11 毒殺?
取るものも取り敢えずわたくしとお父様は王宮に向かった。案内されたのは王族のプライベートフロアにあるラドクリフ殿下の私室だ。ベッドに青白い顔で眠っている殿下を見た途端心臓を掴まれたかのように苦しくなった。このまま殿下を失うのは嫌だ。そんな思いが込み上げてきた。
「昼間はお元気でしたのに……もしかしたら… 毒ですか?」
周りには陛下と王妃殿下、兄の王太子殿下が青白い顔で立っておられた。
「夕食に毒が仕込まれていたの。ラドクリフの好物のタンシチューに…。わたくしたちはワインを頂きながらゆっくり進めていたのだけどこの子は…」
「子どもだから最初にに手を付けられたのですね。何てこと。お医者様は何と?」
「解毒剤はお飲みいただいたのですが効くかどうかは体力次第です」
王族の威圧感に存在を消すように立っていた宮廷医師が申し訳なさそうに答えた。
「申しわけありません。一週間後などと言わずもっと早くわたくしが解呪していれば…。解毒剤が投与されいるのならこれを飲ませて差し上げてもよろしいでしょうか?」
「それは…?」
「わたくしが作ったエリクサーです。危篤だと聞いて取り敢えず持ってきたのですが、毒見が必要ですよね。少し飲んでみてもよろしいでしょうか?」
「ええ、願い。このまま目の前で儚くなるのを指を咥えて見ているなんて出来ないわ」
母は強し。この場を仕切っているのは王妃殿下だ。
早速わたくしは瓶の蓋を開けひとたらし飲み込んだ。王族の皆様に何事も無いことを見せてから殿下の上半身を支えて起こし口に瓶を当て飲ませることに成功した。
二分程した頃だろうか。「うぅっ」という殿下の声がし、見る見る顔色が良くなった。ご家族が驚いた顔をしている。
「ラドクリフ、ラドクリフ、良かったわ。助かったのね」
王妃殿下の声が震え思わず殿下を抱きしめた。陛下も王太子殿下も泣くのは堪えているが泣き笑いのような何とも言えない微妙な表情だ。
「リリスがいるように見えるんだけど。夢を見てるの?」
「夢じゃないわ。アマリリスちゃんが助けてくれたのよ」
「殿下、ご無事で良かったです」
「リリスに助けられたのか。ありがとう」今にもベッドから飛び出してきそうな勢いで殿下が言う。
「良くなったばかりです。暫く寝ていてください」
言い聞かせるように医師が声をかけ、渋々殿下が身体を横たえた。
「アマリリス嬢今夜は世話になった。息子の命を救ってくれてありがとう。この礼は必ずしよう。考えておいてくれ」
「とんでもございません陛下。当然の事をしたまでです」
その途端気が緩んだわたくしは倒れそうになった。支えてくれたのはお父様だ。
そのまま帰ろうとしたが何かあったら怖いから今日は王宮に泊まって欲しいと言う王妃殿下のお願いで貴賓室に宿泊することになった。扉の前には近衛騎士が二人立っている。王族の毒殺未遂事件だ。お城の中は慌ただしい。
湯浴みを済ませて侍女のミラが出て行った頃扉を叩いく音がした。
「私だ。少し話しがある」お父様の声がした。わたくしは扉を開けお父様を入れ防音魔法を掛けた。
「今日は大変だったな。リリスがエリクサーを持って来ていて良かったよ」
「本当ですわ。遅ければ危ないところでした」
「だがこれで婚約から逃げられなくなったな。魔術の才能だけでも目を付けられていたがエリクサーまで作れると知られたのだ。王家が離すわけがない」
「まあそうですね。でも助けられる命があるのに知らない顔は出来ませんわ。殿下は案外いい人ぽいですし何とかなりますでしょう。研究をしても良いそうですし」
「ほう、そうか。命の恩人だ、粗末にはしないだろう。したら殺るがな」
「お父様ったら怖いですわ。でもありがとうございます」
「当然だ。父親なのだから。侮られれば言いなさい。何とかしよう」
「頼りにしていますわ、お父様。それにしても怖いですわね。毒殺犯人は誰なのでしょう?この間の事件と繋がっているのでしょうか?狙いが全員なのか殿下なのかでも変わって来ますわね」
「そうだな。だが国家反逆罪には間違いはない。私も手を貸そう。殿下が狙われたならリリスにも被害が及ぶかも知れないからね。まあ今夜は気にせずゆっくりおやすみ」
「おやすみなさいませお父様」
わたくしは自分とお父様に防御魔法をかけてぐっすり眠った。
物騒なことになりました。




