麺処「小惑星・ドドドどーん」②
何だろう。こんな透き通った小金色のスープを見たことがない。
このラーメンを見ているだけで涎が止まらない。
カウンターの目の前に置かれた木箱から、奥海さんが箸とレンゲを取り出して渡してくれた。
「はい。まずはスープから食べるのがお勧めだよ」
ありがとうと言って端を受け取り、言われた通りにスープから頂くことにする。
なんていい匂いなのだろう。一体何ラーメンなんだ。醤油でも塩でもなさそうな香りだ。取り敢えず、レンゲでスープを掬ってみる。
白いレンゲの中の、透き通る黄金の液体をゆっくりと口に運ぶ。ゆっくりとそれを飲む。全身をゆっくりと不思議な充足感が満たしていく。ただ一言「うま…」としか言葉が出ない。身体がこの液体を摂取することを喜んでいるのが分かる。
「でしょ!ここのラーメンすっごい美味しいんだー」
今度は箸で麺を掴み口に運んだ。麺を観察している余裕なんてない。兎に角、目の前のラーメンを摂取することを全身が望んているのだ。
噛めば噛むほど、口の中に衝撃が走る。まるで小惑星が爆発したかのような、体験したことのない味が口中を隅々まで満たす。圧倒的な旨さが、絶対的な衝動として味覚を揺さぶる。
このラーメンを食べる手が止まらない。ズルズルと麺をすすり、スープを一口一口噛みしめるようにしながら飲んだ。最後の一滴も残さぬように、ラーメン鉢を傾けて飲み干した。
あまりの満足感に自分でも驚く。美味しいどころではない。全身の細胞がこのラーメンを堪能し尽くしたような感覚だ。
「あー美味しかった。ご馳走様でした」
奥海さんも食べ終わったらしい。
「すごいね。こんな美味しいラーメン食べたことないよ。これは、何ラーメンになるの?塩?醤油?」
奥海さんが首を横に振る。
「ここは宇宙ラーメンだからね。塩でも醤油でも、豚骨でもないよ。宇宙空間から出汁を取るんだ」
なるほど。面白い。どうやら凝った設定を設けているらしい。店名からも宇宙がコンセプトなのも頷ける。
「そう言えば、奥海さんが注文するとき「増し増し」って言ってたけど、何を増したの?野菜も油も入って無かったけど」
「空腹だよ。空腹の増し増し。ほら、空腹は最高の調味料って言うでしょ?」




