12 怒涛の展開
「リリスおはよう。ゆうべは助けてくれてありがとう」
扉がパンと開いて殿下が飛び込んできた。
昨日はあんなに死にそうになっていたのに殿下の笑顔は明るい。
「殿下、レディの部屋を訪ねるのにいきなり開けてはいけませんよ。もしも着替え中だったらどうするのですか?」
「あっ!ごめんなさい。やり直すよ」
もう着替えているのだが一応注意はしておく。これからもあったら困るもの。
「やり直さなくて良いですけど、注意してくださいね」
「うん、気をつける」
「具合は宜しいのですか?大丈夫ですか?」
「リリスのくすりのおかげですっかりげんきだよ。でもね、とうぶんへやから出られないんだ。きけんだからだって。ちょうしょくはぼくのへやでいっしょに食べて」
「いいですよ。ではそちらに参りましょう」
運ばれてきた朝食はフワフワの白いパンにコンソメスープ、野菜サラダ、オムレツ、ハム、林檎と葡萄の盛り合わせだった。毒見役が付いている。カトラリーも銀だ。
あれっ?昨日も毒見役はいたはずだし、カトラリーも銀だったはず。なのにどうやって毒が仕込まれたの?
もぐもぐと食べながら殿下が言う。
「ゆうべの毒はジュンドがたかくて銀のカトラリーにはんのうしなかったんだって」
「えっ!?純度が高いと反応しないのですか?」
「わが国ではキケンなのでとっくにきんしされている毒だそうだ。今はでまわっていないはずだとへいかが言ってた」
「古い物を誰かが持っていて使ったということですか?」
「うん、そいつはぼくが子どもになったことも知っていてタンシチューのことも知っていた。かぎられてくるよね?入れたのはあの時のしようにんの中のだれかだ。今とりしらべをしているがもう分かったころかもしれないね」
「殿下の近くにいる人物ですね」
「うん、このあいだつかまえたブラウンはくしゃくのうしろにいるくろまくだったんだろうね」
「違法薬物…でしたか?」
「うん、思いたくないけどそうだよ」
何人か顔と名前が浮かんだが気軽に口には出せない。息が詰まる。
「殿下、食後に術の解呪をしましょう。大人に戻っておいた方が良いですわ」
「そうだね。お願いしよう」
この姿の殿下の写真が欲しかった。可愛かったのよ、ザ王子様。
わたくしは念写をすることにした。後は実物を紙に写すだけ。ここではしない。きっと大騒ぎになるから。
食事を終え、大人の殿下の服を準備しスタンバイは万全だ。衝立を持ってきて貰いその後ろに隠れて貰った。
「殿下良いですか?」
「うん、だいじょうぶ、おねがいします」
「うわあ〜」
という声と衣服の擦れる音がした。どうやら成功したようだ。
衝立から出てきたのは第二王子ラドクリフ殿下その人だった。
「具合の悪いところはありませんか?気持ちが悪いとかないですか?」
「ないよ。久しぶりだ。リリスが小さい。子供も良かったけど元に戻れて良かった。直ぐに僕のことを心配してくれるんだね。ありがとう。改めて今までの態度の悪さを謝りたい。済まなかった。許してくれる?」
「…ううっ許します」
「許したくなさそうだね。そうだよね、素っ気なかったせいで不安にさせたんだから。これからの人生をかけて償うよ。もっと口説くことにしたから覚悟してね」
「えっ!口説くって…」
「もっと情熱を持って口説くよ。僕だけ見てくれるようにね」
わたくしを見る目が熱を持ちとろりと蕩けて甘い。色気が半端ないんですけど。
「それは…難しいかと…魔術が好きですし…研究もしたいです…それに 犯人を捕まえないといけませんでしょうし」
「リリスは魔術の研究をしていれば良いよ。執務は僕がするって言っただろう?まあ家政の取り纏めと必要な社交はお願いするかもしれないけど。犯人の目星は付いているんだ。後は証拠だが、あの毒薬を持っている場所を押さえれば良いだけだ」
「へっ!犯人が分かっているなんて流石ですね。凄いです!さっきのこと本気にしますよ。言質は取りましたからね。後で契約書を交わしてくださいね」
「信用がないな。契約書は直ぐに用意するよ。アマリリス嬢僕と結婚してください」
いきなり跪いて殿下がプロポーズをした。手にはビロードの箱と薔薇の花束が。えっ?いつの間に?魔法?蓋を開けたらサファイアの大きな石がついた指輪があった。
「…お受けします」(驚きすぎて戸惑ったわ)
「ありがとう。嬉しいよ」さっと抱き寄せられ額にチュッとキスをされた。何なの、この早すぎる展開。
「契約書を渡すよ。急いでベルモント公爵に申し込みをしないとね」
何と、わたくしがあわあわしている間に手続きは全て終わっていた。
怒涛の展開で結婚をすることになりました。




