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規格外な悪役令嬢は領地を救いたい!〜恋愛?そんなものよりも領地を救う旅に出ますわ!〜  作者: ぶるどっく


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第二十六話



「その、な……マリーナ殿下。

 俺は人魚族じゃないから……本能が教えてくれる番という奴が分からない。

 ……俺も王族の端くれだから、政治的な理由での婚約なら受け入れる覚悟は出来ている。

 だが……アンタの俺と結婚したいという気持ちは、政治的な判断では無いんだよな?」


「っ……人魚族は政治的な判断で伴侶を選びません……!

 ボクは第二王子殿下が王族では無かったとしても、ボクの本能が番として選んだと胸を張って答えます!」


「そう、だよな……」


 困ったように微笑むカーマイン。


 愛する番(カーマイン)に自分が原因でそんな顔をさせていると思うだけで、マリーナの胸が締め付けられる。


「なぁ、マリーナ殿下。

 悪いんだが、今すぐの結婚はお断りさせて貰いたい」


「っ……」


 カーマインの返答にマリーナは唇を噛み締め、俯いてしまう。

 本能で番を求める人魚族にとって、最愛の番から拒絶されることは死ぬよりも辛いことだった。


「俺は、マリーナ殿下のことを何も知らない。

 だから……まずは、マリーナ殿下……いや、マリーナのことが知りたい」


 番から拒絶されたと思っていたマリーナの絶望した心に、希望の光が灯る。


「……っ……第二王子殿下……?!」


 勢いよく顔を上げたマリーナの視界に、照れ臭そうに微笑んだカーマインの姿が映った。


「第二王子殿下じゃない、カーマインだ。

 ……マリーナのことを知るためにも、まずは友人から始めたい、が……どうだろうか……?」


「はいっ……!

 お友達から是非とも宜しくお願い致します、です!!」


 身を乗り出すように勢い良く返事をするマリーナに、カーマインは笑ってしまう。


「ははっ……!

 アンタ、やっぱりヴィーの友達だけあって……変な奴だな……」


「っ……」


 力が抜けたように笑うカーマインの笑顔に、マリーナの胸がキュンキュンと高鳴る。


「…………グラさん、此処はあとは若い二人で……と、退散すべきでしょうか?」


「……そうでござるなぁ……退散してみるでござるよ」


 静かに後ろ手にカーマインの自室の扉を締めたヴァイオレットとグラディウス。


「……そう言えば、ヴィー殿は舞踏会の会場に戻らなくても良いでござるか?」


「あら、お邪魔虫な私が去って喜んでいる肉食獣の巣に戻る気は有りませんわ!」


「言い得て妙でござるな」


 カーマインの自室より遠ざかって行く二人。

 ヴァイオレットとグラディウスは、クスクスと笑いながら歩いて行く。


「……そう言えば、グラさん。

 カーマインの護衛である貴方に、こちらを渡しておきますわ。」


「これは……?」


「ヴェノム侯爵領へ入るための許可証ですわ。」


「…………何故、己に?」


 二人の足が止まり、グラディウスへと差し出された二枚の許可証。

 柔らかかった空気が凍り、薄暗い回廊に、緊張が走る。


「国土の大半に砂漠が広がる国にとって、枯れかけた緑の大地でも美しく見えるということですわ。

 ……実現させない予定ではあります。

 ですが、子孫に緑の大地をと渇望する兵と飢えたことのない満たされた兵…………勝敗は前者の方に傾くかと。

 例え、後者の兵が負けずとも、その被害は甚大なものになるのではないでしょうか?」


 普段のおちゃらけた態度は消え去り、ヴァイオレットの瞳には冷たい知性の光が輝く。


「グラディウス・ボニート卿。

 サンライト王国が戦火に見舞われた時、私は皇太子の婚約者として振る舞うことを求められたとしても……私の発明を使用しません。

 私の発明品の全ては、ヴェノム侯爵領のために。

 ……もし、万が一……王都近郊まで敵兵が迫る勢いとなった場合、ヴェノム侯爵領の全てを囲う結界壁が展開されます」


「領地全てを覆う結界……そんな物、現実的ではござらんな。

 その規模の結界壁を展開するには、常時膨大な魔力を必要とするでござろう?」


 領地全て覆う結界壁。

 それには、何十人いや、何百人の魔力が必要だろうか?

 光の皇太子と謳われるアルフレッドにすら、一瞬は兎も角……常時展開など不可能だ。


 しかも……その結界壁を維持するのは、恐らく一日、二日の話ではない。


「ふふ……それを維持するだけの発電機を、運良く手に入れることが出来たからこその結界壁ですわ。」


 そう、ヴァイオレットは旅の道中で手に入れたのだ!

 巨大な結界壁を維持できる発電機、巨大電気ウナギの心臓を……!


「この許可証は、結界壁を通るために必要な物。

 私は……非難されるでしょうが、ヴェノム侯爵領を蔑んできた輩共を助ける義理はないと考えています。」


 散々……ヴァイオレット達を蔑み、罵ってきたサンライト王国の貴族達。

 貴族の悪意が感染し、同じようにヴェノム侯爵領を下に見る民たち。


 何故、そんな者たちを助けねばならない?


「幸いなことに、カーマインは人魚族のマリーナの番に選ばれました。

 ヴェノム侯爵領へと逃げ込めば、海へと繋がる海底トンネルも有りますもの。」


 本当に、何の因果だろうか……?

 ヴァイオレットの旅路で得た物が、ヴェノム侯爵領を助けるためのピースへと繋がっていく。


「……分かり申した。

 この許可証は、有り難く受け取るでござる。」


 恭しく許可証を受け取ったグラディウスは、ジッとヴァイオレットの真意を探るように見つめる。


「……このような他者がいるかもしれぬ場所で、王国の民を見捨てる云々と話して良かったのでござるか?

 それに……私が近衛騎士の一人として上に報告するとは、思わなかったのでござるか?」


「報告しても構いませんわ。

 私は、それを理由に婚約破棄をして頂いても構いませんもの。

 ですが、グラディウス・ボニート卿は……報告しないでしょう?」


 華やかな微笑みを浮かべるヴァイオレットの瞳は、全く笑っていない。


「あと、他者がいるかも知れぬ場所でしたか?

 それはあり得ませんわね。

 だって……」


 ヴァイオレットの美しい顔が、歴戦の悪役めいた表情を形作る。


「……この子たちが、私には居ますもの」


「っ……?!」


 白く細い指先を薔薇のように赤い唇に添え、微笑むヴァイオレットの周囲に飛び交う存在に、グラディウスは目を見開くのだった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ヴァイオレットの領地再建と、アルフレッドとの恋の行方を「面白い!」「続きが気になる!」と思っていただけましたら、ブックマークや☆☆☆☆☆評価で応援していただけると嬉しいです。


皆さまからいただく応援が、続きを書く力になります。


これからもヴァイオレットたちを見守っていただけましたら幸いです!!

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