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「あー……、悪い。念のために聞くけど、鍵が出てきてないんですが?」
「誰が渡すかよ。雑魚は、とっとと失せな」
「約束が違うんだけど」
「約束ぅ? ああ、安心しな。あの三人は解放してやる。オレたちがたっぷりと愉しんだあとでなァ」
「…………」
うー、わー。絶句。マジで絶句。
今までこの仮想現実で色んな人間に出会ってきたが、初めての経験だ。なんだろう。目の前にいる心身ともに腐敗したこの大バカ野郎が、本当に自分と同じ生物種にカテゴライズされているのか疑い始める始末。もしや俺の知らない亜人型の新種モンスターってことは、――――ないよな?
唖然として黙ってる俺をどう捉えたのか、ゴッドヒルトさんが腰に吊ったブロンズソードに手をかけた。
「それとも何かぁ? 文句があるのかぁ? オレぁ悲しいぜぇ。ナニを抜いて三匹のメス犬にぶっさすより先に、コイツを抜いてお前をぶっささなきゃなんねぇことになるのかァ?」
ゴッドヒルトさんのくっだらねえ下ネタに汚いおっさんズがゲラゲラと笑う。そして、そんな光景を見て途中から俺も一緒になって笑う。大笑いする。あっはっは。たまんねーや。
「何がおかしい?」
おや。
腹を抱えて笑っているのはいつの間にか俺だけになっていたらしい。
何がおかしいって?
自分で気が長いほうだと思ってたけど、どうやらそうでもないらしいのだ。
よりにもよって、俺の店の可愛い店員ちゃんズにメス犬だと?
あっはっは。
戦闘になったら手加減なんてできないから絶対キルしちゃうだろうなー。問答無用でプレイヤーキルはあんまりだよなー。身もふたもない勧善懲悪は理不尽だよなー。俺と違って、こいつらは殺されてもまた次の周期に転生するけど、でも記憶がなくなるのは結構つらいことだろうしなー。まだメイメイとルイルイは拉致られただけで何もされてないようだったしなー。
よし、ここはマゼンタさんに頼んで半殺しにしてもらおっか――――なーんて。
あんだけ気を使って戦わないようにしてた俺が一番の大バカじゃないか。




