数が合わない。進行表の直前変更。
いくつもの理由がある。どれを使ったっていい。何を言ったっていい。
ただ、あの男子たちの輪から、リサを連れ出せれば。
マサキは階段を下りながら、その言葉を何度も吟味していた。
(連れ出すにしては弱いよな…。あいつらが付いてこなくて、後回しにもされない理由がないと…)
だが。
その時だった。
リサが、先に気づいた。
階段の音なんかより前に、気配を感じたのだ。
自分に向けられている視線に。
顔を上げた瞬間、リサの視線の先にマサキの姿が映った。
(え……松前くん)
心臓が跳ねた。
「あ、ごめんね。ちょっと」
男子たちを振りほどくみたいにして、リサはそのままマサキの方へ走っていく。
後ろから
「え、どこ行くの」
「また松前?」
という声が聞こえても、振り返らない。
マサキへ向かう、一直線の動き。
マサキは、その光景を見ていた。
何も言わずに。リサが自分から来た。
(……)
用意していた全ての言葉が、意味を失った。
「松前くん、やっと見つけた」
リサは男子たちの間をすり抜けるみたいにして、まっすぐこっちへ走ってきた。
白いTシャツの胸元が動くたびに揺れて、薄い布地が前に引っ張られる。
張った生地が身体の線に沿って張りついていて、その上からでも分かるくらい存在感があった。
後ろでひとつに結んだ髪が、肩のあたりでふわっと跳ねる。
ジャージ姿なんて地味なはずなのに。
むしろ余計に目立っていた。
飾ってないのに、妙に可愛い。
走ってきたせいで少し息が上がっている。
頬がうっすら赤い。
そのまま自分の前で止まった瞬間、甘いシャンプーの匂いがふっと近づいた。
リサはマサキを見上げた。
ぱっと表情が明るくなる。
それが、あまりにも真っ直ぐで。
胸の奥が変なふうに詰まった。
あんな連中に囲まれてたくせに。
こっちを見つけた瞬間だけ、顔が違う。
Tシャツの胸元が呼吸に合わせて上下する。
そのたび、伸びた布がぴんっと張って、視界に入る。
後ろから複数の男子が近づいてくる。
「え、何で松前なの」
「如月さん、俺たちも手伝いたいんだけど」
「俺らでいいんじゃん」
「そうそう、俺たちで十分だろ」
なのにリサは、一回もそっちを振り返らなかった。
ただ、当たり前みたいにマサキの隣へ来て立つ。
リサの指先が、軽く腕に触れた。
柔らかい。
無理だろ。こんなの。
「如月さんに用あるから、付いてくんな」
声は静かだが、拒絶がはっきりしている。
男子たちは立ち止まる。
もう誰も、その後に続こうとはしなかった。
マサキはリサに目を向ける。
「行こう」
◇ ◇
廊下へ出た。
体育館の喧騒が扉一枚を隔てただけで、嘘みたいに遠ざかる。
代わりに、硬い床を踏む足音だけが、やけに大きく響いた。
リサは、横目でマサキを見る。
「ちょうど良かった、あたしも松前くんに用事あったの」
少しだけ明るめの声で言う。
「そうか、オレはない」
即答だった。
リサは一瞬だけ言葉に詰まる。
でも、すぐに小さく笑った。
さっきの「用あるから」は、嘘だ。
それくらい、分かる。
「そうなんだ。助けてくれてありがとう」
軽く言う。あえて深くは踏み込まない。
「松前くん、いまなに聴いてるの?」
何気ないふうに聞く。
「別に……如月さん、用事ってなに?」
「いま教室、机とか動かしてて使いづらいから、今日は外でお弁当食べようかなって」
「……オレといるとこ見られるの、嫌じゃないのか」
ぼそっと落ちる声。
リサは一瞬、反応が遅れる。
「え?」
マサキは視線を逸らしたまま続ける。
「如月さん、人気あるし」
「……だから?」
マサキは言葉を詰まらせる。
「変な噂とか立つ」
最後は少しだけ声が小さくなる。
言い切るというより、言い訳みたいに落ちた。
「松前くんと食べようと思って、おかずいっぱい作っちゃった」
リサはさらっと言った。
マサキは言葉を失う。
イヤホンに触れかけて――やめる。
(……逃げんな)
なぜか、そう思った。
「……じゃあ、どっか人少ないとこ探すか」
リサの顔が、ぱっと明るくなった。
その表情を横目で見て、マサキは視線を逸らす。
胸の奥が、少しだけ落ち着かない。
(……なんでこんな可愛い反応するんだ)
歩きながら、ほんの少し間が空く。
「……用事ってそれだけ?」
ぼそっと落とす。
リサは
「うん」
あっさりと頷いた。
マサキは少しだけ眉を寄せる。
「LINEでよくない?」
淡々とした指摘。
リサは一歩だけ前に出て、くるっと振り返る。
歩いたまま、後ろ向きでマサキを見る。
「そんなん会う口実だし」
さらっと言う。
マサキの足が、わずかに止まりそうになる。
「……は?」
リサはそのまま少しだけ距離を詰める。
でも表情はいつも通り、軽いまま。
「同じ実行委員なのに作業別だから全然会わないじゃん、口実ないと会えないでしょ」
軽く笑う声。
でも、その軽さの奥にある本音を、マサキはうまく処理できない。
「……如月さんってさ」
少し間を置いて、
「そういうこと、普通に言うよな」
半分呆れたみたいな声。
「ダメだった?」
探るような一言。
マサキは言葉に詰まる。
視線を逸らしたまま、短く息を吐く。
「……別に、ダメじゃないけど」
素っ気ない返事。
リサはすぐに笑う。
その反応が、あまりにもあっさりしていて――
(なんだそれ)
マサキの中で、うまく整理できない感情が残る。
歩幅が少しだけ揃う。
さっきまでより、距離が近い。
「勘違いするヤツ、いるだろ」
リサが少しだけ首をかしげる。
「誰が?」
「……オレとか」
ぼそっと落ちる。
空気が止まる。
リサの動きも、ほんの少しだけ遅れる。
それから、ふっと小さく笑った。
「いいよー」
さらっと言う。
マサキは完全に詰まる。
(……なに言ってんだこの人)
心臓が、少しだけうるさい。
マサキは視線を逸らしたまま、何かを考えるように少しだけ黙る。
(……このまま外はまずいよな)
さっきの体育館の光景が頭をよぎる。
囲まれて、動けなくなっていたリサ。
あのまま外に出れば、同じことになる。
むしろ、もっと目立つ。
(……面倒だ)
短くそう結論づける。
「……如月さん」
「ん」
「倉庫の備品チェック、まだだから」
唐突に言う。
リサは一瞬きょとんとする。
「そうなんだ」
「さっきみたいに追いかけまわされることもないから」
感情を乗せない言い方。
理由はそれだけ、みたいに聞こえる。
でもリサの表情は、ぱっと明るくなる。
(……一緒に作業できるんだ)
胸の奥が、じわっと温かくなる。
「やるっ」
即答だった。
その反応に、マサキはほんの一瞬だけ視線を向けて、
「こっち」
短く言って、歩き出す。
リサはすぐに隣に並ぶ。
さっきより少しだけ、距離が近い。
廊下を曲がり、さらに奥へ。
人の気配が、どんどん遠ざかっていく。
やがて、古びた扉の前で止まる。
「ここ」
マサキが指で示す。
リサは少しだけワクワクしながら、扉に手をかける。
ギィ、と小さな音を立てて開く。
中は薄暗く、ひんやりとしていた。
段ボールや備品が積まれていて、思ったよりも狭い。
「うわ、思ったより狭いね」
倉庫というよりも物置に近い。
一歩踏み入れて、周囲を見回す。
その瞬間――
(ここで松前くんと2人きり…っ)
一気に意識する。
距離の近さ。
逃げ場のなさ。
閉じた空間。
(やば……松前くんたら、意外と大胆…)
思わず心臓が跳ねる。
少しだけ頬が熱くなるのを感じながら、振り返る。
「じゃ、やろっか」
軽く言いかけて――止まる。
マサキは、入口に立ったまま動いていなかった。
「……オレは別のとこ回るから」
静かな声。
リサの思考が、一瞬止まる。
「え?」
「これオレの作業だから。如月さんの分はオレがやっとく」
それだけ言う。
リサは、その場に立ったまま固まる。
さっきまで浮かんでいたイメージが、音を立てて崩れる。
「……一緒じゃないの?」
思わず、こぼれる。
マサキは一瞬だけ間を置く。
「如月さんの仕事が残っちゃうから」
リサは言葉に詰まる。
「……そっか」
小さく頷くしかない。
マサキはそれを確認すると、視線を合わせないまま続ける。
「終わったら戻る」
短く、それだけ。
「……うん」
返事は、少しだけ弱い。
マサキはそのまま背を向ける。
足音が廊下に響いて、遠ざかっていく。
やがて、完全に聞こえなくなる。
静寂。
リサはしばらく入口のほうを見たまま、動かなかった。
(……一緒じゃないんだ)
さっきまでの空気が、少しずつ冷めていく。
でも――
(戻るって言ってたし)
小さく息を吐く。
気持ちを切り替えるように、用紙を取り出す。
「やるか」
ひとり、ぽつりと呟く。
段ボールを開けて、中身を確認する。
ボール、ビブス、コーン。
淡々とした作業。
蛍光灯の音と、自分の動く気配だけがやけに響く。
ふと、手が止まる。
入口のほうを見る。
誰もいない。
(……まだかな)
また作業に戻る。
でも、さっきより少しだけ手が遅い。
耳が、無意識に外の音を探していた。
◇ ◇
廊下を歩きながら、マサキは小さく息を吐く。
(……だる)
ポケットに手を突っ込んだまま、足だけが前に進む。
頭の中では、さっきのやり取りが繰り返されていた。
「勘違いするヤツ、いるだろ」
「……オレとか」
あのあと。
「いいよー」
軽い声。
何でもないみたいに、あっさり言った。
(……なんだよ、それ)
マサキは眉を寄せる。
どう考えても、深い意味なんてない。
ああいうのは、陽キャ特有のノリだ。
距離が近くて。
人懐っこくて。
誰にでも自然にああいうことを言えるタイプ。
(オレ相手に言う意味なんて、ないだろ)
そう結論づける。
――なのに。
(……いや)
思考が、そこで止まる。
ほんの一瞬だけ、別の可能性が浮かぶ。
(ワンチャン……あるのか?)
すぐに、顔をしかめる。
いや違う。
あれはただ囲まれて困ってたから。
逃げる口実。
歩く速度が少し速くなる。
歩きながら、小さく舌打ちしそうになるのをこらえる。
(なに期待してんだよ、きも)
自分で自分に引く。
そう。
どう考えても違う。
如月理沙だぞ。
可愛くて。
目立って。
男子なんか選び放題で。
可愛くてモテまくって。
クラスの中心にいて。
(オレにとか、あるわけ……)
そこまで考えて、また止まる。
(……一緒にお弁当食べてくれるとか、オレのためにわざわざおかず作ってくれるとか)
普通に料理好きなんだろ。
人に食わせるの好きなタイプ。
(毎日話しかけてきてて)
クラスで浮かないように気使ってるだけ。
(いや待て、じゃあ逆に何なんだよこれ)
もし違ったら?
もし本当に、少しでも意味あったら?
浮いた瞬間。
(……無理だろ)
即座に潰す。
そんな都合いい話あるか。
期待した瞬間終わる。
勘違いした男って一番キツい。
(いやでも、他の男子にはあんな感じじゃ……)
そこまで考えて、頭がぐちゃっとなる。
知らない。
見てないだけかもしれない。
オレが勝手に特別扱いだと思いたいだけ。
(きも)
もし本当に誰にでもああなら、なんであんな囲まれて嫌そうだった。
なんでこっち見つけた瞬間、すぐ来た。
なんで隣来るとあんな近い。
ジャージの袖。
髪。
匂い。
Tシャツ越しに張った胸元。
(――っ、いやそこ今関係ない)
思考が変な方向に飛ぶ。
勝手に思い出すな。
近かった。
柔らかかった。
視界に入るたび無理だった。
(最低だろオレ)
助けたとか言いながら、見てんじゃねぇか。
なのに。
頭の中で、肯定と否定が同時に走る。
あるわけない。
でも。
いやない。
けどあの顔。
勘違いするな。
でも。
「はぁ……」
息が漏れる。
都合のいいとこだけ拾って、勝手に意味持たせている。
(マジでキモい)
そう思いながらも、頭から離れない。
足を止めて、手元の用紙を見る。
任された作業。指定された物を所定の位置へ移動。
やることは単純だ。
(考えるだけ無駄)
無理やり意識を切り替える。
体を動かしている間だけは、余計なことを考えなくて済む。
――はずなのに。
『いいよー』
(……あの一言、なんなんだよ)
また浮かぶ。
無意識に、手が止まる。
(オレがクラスで浮いてるから、一緒にいてくれようとしてるだけだろ…)
自分に言い聞かせる。
そうやって、理由をつける。
でも。
頭のどこかでずっと、気になっていた。
◇ ◇
倉庫の中。
手は動かしている。
でも、どこか上の空だった。
ボールの数を数えて、チェックをつける。
ビブスをまとめて、棚に戻す。
単純な作業。
なのに、妙に集中できない。
(……一緒じゃないんだ)
ぽつりと浮かぶ。
さっきまで、すぐ隣にいたのに。
あの距離で、あの空気で。
(勝手に期待してただけか)
小さく息を吐く。
「……バカみたい」
誰もいない空間で、ぽつりと呟く。
蛍光灯の低い音が、やけに耳につく。
(戻ってくるって…)
その一言だけを頼りにする。
段ボールを持ち上げる。
思ったより重い。
「よいしょ……」
少し体勢を崩しながら、棚に乗せようとした瞬間――
ぐらっと、バランスが崩れる。
「わっ」
手が滑る。
段ボールが落ちる。
鈍い音と一緒に、中身が床に散らばる。
コロコロ、とボールが転がる。
「うそ……」
一瞬、固まる。
すぐにしゃがみこんで、拾い始める。
(やば、松前くんが戻る前に…これちゃんと戻さないと)
焦りが少しだけ混ざる。
転がったボールを追って、少し奥まで手を伸ばす。
冷たい床に手が触れる。
さっきよりも、静けさが重く感じる。




