第五話
夏の終わり。
カーマインの下へと、二通の手紙が届く。
『もうすぐ夏ですわね!
砂漠の神殿へと向かう途中の私!
乗っていた船が嵐で沈没してしまいました!
まぁ……私は船が沈む前に、誰かに荒れた海へと放り投げられてしまいましたが。
とても驚きましたが、私の発明品の一つである救命タコさんで命拾いを致しました!
ただ、困ったことに何故か人魚族の方々に密猟者として捕獲されてしまいましたの……。
ですが!
救命タコさんを頭に被り、渾身のタコの真似を披露したことで誤解は解けましたわ!
……こんな阿呆な人間に密漁は無理だという納得の仕方は酷いと思いますのっ!!
聞けば、人魚族の宝である珊瑚を何者かが夜な夜な盗んでいるとのこと。
人間にとっては、珊瑚は宝石のように価値がある。
だから、人間族の仕業だとなったそうです!
そんな人間への嫌疑を晴らすため!
私は人魚族のお姫様から水中でも息ができる救命タコさんに魔力を注いで貰って張り込みを行いました!
そうしますと、何とっ!
犯人は巨大な電気ウナギでしたわっ!
とても驚きましたが、何とか電気ウナギを人魚族と共に討伐致しました!
そして、またキラキラ光る小石を見付けましたわ!
死骸の中にあった半永久的に電気を発する電気ウナギの心臓を貰いましたが……旅には持っていけません。
お姫様のご厚意で、ヴェノム領の湖と海を繋げるトンネルを掘って電気ウナギの心臓を海輸してくれるそうです!
色々とありましたが、夢みたいに美人な人魚姫とお友達になれましたので、とても嬉しいですわ!
追伸
私は海では暮らせませんので、タコ族の王子様に求愛されても困ってしまいます。
丁重にお断りしましたが、微妙に面倒くさ……諦めの悪そうなお顔だったので心配です。
ちなみに、顔はお綺麗でしたが……下半身はタコの殿方では生態的に相容れないと思いますの!』
一通目の手紙に目を通し終わり、カーマインは眉間を押さえる。
「……何で沈没する前に、船から放り投げられてんだよ……!
救命タコさんでタコ踊りの意味もわかんねえよっっ!!」
しかも、タコ族の王子に求愛されて、海底トンネルを掘る?
ツッコミどころが多過ぎる!!
「……二通目……」
気を取り直したカーマインが、二通目の手紙を開く。
二通目……。
『とうとう夏が終わってしまいましたわ!
ちょっぴり失敗して怪我をしましたが、私は元気いっぱいです!
やっとの思いで辿り着いた砂漠の都!
初めて見る調味料や匂いでドキドキですわ!
しかも、お胸とお尻が大きくて、腰がキュッとなった美人なお姉様達の布の少ない衣装に多大なる衝撃を受けましたわっ!!
私の胸も……せめて、いつかは林檎程度の大きさに育つでしょうか……?
私は、まだ希望を捨ててはおりません!
さて、本題の砂漠の神殿ですけども。
蜃気楼に惑わされそうになったり。
死にかけていた冒険者を助けてみたら、裏切られたり。
しかも、乗っていたラクダを食料ごと盗まれたのは痛かったです。
念のために水と食料を分けていたお陰で、水だけは盗まれずに済みました!
そんなこんなで、やっとの思いで見付けたオアシスの果物は美味しかったです!
辿り着いた砂漠の神殿には、何故か砂漠の都の王子と家来達がいましたの。
何故か盗掘団と思われて、グルグル巻の蓑虫にされてしまいました!
でも、日頃の行いが良いお陰か王子達が巨大なサンドワームに追いかけられている間に脱出出来ましたわ!
しかも、一応王子達を助けようかとサンドワームと睨み合いになったのですけど……?
何故か、サンドワームと心が通じ有って、親友になれましたわ!
彼女の名前はキャサリンと仰るそうです!
キャサリンとの友情に感動した王子とも、誤解を解くことが出来ました!
ただ、何故か王子のお綺麗なお顔が引き攣って、声も震えていたのが印象的でしたわ!
私の事情を話して、太陽の石のことをお聞きしましたら……。
数百年ほど前までは、確かに太陽の石は砂漠の神殿に有ったそうです。
ですが……太陽の石を求めた氷の国との戦いの中で紛失してしまった、と文献が残されているそうです。
何処まで真実かは、その文献を見ていないので……私には分かりません。
しかし、この後に砂漠の王子を狙った暗殺者の刃から、王子を庇って背中に怪我をしてしまいました。
気が付けば、砂漠の宮殿で賓客として饗されていましたわ。
サンドワームのキャサリンも心配して、ちっちゃくなって付いて来てくれていたのが嬉しかったです!
この手紙は、怪我がもうすぐ完治する頃に書いています。
この手紙が届く頃には、私は氷の国へ向けて出発していると思いますわ!
……もうすぐ秋になりますもの。
少しでも、可能性が高い方へ賭けたいと思います。
砂漠の王子がキャサリンのお世話も快く引き受けてくれましたので、安心致しました!
追伸
助けた王子は次期国王だったらしく、たくさんのお礼を持たせようとしてくれました。
でも、金ピカの際どい部分しか隠さない鎧に何の意味が有るのでしょうか?
必要最低限の金銭だけ受け取って、他のお品物はお断りしましたの。
そうしたら、実家へと届けてくださるとのことで……。
よく分かりませんが、キャサリンが地中を掘り進んで届けてくれるそうです。
家族が驚かないと良いのですけれど……?』
二通目の手紙を読み終えて、カーマインは頭を抱えた。
「……アイツの交友関係がヤベえ……。
人魚族とか、砂漠の王子なら分かりたくないが、まだ分かる。
だけど……何だよ?!
親友のサンドワームのキャサリンって?!
サンドワームって、確か…………全長二十メートルくらいになる…………」
深く考えたら、負けだ。
カーマインは、取り敢えずヴァイオレットが元気なことだけを喜ぶことにしたのだった。




