第5話⑥ 仲間
そ
一緒に旅を始めた夏樹とカノン。
目的地へ向けて、道行く人に聞き込みをしながら、旅を続けているものの二人の間には依然として問題があった。
「お前…結局いつまで付いてくるんだ?」
それは、もはや夏樹が一緒に行動を始めてから、何十回とカノンへ聞いた気がする問いである。
「何回だって言いますよ!私のお姉ちゃんが見つかるまでです」
自信満々に胸を張りながら、夏樹に向かって言い放つカノン。目に一切の曇りはなく、夏樹の恐ろしく機嫌の悪そうな顔に対して一歩も引かずに立つが。
「…俺と居る必要がない」
「あります!仲間なんですし、一人で居るのはお互いに寂しいので、一緒に居ないとダメです」
「それは嫌というほど聞いた!だが、俺がお前に言いたいのは!」
夏樹が苛立ちを抱えた様子で、カノンに向かう。
「──お前、観光してばっかだろ……」
そう呆れさえ含んだ声で告げるのだった。
昨日もだったが、あれもこれもと色々なところを好奇心の赴くままに歩き回るカノンに振り回されて、夏樹は辟易としていたのだ。
「…そうでしたっけ?結構、色んな人と話した気が」
「いや。お前はそれ以上にあれが可愛いだとか、あれが面白そうだとか、あれを食べたいか言って好き放題してた」
「……あはは、ま、まぁ!私一人で見てても、つまらないですし、夏樹さんはどっちみち必要ですよ!」
言われてみれば、そうだったかもしれない。と誤魔化すように笑うカノンを見て、夏樹が「はぁ…」とどうしようもなさそうにため息を吐く。
無理やり引き離すのも面倒くさいので、やろうとは思わないが、だからといって自分の成すべき復讐が妨げられている現状は、夏樹にとって許し難い事態である。
「…でも確かに、今日こそは手掛かりを探さないとですね」
肝心のカノンは特にそんなことを気にしていないだろうが、しかし、図らずも夏樹の意見に合致し、流石にそろそろ自分も目的を果たしにいこうと決めた。
「よし。じゃあこれから一緒に聞き込みに行きましょうか!」
カノンは、夏樹へ元気のいい声を出すと前へ向き直る。
「どうするんだ」
「付いてきてください!私に良いアイデアがあります」
そのまま夏樹をどこかへ誘拐していくカノン。
どうせまた下らん考えだろうと、夏樹は心の中で思いつつも、特段抵抗することなく彼女に言われるがまま、どこかへと連れて行かれる。
……………
「ここです!」
たどり着いたのは街の中心近くに立つ駅。
「何日か外に来て分ったんですが、人って人が集まる場所に集まるんですよ」
「……は?」
急に意味不明なことを言い出すカノンに、夏樹が反射的に声を漏らす。
「つまりですね、駅には人が集まるので人がたくさん来るんです!」
「何か違うだろ、それ」
「……? でも実際、たくさん人が歩いてますよ。間違ってはないと思います」
「…お前がそう思うなら、そうなのかもな」
因果関係が色々おかしい気がするが、もういいか。と夏樹が自分で自分を納得させた。
カノンはその様子に首を傾げるも、すぐに話を元へ戻す。
「えっと。私が言いたいのは、人の多い場所には情報も多いということです」
「だから駅?」
「はい!ここならお姉ちゃんの情報も見つかる可能性が高いはずです」
「………」
夏樹が考え込む。
無差別に聞いたところで、カノンが求める情報などあまり見つかりにくいんじゃないかと。
「それじゃあ、早速聞きに行きましょうか!」
「…いや、俺は行かんよ」
「え?」
カノンが腕を挙げて、人通りのあるほうへ進もうとするも、返ってきた夏樹の答えに動きを止める。
「お前の姉を探すんだろ。なら俺には関係ない話だ」
夏樹がカノンへ冷たく言い切る。
カノンはそれに少し戸惑いを浮かべると、夏樹の目を覗きながら言い返した。
「だけど、二人で探せばスピードが上がりますよ!」
「その必要性を俺は感じん」
「必要とかじゃなくて、仲間なんだから協力しあうのが一番で…」
すると夏樹が不快そうに顔を歪める。
「一つ言っておくぞ。俺はお前を──仲間とはいまだに思っていない」
甘い言葉ばかり話すカノンへ、夏樹は絶氷のごとき拒絶をもってして、お前がどんなに俺へ親近感を持とうと、俺は全然違うのだと示す。
「ううん、夏樹さんは…」
「そもそも、俺とお前はどちらかの目的が終われば解散する。それだけの関係だろ?余計な情など要らん」
カノンがいつもの理由を説明しようとするも、夏樹に遮られる。
夏樹にとっては、百歩譲って一緒に居ることを許容したとしても、カノンと仲良しになるつもりは微塵もない。
「………」
「だから、俺はここに残る」
夏樹の胸に一筋の違和感が走った。
しかし、こんなものは些末なものだと、夏樹は無視して切り捨てる。
「…そんなに言うなら、もういいですよ!私一人で聞いてきますから!」
すると、カノンが怒ったように声を荒げた。
「夏樹さんはどうぞご勝手に。自分のことが大事なら、好きにすればいいじゃないですか」
「はっ」
珍しくへそを曲げた様子のカノンを見て、夏樹が鼻を鳴らす。
「…あっ、でも一人で勝手にどこかへ行くのは……ダメです。ちゃんとそこで待って」
「分かった。分かったから、行け!」
拗ねた顔をしながらも、それでも夏樹と別れるつもりは一切ないとばかりに、恨めしく振り向いてくるカノンを夏樹があしらう。
そして、カノンは数メートル先まで歩き、人が歩いている駅の方向へと進んでいった。
「…ふんっ」
夏樹はそのまま近くにあったベンチへ腰を下ろし、不機嫌そうに頬杖を付きながら、カノンの居る場所を眺める。
すると、急ぐように歩く人たちへ戸惑っているようで、カノンが狼狽えている様子だったが、やがて決意したように背筋を正すと、道行く人たちへ話しかけ始めた。
「…こんにちは!」
元気よく挨拶するカノン。
話しかけられた人は一瞬、驚いた顔を浮かべるも、しかし、それ以上の反応はなく無視して進まれる。
「こんにちは!こんにちは!こんにちは!」
続いて気にも止めず、次々にカノンが老若男女問わず挨拶していくも、返ってくるのは奇異な目ばかりで返事は返ってこない。
「(…まだアイツ、あんなことしてるのか)」
それを遠目に座って見る夏樹は、呆れた表情をしていた。
初めて自分がカノンに会った時もそうだったが、人に話しかけるにせよ、あまりにも強引すぎるやり方だろうと思う。
本人の育った環境を聞く限り、人との関わりが薄かったのだから、仕方ないとは思わなくもないが。
「(別に、俺にはどうでもいいな)」
夏樹は冷たく心の中で考える。
「こんにちは!こんにちは!」
その間にもめげずにカノンは話続ける。だが、あれではまるで居酒屋の客引きか怪しいビジネスへの勧誘に見られるにしか見えない。
案の定、誰にも相手にされずに素通りされていると…
「こんにち……ぎゃっ!」
通行人の一人に途中で、邪魔そうに突き飛ばされてしまった。
「───っ!」
夏樹が地面へ転んだカノンを見て、目を見開きながら思わずベンチから立ち上がってしまう。
身体が勝手に動き、夏樹はカノンの場所へ駆けようとするが。
「うっ…あ、たた」
自分の身体を擦りながら、カノンは段々と立ち上がった。
時間帯的に、大半の人は構っていられずに何度か心配そうに顔を向けながら通っていく中、すると近くを歩いていた老人に、声をかけられる。
その人は転んだカノンを気遣ったらしく、カノンが遠慮がちに手を振って笑っていた。
やがて、何か思い出したようにカノンは指を立てて、この機を逃すまいと老人に姉の特徴を聞いたようだ。遠目ながらも夏樹は、そこまでは分かる。
「(いや、俺は何を)」
自分が無意識に立ち上がっていたことに気づき、そして、再びベンチへ腰を下ろす夏樹。
カノンの様子の観察を続けるも、しかし、成果はなかったようで老人は困った顔を浮かべていた。
そのまましばらくして、申し訳なさそうに老人が帰っていき、カノンは頭を下げながらも肩を少し落としていた。
「(…なんだ、ダメだったのか)」
夏樹が声をかけにいくか、迷いながらも静観していると、カノンはすぐに切り替えて、めげずに話しかけ出す。
「こんにちは!こんにちは!こんにちは!」
相変わらずカノンは折れない。
無視されながらも、ずっと話し続ける。
「(あのやり方じゃ、どうにもならないだろ)」
夏樹はもどかしい気持ちを抱えて苛立つ。
別にカノンがどれだけ苦労して、失敗しようと夏樹はどうでもいいし、いちいち気に止めるつもりもないが、何故か目を離す気になれなかった。
「(馬鹿だとは思っているが、あそこまで馬鹿だとは思わなかったな)」
何度失敗を繰り返して怒られようとも、一切止める気配のない彼女。あまりにも学習能力がないだろうと、夏樹は心の中で悪態をついて、カノンを蔑む。
普段は針一つ分くらい、まだマシな頭をしていると思っているが、この時に限って何故あんな行動を取るのか夏樹には理解できない。
…間違いだと分かれば、普通はすぐにでも方法を変えるはずだ。それこそカノンに成功体験でもない限り。
「(まぁ、好きにすればいい。俺は…)」
夏樹が再び心を冷たく閉ざそうとする。
しかし、カノンの声が耳に入ってきて鳴り止まずに集中は一瞬で途切れた。
「…こんにちは!こんにちは!」
純粋に満ち溢れる澄んだ声で、健気に見知らぬ人へ話しかけながら、消えた姉への手がかりをなんとか見つけ出そうと奮闘するカノン。
なんの成果もないのに希望を捨てず、また怪我をするかもしれないのに、それでも一人で勇気を抱えて頑張り続ける。
「…………」
夏樹はそんな彼女を無様に感じるはずなのに、頭には何故か怒りの感情が湧き上がってきた。
──いや、夏樹はその理由をとっくに知っている。
純真無垢で、天真爛漫。
ここ数日、カノンと関わるうちに、夏樹の心は段々と彼女の存在を受け入れ始めていた。
でも、本当は認めたくないのだ。
それをしてしまえば夏樹は今まで自分で築き上げてきた壁が壊れてしまうのではないかと、恐れているから。
夏樹は非情でなければならない。復讐を成すためなら、どんな人間だって見捨てなければならない。孤独に我が道をを歩まなければならない。しかし──
「…ちっ」
夏樹が我慢できずに立ち上がると、カノンのほうへ歩いていった。
「こんにちは!こんにち…」
そのままカノンが話しかけ続けていると、突如として肩が掴まれる。
驚いてカノンが振り向くと。
「…………」
怒った顔でぶっきらぼうに立つ夏樹の姿が目に入った。
カノンは一瞬、普通に話しかけそうになるも、すぐにさっきの言い合いを思い出すと、また拗ねたように顔を歪める。
「…どうしたんですか?こんなところに来て。夏樹さんは自分のことに…」
意地を張って、夏樹に知らんぷりするカノン。だがその時、カノンの肩を掴む夏樹の手が、彼女を後ろへと軽く引っ張る。
「えっ?」
予想外の出来事にカノンが驚いて、夏樹に目を向けた。そこで夏樹は──
「…その、俺たちは、仲間……なんだろ。…だから少し手伝ってやる」
言いづらそうな顔でそっぽを向きながら、途切れ途切れに言葉を紡いだ。
そんな彼に、カノンは何が起こったのか分からず、呆気にとられてしまう。
今、夏樹の口から飛び出した耳を疑うような言葉。
カノンは頭の理解が追いつかない。困惑してフリーズしていると、夏樹がカノンへ向かって話し出した。
「…いいか。こういうのはな、手当たり次第にやっても成功しない」
カノンを見据えて、淡々と言い放つ夏樹。
「暇そうなやつを見つけて、そいつに声をかけるもんだ」
それだけ言うと、夏樹は呆然とするカノンを置いて、前の群衆が歩くほうへ向かっていく。
「俺が手本を見せてやる。お前はそこに居ろ」
カノンが何か言いたそうにするが、夏樹はすでに離れていた。
人々の前に夏樹はたどり着くと、道行く彼らを見渡しながら、質問を尋ねるのにちょうど良さそうなカモを探す。
狙うは、スーツなどを着ておらず、誰も隣に居ない状態で、暇そうな顔でマイペースに歩いているかつ、夏樹の声かけを断れなさそうな人間。
右へ左へと。夏樹が顔を動かしていると、条件に当てはまる人物が一人見つかった。
「…おい!そこのやつ」
私服で、気弱そうに顔を下へ向けながら歩く青年。
ぎょっとする周囲の人々を無視しながら、僕ですか?とでも言うように目を見開く彼へ、夏樹は。
「……え?」
「お前に聞きたいことがある」
目を細めて、凶悪な顔で睨みつけながら正々堂々と告げる。こういう時は、相手に伝えたいことを効率よく伝えるために臆さず、人と向かい合わなければならないのだ。
そして夏樹が本題へ移る。
「お前は、後ろの…」
「──ごめんなさい!!!」
だが、夏樹の言葉が最後まで紡がれるより早く、青年は怯えた顔で逃げ出していった。
静けさに包まれていた駅前で、青天霹靂の如く響き渡った焦燥の声。その後、残された再びの静寂に人々が知らぬ顔で通り過ぎる中。
「…………あ?」
夏樹が唖然とする。
突然のことに状況が理解できず、尖っていた目を丸くしながら去る青年を眺め。
やがて正気に戻り始めると夏樹は悟った。馬鹿な…俺は失敗して…
「──ぷっ」
すると、夏樹の耳に、背後から誰かの吹き出す声が聞こえた。思わず振り向いてみれば。
「ぷぷっ、あ、あれれ?夏樹さん。どうしちゃったんですか?」
意地悪に笑いながら、こちらを見つめてくるカノンの存在に気づく。
カノンは手を口元に当てて覆い隠いし、声を漏らした。
「逃げられちゃった…みたい、ですけど?」
冗談めかしく視線を夏樹に送って、楽しそうに頬を緩めるカノン。
「…違う。今のは調子が悪かっただけだ」
「えぇー?本当ですか?あんなに自信満々に聞きに行ってたのにー!」
思わぬ失敗に対し、表情を強張らせながら言い返す夏樹へ、カノンは身振り手振りでおどけて、わざとらしく声を上げる。
「『お前はそこに居ろ』でしたっけ…ぷぷぷ」
「………」
夏樹が黙り込む。
すると、カノンは空高くへ舞い上がるように、大きく微笑んで。
「──これじゃあ、私と同じですね」
喜びに満ち溢れる顔で、カノンが夏樹へとどうしようもなさそうに笑いかける。
夏樹はそんな様子を見て、頭に疑問が浮かんだ。
「お前…もう怒ってないのか?」
さっきまで夏樹が、ぞんざいに扱っていたせいでカノンはふてくされた顔をしていた。
しかし、彼の目に映る今のカノンは一転して機嫌がかなり良さそうに見える。
「えっ?なんの話………あ、もしかして私が拗ねてないかってことですか?それなら私は…」
カノンが目線を下に向けて、考えると途中で違和感に気づき、動きを止めた。
「うん?もしかして夏樹さん。気にしていたんですか?」
「別に」
驚いた顔で尋ねてくるカノンへ、夏樹が再びそっぽを向いて答えを返した。
そんな夏樹を不思議に思うも。
「…まぁ、いいです!私はもう許しましたし!」
カノンは胸を張って告げる。
「だって…やっと認めてくれましたもんね?私と夏樹さんが、そのぉ…仲間だってこと!」
ちょっぴり恥ずかしそうに、はにかんで夏樹が自分を仲間と認識してくれたことを喜ぶカノン。
時間はかかったけれども、一緒に旅をする同志だということを互いに分かり合えた。夏樹の態度こそまだまだ冷たいものの、これは彼女にとって大きな一歩である。
「……ふん」
また夏樹が不機嫌な顔で鼻を鳴らした。
しかし、否定はしなかったあたり、これ以上違うと言い張る気もないようだ。
「さて、それじゃあ仲直りしたってことで。今から二人で一緒に聞きに行きましょうか!」
「いや、行かん」
「……………えぇ?」
夏樹の腕を引っ張って、また人混みへ向かおうとしたカノンだったが、放たれた夏樹の言葉に間の抜けた声を上げてしまう。
「…あんなところで探しても、お前の姉を知っているやつなんて居ないだろ。他のところに行くぞ」
夏樹はカノンを一瞥すると、後ろを振り向いて逆にカノンを引っ張る。
そんな様子にカノンは──
「……もう。勝手なんですから」
呆れたように笑って、連れられるがまま一緒に別の場所へと移動していくのだった。
ーーーーーーー
駅周辺から飛び出して、床タイルが規則正しく並べられた石の街道を歩く夏樹とカノン。
「あ…そうだ」
夏樹の隣に居たカノンが突如として呟く。
「今までずっと、言いたかったんですけど一ついいですか?」
カノンは何かを思い出したかのように、夏樹へ話しかけた。
夏樹は訝しむように眉根を寄せて、耳を傾ける。
「なんだ」
「ほら…?私たちって一緒に旅をしていて、歳も同じなわけですよね」
自分と夏樹の身体を交互に指で差しながら、カノンが確認の合図を送った。
「なのに、いつまでも「さん」付けってなんだか変だな。って思うんです」
カノンが疑問を抱くのは、夏樹のことを夏樹さんと呼び続ける現状。
生まれた年は一年違うものの、年齢は同じ16歳であり、またここ数日を一緒に過ごしているのにも関わらず、夏樹を「さん」と呼ぶことにカノンは歯痒さを感じていた。
「距離をもっと縮めるためにも、夏樹さんさえ良ければ呼び方を少し変えようかなって、思っているんですけど…?」
カノンが不安そうに尋ねると、夏樹は意図がわからず、困惑する。
「……?」
「たとえば夏樹「くん」…なんてどうですか?」
絞り出されるカノンの声に、夏樹は考え込むような表情を見せると、間を幾秒か置いた後に、口を開いて答えをカノンへと告げる。
「別に呼び方など、好きにすればいい」
特に興味もなさそうに吐き捨てられた。
「…おぉ!本当ですか!?──よし!なら今日から、夏樹くんって呼ぶことにします!」
だが、カノンは新しい呼び方を受け入れてくれたことに安堵を覚えて、前のめりになりながら嬉しそうに声を出し、何度もその名前を反芻する。
「夏樹くん、夏樹くん!…うんうん、こっちのほうがなんだかしっくり来ますね!」
響きの良さと、湧き上がる親近感にカノンが頬を緩める。
「──あ、ちなみに私のことも、カノン。って呼んでくれていいんですよ?」
「…そのうちな」
お前、としか呼んでくれない夏樹に、カノンは互いに名前で呼び合おうと提案するも、夏樹が前を向いたまま返した。
そんな様子を見て、カノンは「まぁ大丈夫だろう」と特に気にせず告げる、
「ふふ。じゃあこれからも一緒に頑張りましょうね!──夏樹くん」




