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悪役令嬢は領地を救いたい!〜宿敵兼婚約者の光の皇太子なんて、いつか絶対に泣かせたいのに何故か溺愛されています〜  作者: ぶるどっく


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第十八話



 普段にも増して華やかなサンライト王国の王都。


 冬にも関わらず、色とりどりの花々が都を飾り立てる。


 シーラ海底王国からは、次期女王である人魚姫。


 オリースト帝国からは、次期皇帝である王子。


 華やかな歓迎セレモニーを受け、サンライト王国の王城へと辿り着く。


 …………最も、役職持ちの高位貴族たちが呼ばれることがあっても、日影者には関係のない話である。




 歓迎の舞踏会に皇太子の婚約者としてエスコートされるように勅命を受けたヴァイオレット。


「……良いご趣味ですわね」


 数日前に、皇太子の名の下にヴァイオレットへと届けられたドレス一式。


「……シュバルツ博士から爆薬を貰って、貴族ども諸共に王城を爆破してきましょうか?」


「ハロルドっ?!」


 一点の曇りのない輝く笑顔のハロルドに、バーバリアンが慌てる。


「お兄様。

 爆破後の修繕費用を払えませんし、この程度のことはいつものことでしてよ」


「……分かっています……分かっていますが……!」


 悔しげに顔を歪めるハロルドへ、ヴァイオレットはカラカラと笑って見せる。


「ヴァイオレット……こんなドレスは嫌だろう?

 私がお叱りを受けるから、お前は別のドレスを……」


 沈痛な面持ちでバーバリアンがヴァイオレットへと告げる。


「大丈夫ですわ!

 私は、ぜひこのドレスを着て参りましょう!」


「だが……こんなに、背中が開いたデザインでは……」


 バーバリアンは、もう一度ドレスへと視線を落とす。


 生憎と、流行などはバーバリアンには分からない。


「……背中の傷が……見えてしまうだろう……!」


「そうですわね!」


 旅の道中。


 砂漠の国、オリースト帝国の王子を庇って出来た傷跡。


「まぁ……回復魔法がほとんど効かない私ですから。

 傷跡が残ることなど、日常茶飯事ですわ!」


 ヴァイオレットの白い背中に斜めに走る大きな刀傷。


「だが……貴族の令嬢の身体に残る傷跡など……。

 お前も知っているだろう?

 このサンライト王国では、女の身体に傷があることは大きな侮蔑の対象となることを……」


「どうせ、傷跡が無くとも似たような悪口を言われるだけでしてよ!」


「「…………」」


 気にしないと微笑むヴァイオレットに、バーバリアンとハロルドは何も言えなくなる。


「ただ……サイズが違い過ぎますわね。

 胸元と腰回りが大きくて……舞踏会までに調整する必要が有りますわ!」


 ドレスと一緒に贈られた靴や髪飾り。


「靴はサイズが大きくてヒールが高すぎますし。

 髪飾りに至っては、意味不明なデザイン……え、蠍かしら?」


 なかなかのセンスですわ、と笑うヴァイオレット。


「折角ですから、壊すのではなく……。

 ふふ……マリーナ姫から貰った真珠も有りますし……!」


 嬉しそうに微笑んだヴァイオレットは、善は急げと調整に取り掛かるのだった。






 舞踏会、当日の夜。


「……急いで手配した代わりのドレスは、間に合っただろうか……」


 落ち着かない様子で自室を歩き回るアルフレッド。


「(……情けない話だが……私からの手紙だと邪魔が入るかもしれない。

 そう、思って……カーマインに事の次第をヴァイオレットへと伝えて貰うように頼んだが……)」


 ピタリとアルフレッドの足が止まる。


「……手紙一通……まともに送れない婚約者とは…………」


 ……心底に泣きたくなる。


「……シルヴァンを迎えに行かせたが…………素直に、馬車に乗ってくれただろうか……」


 本当に、情けない……。


 再びソワソワと落ち着かない様子で動き始めたアルフレッド。


「失礼します。」


 シルヴァンの声。


「!」


「ヴェノム侯爵令嬢をお連れしました。」


 アルフレッドの自室の扉が開く。


 ヴァイオレットだけを室内へ通し、シルヴァンは扉を閉めた。


「ヴァイオレット……!」


 息を呑む。


「御機嫌よう、皇太子殿下。

 この度は、身に余る贈り物をありがとうございました」


「っ……いや……すまない、嫌な思いを……」


「第二王子殿下より、事情は知らされておりますわ。

 相変わらず、暇な方々がいらっしゃいますのね」


 ヴァイオレットは、面倒そうにため息を付く。


 他人に嫌がらせをする暇があるならば、自分磨きの一つもした方が有意義だろうに。


「ヴァイオレット……その、ドレスは……」


「ああ、一番最初に頂いたドレスですわ!

 わざわざ私のために用意して下さったのに、着用せずに捨てるのは勿体ないですもの!」


 夜空を閉じ込めたような紺色。


 白い項に結ばれたリボン。


 括れた腰回りから流れるスカート。


 紫がかった黒髪は、緩やかに纏められ大きな髪飾りが一つ。


「っ……」


 褒めたい……褒めたいが、嫌がらせで贈られたドレスを着た姿を褒めても良いのだろうか?


「我ながら良い出来だと思ってますの!」


「……そうだね。

 ドレスの経緯を除けば……とても似合っていて、美しいと思うよ」


 嬉しそうに微笑むヴァイオレットに、アルフレッドは素直に美しいと告げることに決めた。


「………………私が旅に出ている間に、頭でも打ったのですか?」


 妙な生き物を発見したようなヴァイオレットの表情。


 ……本気で、この男は熱病にでも掛かったのだろうか?


「打っていないし、正気だよ。

 ……陳腐な言葉だけど、君が綺麗すぎて誰にも見せたくないよ」


「…………意味不明ですわ!」


 やはりこの男の思考回路は、理解不能である。


「どうでも良いですけれど、さっさと仕事を終わらせて帰りたいのです。

 もともとヒールは嫌いですし、発明途中の魔導機械も有りますもの!

 先に言っておきますが、婚約者として振る舞うようにと念押しされていますので大人しくは致します!

 ですが、それ以上は求めないで下さいまし!」


「……分かっているよ」


 遠い。


 婚約者なのに、遠い二人の心の距離。


 それが、婚約者を七年間も蔑ろにしてしまったアルフレッドの現実。


「さあ、参りましょう!」


 颯爽と踵を返して歩き出そうとしたヴァイオレットの背中。


「ヴァイオレット……!?」


 その背中を見たアルフレッドは、絶句してしまうのだった。



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