3 親友
月1回のお茶会のはずだった庭園で女性と寄り添う婚約者をアマリリスが見てしまう少し前くらいの話です。
「アマリリスったら殿下のことは放っておいて良いの?この頃お会していないのよね」
「マリアンヌそんな言い方しないで。お忙しいそうなの。連絡はいただいているのよ。気にしていないわ。別に何とも思っていないんだし」
決まったお茶会で会う以外は殿下と会っていないのは本当だ。
「忙しいって…。何が忙しいのかしら?噂が聞こえてくるのよ。婚約者なんだし黙ってて良いのかなって心配になるのよ」
「浮気をしそうな婚約者よりこうやってマリアンヌと話したり魔術を勉強している方が面白いもの」
「そう決めつけてしまうのもどうかと思うけど…。まあアマリリスが良いのなら言うことはないんだけど」
マリアンヌとは十才の時にお母様に連れられて行ったミルラン伯爵夫人のお茶会で知り合った。バーナード侯爵家の令嬢だ。お菓子や魔術の話で盛り上がり友達になった。
ブルーが入ったような金髪に黒い瞳の可愛くて穏やかな性格の女の子だ。
お互いに本の趣味は違うし、好きなドレスの種類も違うけど尊重し合っているので仲がいい。
やたらと心配してくれるのは嬉しいが、本人が気にしていないのだから気を揉まなくていいのに。
「元平民で伯爵家の庶子だって言うじゃない?毛色が違うから珍しいとか、愛玩動物枠なのかしら?」
「ねえ浮気をしたらもげる呪いとか鼻毛が伸びる呪いなんてどうかな」
「うわあ〜アマリリスが言うと本当に出来そうで怖いわ。将来もしもキリル様が浮気をしたら禿げる呪いとかが良いかも」
「貴女達がとても仲が良いのは知っているからそんなことは言わないほうがいいわ。噂をすれば来ちゃうかもよ。ほら後ろに」
マリアンヌが素早く後ろを振り返った。
「えっ!もう驚かせないで。本気にしたでしょう」
「ふふっごめんなさい。マリアンヌが可愛らしいから構ってみただけよ」
「もう、本気で心配してるのに酷いわ」
「わたくしに被害がなければ浮気でも何でもすればいいと思うわ。被害がなければね」
「あんなに何度も辞退しているのに余所見するなら解消してって話よね。浮気するのは男性なのに女性に瑕疵が付くなんて可怪しな社会よね」
「そういう正しいことを言うマリアンヌが大好きよ!」
思い余ってマリアンヌに抱きついてしまった。
「えへへ、照れるじゃない。それよりこのクッキー胡桃が入っててサクサクしてて美味しいわね」
「領地からお兄様が送ってきたの。沢山あるから食べてね」
「ありがとう。頂くわ」
キリル様というのはマリアンヌの婚約者で騎士団にいる伯爵家の嫡男だ。
侯爵令嬢の嫁入り先として親の勧めで顔合わせしたらしいが、お互いに惹かれ合って今では傍で見ているこっちの方が引くくらい仲がいい。正直羨ましい。
わたくしだってあんな婚約がなかったら、普通の幸せが掴めたかもと思ったりする。まあ貴族令嬢で恋愛結婚が出来る人は珍しいと諦めているけど。
でも冤罪で断罪はないわ。
他愛もない話をして笑い合っているこの時間がとても好きだとアマリリスは思った。
噂が出始めているのはアマリリスも知っていた。ああこれくらいの時期だったんだなと思い出した。
人が誰かを好きになるのは止められない。でも順序というものがあると思う。婚約者をキープしたまま他の令嬢と恋愛しようなんて思い上がりも甚だしいとアマリリスは思っていた。だから呪いは掛けたままにしておいたのだ。
その日の夕方仕事を予定より早く終えたキリルがふと思いつきマリアンヌの元に訪れ酷く驚かれたのだが、その理由を聞いて笑いあったのは言うまでもない。
読んでくださりありがとうございました。噂をすれば影っていうことわざが本当になりました。
夕方もう1話投稿します。




