17.夜会3
アルベルトたちと別れてから、シオン様は私を各所へ連れていった。
公爵家、侯爵家、そして王族。
シオン様の隣に立つたびに、私は背筋を伸ばした。
伯爵令嬢という立場で、これほどの方々に囲まれる機会など普通はない。
何か言われるかもしれない。釣り合わないと思われるかもしれない。
しかし。
「セレス・ヴェセル嬢ですね。宰相候補から伺っています」
最初にそう言われたとき、少し面食らった。
「優秀な方だと聞いていましたよ。実際にお会いできて光栄です」
次もそうだった。
「シオン殿がたいそう自慢しておられましたよ」
その次も。
「宰相候補の補佐を務めておられるとか。若いのに大したものだ」
挨拶をするたびに、同じような言葉をいただいた。皆、穏やかに、温かく接してくれた。
伯爵令嬢だからと顔色を変える人は、一人もいなかった。
ふと、隣のシオン様を見た。
「……シオン様」
「うん?」
「宰相候補から聞いている、と皆様がおっしゃっていましたが」
シオン様は少し間を置いた。
「いやぁ……つい言いたくなっちゃって」
頬を掻きながら、珍しくはにかんだ顔をした。
「補佐がどれだけ優秀か、どれだけ仕事ができるか。気づいたら話してたんだよね。会う人ごとに」
「あ……会う人ごとに……」
「うん」
「……それは、かなりの人数では」
「そうだね」
私はしばらくシオン様の顔を見ていた。
はにかんだまま、少し視線を逸らしている。珍しい顔だった。
「……ありがとうございます」
気づいたら、笑っていた。
シオン様が目を瞬いた。
「わぁ、セレスが笑った」
「……笑いますよ、私だって」
「珍しい」
「そんなに珍しいですか」
「うん。嬉しい」
シオン様は今度こそ、いつもの笑顔になった。
「もっと笑ってよ。似合うから」
「……シオン様が笑わせてください」
「任せて!」




