8 懺悔
殿下と街へデートに行くことになった。
裕福な平民の姉と弟という設定だ。勿論凄腕の護衛と侍女が付いている。
まあ私の魔術で何とでもなるけどね。
何故か七才が気に入っている殿下は今日もご機嫌である。やっぱり年上好きなんじゃないの。殿下は白いシャツに濃い紫色のハーフパンツ。サスペンダーが銀色で上着は薄紫色だ。何なの?可愛いんですけどちびっ子殿下。品が良いのよ。王族オーラが滲み出てる。
対する私は水色のワンピースの上に白い上着を羽織っている。銀色の髪は高い位置でひとつに束ねてもらった。
「リリスようせいみたいにきれいだね」
「ありがとうございます。殿下もかっこいいです」
「そうか、デートは久しぶりだな」
「そうですね」
例のハニトラ騒動で半年くらいは表立ってデートはしていない。私に気がない振りをしなければ信憑性が出ないと接触を控えていたんだと。知らない私は断罪と呪いが近付いたと思ってた。噂も凄かったし。
黒塗りのちょっと小さめの馬車でお出かけよ。外は地味だけど内装やクッションがとても良いの。乗り心地抜群です。
馬車の中で私の魔法を入れたお守りのブローチを着けてあげた。誘拐でもされたら大変なので。
「ありがとう。キラキラしてきれいだな。これはませきか?リリスの まりょくが入っているな」
「そうなのです。これで殿下をお守り出来るのです。防御魔法と攫われた時の場所が分かるよう作りました」
「リリスのはないのか?僕は守られるだけなのか?」
「子供を守るのは当たり前ですし私を襲うなんて百年早いですわ。それに殿下に何かあれば今度こそ公爵家が潰れます」
「子ども……。」
街に着き、流石に殿下ではまずいのでラド君と呼ぶことにした。
「リリスまい子になったらいけないから手をつなごう」
「ええ、ラド君。どこへ行きましょうか?」
「ぶらぶらと歩いておもしろそうな所があれば立ちよってみたい」
街並みは綺麗で人が大勢歩いていた。活気のある店が多く立ち並び道路は石畳で整備されている。
香ばしい匂いがしてきた。
「あっ、焼き栗だ」
「美味しそうですね、買いましょう。買って向こうのベンチで食べましょうか」
「うん」
「待っててくださいね、買って来ます」
この秋初めての焼き栗は大きくホクホクして美味しかった。殿下と二人で顔を見合わせて笑いながら食べた。こんなことは初めてだ。楽しい。
その時甲高い声がした。
「キャッーー!泥棒よ。バックを盗られたわ。誰か捕まえてーー!」
複数の護衛が素早く殿下を守ろうと前に立ち塞がり剣の柄に手を掛けている。
髭面の男がこちらに向かい走って来たが、突然固まったまま動かなくなった。
「誰か警邏を呼んでください」私は大きな声で叫んだ。
殿下が小さな声で聞いた。
「あれはリリスのこていまほうか?」
「はい、動けなくしました。今の内にここを離れましょう」
「そうだな、バレるとなにかとめんどうだ。おい、ハロルドけいらに引きわたしたら追いかけて来てくれ。ばしゃで待っている」
「御意」護衛は小さく頷くと命令に従ってきびきびと動き始めた。
馬車に戻った殿下は悔しそうだ。
「子供ではまほうが上手くつかえないものだな。リリスを守りたかったのに…」
「お気になさらずとも良いのです。尊い立場なのですから」
「でも…なんか、守られてるだけってかっこわるい。男なら守りたい。
でもリリスがじゅつをかけてくれて、この姿になったからすなおに気持ちが言えたので良かったとも言える。情けないけど」
「そうですか…」
「僕は夢の中のラドクリフとはちがうからね。でも気持ちを伝えていなかったんだからだめだな。ごかいされたままだったらと思うとおそろしいよ」
「…そうですね…。五才児には衝撃が強すぎて。そうなるとずっと信じていましたし」
「そうだよな。夢のラドクリフはクズだもんな」
「…屑って…。ところでハニトラの結果はどうだったのですか?彼女に殿下が子供になる瞬間を見られてしまったのでしょう?」
「うっ!くろれきし!忘れたままでいたかった。彼女ではないぞ。かなりゆだんさせていたらしくジョウホウを半分くらいはつかんでいたそうだ。でもあれがあまりにもショウゲキでとりしらべちゅうにけっていてきな事をうっかりしゃべったらしい。
こうふんして話したくてしょうがなかったんだろうと役人が言っていた。
で、あの女の家のアクジが分かった。人をはいじんにするイホウヤクブツのはんばいをしていたんだ。長いあいださぐっていたそうだけど、用心深くてなかなかしょうこがつかめなくて、へいかが僕にめいれいしたそうだ。
もうすぐおおやけになる。きょくけいだ。
ごかいさせてごめん。だが夢のやつと僕はちがう。ずっとリリスだけが好きなんだ。うらぎったりしない。信じて。それにほら、うらぎったりしたら直ぐにバレるから分かりやすくて良いと思わないか?」
真っ直ぐで可愛いと思うけど、まだ聞きたいことはある。お姉さんは誤魔化されないわ。
「でもあの日庭園に二人でいらっしゃったのはわたくしに見せる為だったののでしょう?」
「うっ!あの日のことはたぶんだけど、ぼくがほんきだとおもわせるためだったんじゃないかとジジュウが言うんだ。
今のぼくとしては人としてどうなんだっておもうけど。きちんとやらなければと思いこんだんだろうって言われた。
だますならみかたからって思ったんじゃないかって。
それで傷つくのはリリスなのに。ほんとうにクズなことをしたと思う。
きらいになったよね。ごめんなさい。もうゆるせない?」
(うるうるとした瞳で下から見上げてくるけど、それって浮気の言い訳にですよね?)
わたくしは話題を逸らせた。
「こんなに長くお話をしたのは初めてですわね」
「うっ!そうだな。へたれすぎて昔の自分をなぐりたいよ。長いあいだ苦しめてごめんね、リリス」
「わたくしこそ安易に術を掛けて申しわけありませんでした」
お互いに何度も謝りあった二人は気まずい笑いを浮かべ、馬車の中は何とも言えない空気になったのだった。
読んでくださりありがとうございました。
普段とは違い令嬢Aは衝撃でハイテンションになっていたのでしょう。訓練を受けているプロではないので、上手く誘導され気づいたら全部終わっていた…ということだったそうです。
それにしても婚約者を傷つけてまでする必要があるのか?ハニトラ。




