7 ちびっ子殿下の猛攻です
「リリス来たよ」と晴れやかに笑うのはラドクリフ殿下七才だ。
確か先触れは今朝だったはず。早くない?まだお昼前よ。侍女達が慌てている。
「殿下、我が家の使用人が慌てております。困らせるのは駄目です」
「…ごめん。リリスに会いたくてどうしようもなかったんだ」
シュンとした様子は可愛いらしいけど、こんな方ではなかったはず。
「かんじょうが体に引きずられるのかな、子供っぽくてごめんね」
「今日だけですからね」
「うん」
感情を押し殺すように付き合ってきたのは何だったのだろう。もしかしたらお姉様タイプが好きだったとか。
「リリス、変なことを考えているよね?ちがうからね」
(うっ、鋭い。子供って核心を突くことがあるものね)
「何も変なことなど考えていませんわ。庭にお茶の用意がしてありますの。参りましょう」
お土産にと差し出されたロイヤルな薔薇の花束と宮廷のパティシエ手作りのチョコレートの詰め合わせが嬉しい。どちらも好みなのよ。今までも貰っていたけど無難な物が多かった気がする。
季節は秋だ。空は高く晴れ渡り雲ひとつない青空が広がっている。庭にはコスモスや秋咲きの薔薇の花が美しく咲き乱れている。風がそよそよと頬を撫で気持ちが良い。庭のガゼボにはサンドイッチや色とりどりのスイーツが並べられている。
お土産のチョコレートを出して貰った。宝石のように並んでいる。
先に食べるのは当たり前なので口に含んだ。ううん〜美味しい。流石宮廷料理人。紅茶をひと口飲む。香り高くて美味しい。
「殿下もどうぞ。美味しいですわ」
「アマリリスのために作ってもらったチョコレートだ。パティシエにたのんだらようやくかと言われたがいみが分かるか?」
「わたくしチョコレートが大好きですの。ありがとうございます」
「そうかまた作らせよう」
殿下が嬉しそうだ。
「まほうの天才なのだな?そこまでとは知らなかった」
「生まれつき魔力はございましたが、先生に教わったのは五才からです」
「じゅつしきも教わったのか?」
「あれは自分で考えました。人に言えることではありませんでしたし」
「そうだな。すまなかった」
またまた殿下がシュンとした。出来の悪い弟みたいに思えてきた。
「こうして術が発動して両親や陛下方に理解してもらえたので良しとしますわ。もう解呪出来ますが、どうされますか?」
殿下の今の姿は王妃殿下の親戚の子という立場だ。魔術に興味がありわたくしに話を聞きたいと訪ねて来ているという設定だ。無理やりだけど良いのかしら。ねじ込んだ感が半端ないんですけど。
本物のラドクリフ殿下は病気療養中になっている。秘密は宮廷のトップしか知らない。我が家でも両親と上級使用人の極僅かの者の秘匿事項になっている。
「そうしたら気軽には会ってくれないのだろう?」
上目遣いで強請るように殿下が言う。うっ!あざとい。こんなテクニック持ってたなんて知らなかったわ。
「そうですわね。解消されたら魔術の研究者になるつもりでした。というかなりたいのです」
「けっこんしてもなれば良いんじゃないか?ま法の天才なのに活かさないなんてもったいないよ。このまま僕とけっこんしてけんきゅうしゃになれば良いよ。しんせきこうかしていただいて、こうしゃくになるつもりだけどしつむは僕がするから」
「へっ、結婚?!わたくしと殿下が?」
「そうだよ、結婚するのは嫌?リリスだけが好きだよって言ったのに忘れたの?せいじてきにハニトラをしたから許せないの?」
あれから子供に許せる範囲でこうなった理由を陛下に説明してもらったらしい。それにしても子供にハニトラって教えるのどうなの?身体が元に戻ったら分かるから良いのか。
「いや、あの、考えたことがありませんでした。殿下は浮気をしてわたくしを断罪をする方だと思っていましたし」
「だからこののろいなんだものね。はあ~僕もヘタレ過ぎてくどいていなかったしね。自分で自分をなぐってやりたいよ。この姿にしてくれてありがとう。じゃないとすなおに言えなかった。アマリリスと会った七才の時から好きだよ。かわい子だなと思ってた」
「そんな素振りなんてなかったではありませんか」
「ごめんね。なんかリリスの前だときんちょうして、すなおになれなかった。バカだよね。本当にバカだと思う」
七才の猛攻と自虐的発言に押され気味のアマリリスはこっそりため息をついた。。
ラドクリフの本気の猛攻が始まりました。でもチビっ子からのアピールです。効くのかな?そっちの趣味はなかったはず …。




