↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘却のアナタシスア   作者: 風鈴鳴梅
序章 僕と君の三千世界
17/53

第11話 天聖騎士

「本日は皆様に死んでいただきたく参上致しました」


 現れたのは"呪影の天聖騎士"と名乗る男。ロヤテ・フィルヴィエンス。


「天聖騎士だと!?教会の主戦力がなぜこんなところに!」


 客席からは驚愕の声が漏れ出している。


「理由など一目瞭然、人々の救済を願う我ら聖方教会が悪人を裁きに来るなど当然のことでしょう?」


 平然として言い抜くロヤテ。顔は漆黒の兜に覆い隠されていて、表情こそ見えないものの、その声には当たり前の事を問われたかのような疑問が含まれていた。


「だが、今までの歴史上、教会が干渉して来た事はなかったはずだ!なのに今になって…」

「ふむ…それは私も知りたいですね」


 首を左右に振って、辺りを見渡す。


「まさか、この程度の連中の集まりだったとは、何故今まで手出しして来なかったのかと!」


 その刹那、立ち上がった護衛達により、棒立ちのロヤテに対する銃撃が一斉に行われる。


 ドドドドドドン!!


「やったか?」


 しかし音が鳴り止む頃、そこにロヤテの姿はなく…


「心外ですね。この程度で倒せたと思われるとは」


ー気づけば、銃撃を行った護衛達のそばに移動していた。




 天聖騎士。その歴史は古く、聖方教会が創立された2000年以上前から、教会と共に存在していた。その正体は、全人類の恒久の繁栄を約束する聖テュポネスを信仰の対象とし、人々の救済を願う教会が公式に所有する唯一の実働部隊。それこそが天聖騎士である。

 その実力に関しては、教会に属する信者から引き抜かれた選りすぐりの怪物達である。歴史上で起こった数々の出来事にその名が登場することは決して珍しくはなく、世界大戦前の時代には、たった数人で一国を滅ぼした記録が残されている。


 すなわち天聖騎士とは、人々にとっての絶対的正義の象徴であり、圧倒的理不尽であり、神と同等の畏敬の念すら抱かれる事もある紛う事なき神域なのだ。


「な、ぜ…」

「幾ら音速を超えたところで、真っ直ぐ飛ぶ鉛など脅威ではありませんよ」


 そのままロヤテは手に握っていた長槍で護衛の一人の首を薙ぎ落とした。


「…! 撃て!撃ち続けるんだ!!」


 その光景を見た他の護衛達による再び銃撃が行われるものの、それが命中することはない。


「どうせ死ぬのです。抗うよりも神に懺悔してはいかがですか?」


 会場には次々と無数の骸が生まれていき、血が散りゆく花びらの様に舞い落ちる。


「ちっ!『夢覚者(むかくしゃ)』はどうした!さっさと行け!」


 銃による攻撃は効果がないと、判断され次に投入されるのは一騎当千の夢覚者(むかくしゃ)たち。この会場に数十人といる彼らが一斉にロヤテを目指して襲いかかる。


「夢覚(リライブ) <蛇炎>!」


 始めに攻撃を仕掛けたのは、全身に刺青を刻み込んだパンチパーマの男。繰り出される赤い炎はその身をクネクネと曲がらせながら、ロヤテに向かっていく。


「曲芸としては30点ですね」


 しかし、長槍を自身の前で1回転させ、その風圧に飲み込まれ炎は消えてしまった。


「ガハッ」


 そして歩を進めたロヤテにより、心臓を一突きにされ、あっけなく男は荼毘に伏す。


「まだだ!夢覚(リライブ) <巨拳>」


 次なる刺客は大柄なモヒカンの男。彼は飛び上がると同時、その拳を身体の倍以上に膨らませる。

 そのまま重圧で押し潰そうと…したと同時、ガラ空きになった身体を串刺しにされ呆気なく死亡。


「攻撃を止めるな!次に続け!」


「夢覚(リライブ) <水穿>! <嘔吐>! <虎徹>! <熱圧>! <飛鳶>! <舞裁>! <色脱>! <蟻喰>! <川流>! <爆刃>! <音破>! <電鳴>!!」


 一斉に襲い掛かってきた大量の|夢覚者(むかくしゃ」液体、爆発、電流、舌、鳶人間、あらゆる攻撃がたった一人の騎士を目掛け放たれる。


「豚に真珠とは正にこの事。幾ら夢が大きくても、中身が伴わなければ意味はありません」


 だが、ロヤテは攻撃の隙間を疾風の如く、駆け巡る。そのまま水を放射する夢覚者(むかくしゃ)を一閃し惨殺。次に電流を放っていた夢覚者(むかくしゃ)を刺殺。襲ってきた鳶人間にもカウンターを食らわし殺害。もはや誰であろうと敵わずただ散り行くのみ。




ーーーー

 その後も惨劇は続いた。どんなに屈強な兵士も、強力な夢覚者(むかくしゃ)もラヤテの操る長槍の前に沈んでいく。


「くっ!こっちに来たぞ!」

「会長を守れ!」


 目の前にマフィアと思しき構成員たちが立ち塞がる。しかし…


 ゴトッ


 身体と身体が二つに薙がれてしまう。


「おや?貴方は…」


そのまま、彼らが守ろうとしていた人物も殺そうとするが、ロヤテは動きを止める。目の前にいたのは銀色の髪にシルクハットを被った男。


「『鉄杭会』会長のホーリー・デンジャラスでは?」


 どうやら以前、参加者たちが話していた著名人の一人だったらしい。


「俺に近寄るんじゃねぇ!どうなっても知らんぞ!」


 必死にロヤテからの攻撃を避けようと、どう見てもハッタリにしか見えない脅迫を行うホーリー。当然、そんなもので天聖騎士が止まるはずもなく。


「下らないですね。噂では中々の傑物との事でしたが、所詮そんなものですか」


 ロヤテは忠告を一切気にも止めず、ホーリーへと歩み寄っていく。

 …しかし次の瞬間、ロヤテの踏んだ床が光り出した。


「掛かったな!デンジャラスゾーン発動!」


 そう唱えると、気づけばホーリーとロヤテの周囲にあったはずの椅子が消えて、代わりに地面にはすごろくゲームのようなマス目が描かれている。


「ハハハ!だから、俺は忠告したんだ。"近づくな"とな。これが俺の夢覚(リライブ)<双六>」


 すると、ロヤテの前にサイコロが一つ転がってきた。


「このゲームのルールは簡単!サイコロを振って出た目の数、マスを進めるだけだ。そして俺がいるゴールに辿り着けばお前の勝ち。単純だろ?」


 サイコロを手に取り、試しに振ってみると1の目が出る。その通りに1マス進むと同時、止まったマスが再び光り出し、中に文字が現れた。

 

『雷にご注意ください!』

 

 すると、上から稲妻が降ってきてロヤテに直撃する。


「言い忘れていたが、このゲームはお前がマスに止まるたびにランダムでイベントが発生する。ただし、どれもが必死級の厄災だがな!だからといって余計な事は考えるなよ?ルール違反をしようものなら即、今までのマスのイベントが全て行われてしまうからな!

 それでは計66マスのデスゲーム!精々楽しんで…待て!お前何をしている!!」


 ホーリーの視線の先にいたのは、身体に稲妻を受けても平然としているロヤテ…いや、そうではない。彼はなんと、マス目を無視して、一直線にこちらへ向かってきていた。

 その道中では、ルールを破った罰として、下から伸びた剣山に襲われたり、爆弾に巻き込まれたり、或いは鉄板が頭に落ちてくる、風に切り裂かれる、無数の吹き矢に命中する。といった無数の厄災を受けるものの、歩みが止まることはない。


「馬鹿な!あれだけ食らって何故生きていられるんだ…」

「これが"デンジャラス"ですか?私には少々イージー過ぎるゲームでしたね」


 そのまま、計66マス分の罰を受けるとついにホーリーの元へと辿り着いた。


「これで、私の勝ちです」

「ふざけるな!ただのルール違…」ザクッ


 そのまま「鉄杭会」会長ホーリー・デンジャラスは余りにもあっけない最期を迎えるのだった。


 

 ホーリーの死と共に、"デンジャラスゾーン"が解除され、空間が元の姿へと戻っていく。


「所詮は夢覚(リライブ)で具現化された紛い物。実物には到底及びませんが、面白い能力でした」


 そんな余裕を見せるロヤテの元へ、早速次の強敵が現れる。


「いくぞ、兄者!」

「ゆくぞ、弟者!」


 それは、裏社会で名を轟かせる二人組。「残酷兄弟」デスマンとキルマンだ。


「「"奥義" 殺戮双拳」」


 ロヤテの左右を挟む様にして、二人の男により刃物のように鋭い拳から連打が放たれる。


「ハハハハハ!」

「ホホホホホ!」


 その蓮撃は、攻撃が受け流されることを不可能とした必殺の奥義。仮に右から来る攻撃を避けようとすれば、左の蓮撃をもろに受け、左の攻撃を避ければ、今度は右から大ダメージを受けてしまう。

 ならば、後ろに飛んではどうか…いや意味はない。阿吽の呼吸が如き、二人のコンビネーションにより、一寸のズレなく、攻撃が続けられてしまう。


ーしかし


「…!不可解な!」

「…!不愉快な!」


 ロヤテは蓮撃を躱すどころか、攻撃をそのまま受け止めている。ただ特筆すべきは、蓮撃を受ければ受けるほど、独楽のようにその場で回転を始めていることだった。


 そのまま回転の勢いに任せ、手に持っていた長槍で、周囲360度を薙ぐように一閃。


「少々、目が回ってしまいました」


「残酷兄弟」の二人はなんとか攻撃を避けたものの、腹に少し斬撃を食らって、浅く血を流してしまう。


「あなたたちも有名人ですね『残酷兄弟」。並の凡人なら今の攻撃も対処の仕様がなかったでしょう」


「しかし、私は凡に非ず」


 そのまま、ロヤテは長槍を前に構える。


「中々の強敵だな…久々に見せるか兄者」

「相当の難敵だな…久々に魅せよう弟者」


 「残酷兄弟」たちは互いに手を重ね合わせると、一つの言葉を放った。


「夢覚(リライブ)<分断> 解除!!」


 その瞬間、二人の肉体がグチュグチュと奇怪な音を立てながら融合していく。

 細かった足と足が混ざり合い、より太い足に。身体は互いに食らい合う事で更に大きくなり、その左右からは既にあった2本とは別の腕が生えていた。


「これが我が真の姿。『怪物人間』デッサーキルとは正に俺のことよ!」


ーそこに現れたのは四本の腕を持ち、化物の如き大きな身体を誇る巨漢であった。






「…四本腕の人間?あれってまさか夏樹くんが探している人なんじゃ」


 その頃、カノンたちは何が起きているかも分からないまま、現場で起きている悲惨な光景を眺めていた。


 たった一人の男によって行われる凶行。次々に血を散らし、物言わぬ肉塊へと成り果てていく人々。死体を見たことなど、物心つく前に死んだ両親の亡骸しかないカノンにとって、本来ならば卒倒してしまう程に凄惨な出来事のはずだったが…

 人は自身の常識を上回る何かに出会した時、それを上手く処理できず、飲み込めはしない。今のカノンはそんな光景を眺めながらも、何故か清々しい程、冷静な気持ちでいた。


「あっ……そうだ。早く逃げないと私たちも…ってあれ?ショコラさん?」


 隣を見てみると、さっきまでいたはずのショコラがいない。

 そのまま周囲を見渡すと、ステージ上でカノンと同じく棒立ちになっている51番の男性の元へ、フラフラとしながら向かっているショコラの姿が見えた。




「その姿…珍しい。四腕族ですか」


 目の前で変異を遂げた男。デッサーキルを見据えてロヤテは感嘆の声を上げる。


「誇るといいぜ。普段は俺の有り余る力を抑えるために分裂している故、この身体に戻るのは久しぶりだからな」


 デッサーキルはそのまま、周囲に散らばっている肉塊を投げつけていく。


「ホォッ!」


 だが、ロヤテはそのまま肉塊を切り裂いていき、接近をする。そしてデッサーキルに向かい、長槍で刺突を繰り出そうと…


「掴んだぜ」


 しかし、デッサーキルによって長槍が掴まれてしまった。すかさず長槍を引き抜こうとするも、それより早く余った二本の腕によるパンチが繰り出される。


「殺戮蓮拳!」


 パンチの連打によって、思わずロヤテは後ろへ倒れ込む。それを見たデッサーキルが長槍から手を離し、今度は四本の腕から絶対の技を放った。


「中々楽しめたが…終わりだ。"必殺"殺戮死拳!!」


 今までの技をも上回る、爆発的なまで速度で四本腕からの連打が行われる。それはもはや、嵐の如き不可視の拳と化す。


「さぁさぁさぁ!ただのミンチ肉へと成り果てな!」


 デッサーキルはこの時、自身の敗北を予想だにしていなかった。普段自分の強さをセーブするために生まれたデスマンとキルマン、その二人だけでも十分に強いのだ。

 それが真の姿に戻った今もはや自分に敗北などあり得はしないのだと。もし負けるとするならば、かつて自身を圧倒したあの童くらいだろう、だからこそ誰も己に敵うことなど…


「これで終わりですか?」


 直後、腕の一本が落とされる。目を向けると、そこには

 ー無傷の天聖騎士が立っていた。


「あ、ありえん!何故…」


 全く理解できない。本来の力を解放した自分の全力が通じていないなどとは、考えてもみない出来事だった。


「ただ、我武者羅に振るっただけの拳で私に勝てるはずがないでしょう」


 ロヤテは、デッサーキルの腕を更に二本斬り落として、前へと飛び上がる。


「まだ、二人だった時の方が強かったですよ。あなた」


 自身が劣っていると感じていたはずの、二人であった時よりも、今の方が弱いと宣告され、屈辱に悶えながら心臓を一突きにされる。

 そしてデッサーキルは敗北したのだった。



「流石に疲れてきましたね。これ以上は勘弁して欲しいですが」


 そんな期待も虚しく、ロヤテの元を新たな刺客が訪れ続ける。


「ハハッ!ようやく捕えたよ!」


 鞭によって、ロヤテの身体が拘束された。目の前に現れたのは次なる敵。


─「鞭使」サディスティック・エステ


「『鞭使』よ。そのまま捕まえていたまえ!此奴の首は私が切り裂いて見せようぞ!」


─「首裂卿」シャルノワール


「ワガ部族の誇りにカケテ!ココでお前をコロシテみせるネ!!」


─「未開原始」ド・ミド・ハラ


「はぁ…悪人共のオンパレードですか。いいでしょう!皆、神の元に断罪して差し上げます」




ーーーー

「ちょっとあんた!」


 ロヤテによる惨劇が行われる中、ショコラはステージの上へと登り、未だ立ち尽くしている51番の男性の元へ訪れていた。


「君は…」

「なんで…なんでその絵が贋作だって分かったのよ!」


 すると、男性は顎に手を添えて、少し考える素振りを見せた後口を開いた。


「なるほど、"君"がこの絵の作成者なんだね?」

「そんなことどうでもいいわ!さっさと答えなさい!!」


 ショコラは半狂乱になって叫び立てる。そこに理性などなく、頭にあるのは偽物であることを見抜かれたことに対する疑念のみ。


「…簡単な話だよ。私が見たのは『心』だ」


 男性は平然として言い放った。しかし、ショコラには彼の言っていることが全く理解できない。


「は…何を言って」

「確かにこの絵は、素材、技法共に完璧に再現され、見た目も一見すると年代物だな。だが違うのだよ。ホーギャンが絵にこめていたはずの『心』が」


 真剣な眼差しで告げる男性。意味がわからない。何一つ間違えることなく再現したはずなのだ。なのに…心だなんて、絵にそんな物が宿るはずがなかろう!

 これは生きた人間とは違う、心など持たない絵なのだ。ただの絵に過ぎないのだ。


「『心』なんて…そんなもの絵にあるわけないでしょ!!」

「そうかい?私には分かるよ。ホーギャンにとっての絵とは、この世界への"親愛"そのものだった」


 かつてのルド・ホーギャンは仲間たちと共に、芸術を世界へ遺す生きた証明と考えていた。恐らくその事を言っているのだろう。


「だが、この絵から感じる物は違う。ホーギャンはこんなにも楽しそうに、幻想へ夢を馳せて絵を描く事はなかったんだ」


 男性は笑って話す


「君は絵を描く事が好きなんだね」


 ショコラの動きが止まってしまう。絵の事なんて、ただの金儲けの道具だとしか思っていなかったはずなのだ。なのに、何故…


「ショコラさん!!」


 だがその時、カノンの声が響き渡る。思わず振り返ると、そこにあったのは死体と化した人々と、漆黒の鎧に身を包んだ一人の騎士。

 ロヤテは粗方会場にいた客たちを片付けていて、気づけばこちらに目を向けていた。


 そして、彼はそのままこちら側へ来ようとスタートを切る。そのまま目にも止まらない速さでショコラたちの前に辿り着いてしまった。


「こんな幼気な少女まで犯罪に手を染めているとは、残念です」


 ロヤテは長槍を構える。


「きっと、来世では救いが有らん事を…」


 そして、鋭い刺突が放たれてしまった。ショコラの身体は長槍で一突きにされようと…


「夢覚(リライブ) <位相>」


 ショコラは死を覚悟していた。しかし、目を開けると自分の身体には何の傷もない。そして気づく。男性とショコラのいた場所が入れ替わっていたのだと。


「ガハッ」

「どうして!」


 男性は長槍によって貫かれており、そのまま口から血を吐いていた。


「何…なんてことはないさ」


 そのまま男性はステージの上へと倒れ込む。


「…いつかこんな日が来る事は分かっていた。私のような悪人には相応しい結末じゃないか」


 今受けた傷は明確に致命傷を負っており、素人目に見ても、助からない事は明白だった。なのに何故、そこまでして、見知らぬショコラのことを助けようとしたのか分からなかった。


「ただ、最後にちょっとした善行を行いたくなったんだよ。ヒーローのように、小さな少女を守って」

「私は、あんたたち皆を騙そうとした詐欺師なのよ!?態々命をかけてまで守る人間じゃ…」


 すると、彼は段々血色を失っていく顔で、小さく微笑んで言葉を紡いだ。


「確かに、君の贋作を作る行為は人々にとって許される事では無いのかもしれないね。だが、それは決して贋物(にせもの)などではないんだ」


─「私にとってあの絵は、一人の少女が完成させた。何よりも美しい"本物"だったよ」



ーーーーー

「外してしまいましたか。まぁ…構いません。どの道死ぬのですから」


 ショコラの代わりに攻撃を受け、ついには物言わぬ骸となった男性。しかしロヤテは何一つ動じる事なく、再び攻撃の体制に入る。


「危ないです!」


 遅れて駆けつけたカノンは、すかさずショコラとロヤテの間に入り込み、迎撃の準備に入る。


「拝啓 あなたはこの方のお友達ですか?でしたら仲良く散らせてあげましょう」


 だが、そんなことも気にせずロヤテは神速の如き突きを二人へ向かって放つ。


「触れな(オニア)…」


 カノンは咄嗟にオニアザミを呼び出し、ガードしようとするものの、迫ってくる長槍のスピードは発動より早く、間に合わない。そのまま二人は串刺しへ…


 キンッ


─ならなかった。


「おや?一体どこの誰ですか」


 唐突に金属音同士がぶつかったような音が鳴り響く。一体こんな状況で何が起こったというのか。

 カノンが上を見上げると、迫っていたはずの長槍が斧によって止められていた。それを行ったのは他でもない自分の良く知るあの少年…


「…夏樹くん!」


 行方不明になっていたはずのカノンの仲間 。

 空亡夏樹であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。