12話
背後に嫌な気配。凛々は振り返り、眉間に皺を寄せる。
「凛々ちゃん? どうかした?」
「しぃっ……」
心配そうに声を掛ける景兎に何も言わず唇に人差し指を当てた後、凛々は刀をカチャと音を立てて鞘から少しだけ抜いた。
「ハァ……ハァ……」
微かに聞こえて来た息遣いに景兎はゾッとする。凛々は目を閉じ意識を集中し、再び目を開けた。
暗闇にゆらゆらと揺れながら向かってくる三体の影。
「護られてばかりは嫌。凛々だって……凛々だって!」
凛々はまるで自分に言い聞かせるように言うと、刀を構え暗闇に飛び込む。途端、断末魔の様な叫びが廊下に響き渡る。
凛々は雨のように降り注ぐ血飛沫を浴びながら悲しげに笑うと、まだピクピクと動くソレを見下ろし静かに言った。
「どぉ? 思い知った? 傷付けようとするのが悪いのよ……」
そんな凛々を見て憂己が悲しそうに呟く。
「凛々ちゃんにはあんな事させたくなかったのになぁ」
『眼科』『内科』『レントゲン室』……幾つかの部屋を通り、四人は静まり返っている廊下をひたすら進む。
「恐ろしいくらい静かだな……」
「僕はこのまま静かで居てくれた方が嬉しいんだけどねぇ」
薫が静寂に耐えかねて零すと、憂己がため息混じりに言った。薫がふと、横を見ると隣を歩いていた筈の景兎が居ない。
焦って景兎を探すと、景兎が何やらガチャガチャと扉を開けようと踏ん張っている。
「またお前は……何やってるんだよ!」
「開かないのぉ!」
「開かないなら何もないんだろ……さっさと行くぞ」
「違うの! 中から声がするの!」
薫は景兎の言葉に半信半疑で扉に耳を当てた。すると、微かだが確かに声が聴こえる。
「タ、スケテ……苦シ、苦シイ……」
「ね? 誰か居るよ。助けなきゃ!」
景兎が必死に開けようと足掻くも、ビクともしない扉。薫はダメ元で憂己を呼ぶ。
「おい! 下がってろ!」
薫と憂己で体当たりすると、呆気なく開かれた扉。




