4 わたくしとしたことがうっかりしていました
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「お帰りアマリリス、待っていたわ」
お母様が手を広げて玄関にいてくださった。嬉しくて思わずその胸に飛び込んだ。落ち着く薔薇の柔らかな香りがする。
「ただいま帰りました、お母様。お祖母様はお元気でしたわ」
「そう、良かった。アマリリスの顔を見たから余計に元気になられたのではなくて?こちらのことはいろいろ聞いてるでしょう?それともとっくに知っていたのかしら」
「ふふっ何のことでしょうか。婚約がどうなるか気にはなりますが、何か決まりましたの?」
「もうこの娘ったらしょうがないのだから。お話は後でね。まずはお湯を使って綺麗にしていらっしゃい。疲れたでしょう」
「そうしますね。馬車で一週間ですので流石に疲れました」
途中で高級ホテルに泊まったけれど疲れた。今に転移魔法を使えるようになりたい。絶対になる。場所を知っていさえすれば転移できるんだもの、頑張るわ。
実は大分感覚は掴めている。実現するのはもう直ぐだ。
侍女達が寄って来て手伝ってくれわたくしはゆっくりお湯に浸かった。
(ふう〜やっぱり自分の部屋は落ち着くわね)湯船で伸び伸びと手足を伸ばした。
デイドレスに着替え両親の待っているサロンに行った。
「ただいま帰りましたお父様」
侍女が紅茶を淹れてさっと退室した。部屋には家族しかいないし防音魔法が張ってある。これからの話は極秘だ。
「お帰りアマリリス。お祖母様はお変わりなかったかい?」
「はい、とてもお元気でしたわ」
「今回のことを何か言われていたかしら?」
「何があっても貴方の味方よと言われました。それと美容液を一緒に売り出しましょうとも」
「まあしょうがないわね。お母様ったらアマリリスに甘いのだから。お母様は貴女の仕業だと分かっているのね」
「おほほ、何のことでしょうか?」
「あんな術を掛けたのはアマリリス貴方なのでしょう?随分昔から婚約解消を願っていたものね」
その途端お父様がソファーから転げ落ちそうになった。
「そ、それは本当なのか?アマリリスお前そんなことをして処罰は覚悟しているのかい?」
「覚悟はありますわ。わたくしがどんなに嫌だと言っても聞いてくれなかったのはお父様です。だから殿下が浮気をしたら子供になる呪いを八才の時に掛けましたの」
「八才…そんなに昔から嫌だったのか……」ショックを受けたように父が言った。
「以前にも言いましたが五才の時に夢を見たのです。殿下が不貞をしたにも関わらず大勢の人がいる前でわたくしを冤罪で断罪するのです。だから婚約は嫌だと何度も訴えていたのに継続されたままで……。子どもの言うことだと本気にされていないのは分かっていましたけど、浮気をされなかったら発動しない術でしたのに……」
「正当防衛で掛かったのか…。そうかすまなかった…。 父を許してくれ。嫌がっているのは 知っていたがアマリリスの本気を見誤った父を許して欲しい。この責任は私が取る」
「貴方、責任をと言っても…。 一体どうされるつもりですか?」
「お父様わたくしが取ります。わたくしが罰を受けます」
わたくしの考えが甘かったせいだ。罰を受けるのはわたくしだ。
「アマリリスは黙っていなさい。貴方どうされるのですか?」
母の声には有無を言わせない強さがある。
「…はい、お母様…」
「政治的に必要なことだと黙っていたが、アマリリスを蔑ろにする殿下にはいい加減腹に据えかねるものがあったのだ。公爵位をかけてでも抗議をする。我がベルモント公爵家はラドクリフ殿下の後ろ盾を降りる。例え平民になってもお前達は私が守る。
それとも…離縁して隣国に帰るのが良いか?皇帝陛下なら喜んで迎えてくださるだろうが…」
「ごめんなさい……。お父様お母様公爵家を潰すつもりはなかったの。信じてください。…ごめんなさい、ごめんなさい…。わたくしがやったことです。この命を差し出します」
「アマリリス、泣かなくて良いのよ。貴女だけを犠牲にしないから安心しなさい。わたくしがもっと真剣にあなたの言葉を聞いてあげていたら……。子どもの貴女にとって将来不貞をする男に嫁ぐのは嫌だったわよね…。それも冤罪で断罪なんて恐ろしいに決まっているのに…。わたくしとしたことが大失敗だわ。二人とも落ち着きましょうか。まずは王家の出方を見ることにしませんこと?」
「「王家の出方?」」
「王家がこの娘を断罪する気であれば皆で平民になっても良いですわ。隣国へ帰っても構いません。ベルモント公爵家を潰すと言われれば従いましょう。でもその原因を作ったのは殿下であり王家ですわ。何度か申し出た婚約辞退を認めなかったのも王家です。戦いましょう、貴方」
「ああ、戦おうローズマリー」
両親が眩しい。この二人の役に立つなら王宮くらい木っ端微塵にするわと斜め上の決意をするアマリリスだ。
こうして泣いたり笑ったりした家族会議は家族の絆を深めて終わった。
王家から登城を要請する手紙が届いたのは翌日だった。
ちなみに呪いは成長してもまた不貞をすれば何度でも子供に戻る恐ろしいものです。何せ天才のアマリリスですので。普段は猫を被っていますがぶっ飛んだ性格は子どもの頃からです。




