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悪役令嬢は領地を救いたい!〜宿敵兼婚約者の光の皇太子なんて、いつか絶対に泣かせたいのに何故か溺愛されています〜  作者: ぶるどっく


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第十一話



「…………」


 落ち着かない。


「………………」


 公務の書類へと目を走らせる。


 チラリと窓の外を伺う。


「……………………」


 再び書類へと目を戻し、記載されている数字に間違いがないかを確認する。


「………………………………」


「アルフレッド様、そんなに周囲を伺わなくても曲者はいませんよ」


「っ?!」


 困ったように微笑んだシルヴァンの言葉に、アルフレッドの肩が跳ねる。


「……何のことかな?」


「己の心を偽ることは、美しくない行為ですよ。

 朝からずっと公務を進めつつも、数分置きに周囲を伺われています。

 素直にヴェノム侯爵令嬢の元へ、会いに行かれては如何ですか?」


「………………」


 シルヴァンの言葉に、アルフレッドの羽ペンが止まる。


「……何と言って会いに行くべきか……わからないんだ……」


「……」


「彼女から会いに来ることは有っても……私から、会いに行ったことは、無い……」

 

 ヴァイオレットへの恋を自覚した日からずっと……。


 アルフレッドは、過去の自分の行動を思い出しては落ち込んでいた。


「……彼女が十歳の頃に婚約してから、七年になる。

 その間、ヴァイオレットが私へ挑戦状を叩きつけることは有ったが……私から会いに行った覚えが無いんだ。」


「……確かに。

 私もアルフレッド様の側近になって十年ほどが経ちますが……。

 お言葉のようにアルフレッド様自らが会いに行かれた記憶は有りませんね」


「っ……今さら、何と言って……会えばいいのか、わからない……」


 完璧なる光の皇太子と呼ばれるアルフレッドとは思えない……弱気な言葉。


「では……ヴェノム侯爵令嬢のことは、諦めますか?

 王城に咲く可愛らしい花々が、本日は第二殿下とヴェノム侯爵令嬢は謁見中だと囁いておりました。」


「っ……なぜ、カーマインと……!」


 何故、あの二人はあんなにも仲がいいんだ……!


 心がざわつく。


 血が逆流する。


 アルフレッドには届かない……ヴァイオレットからの手紙を受け取る弟。


「アルフレッド様」


 火花が散るように魔力が弾けるアルフレッドに、恐れることなくシルヴァンは名前を呼ぶ。


「……っ!」


 冷静なシルヴァンの声に、アルフレッドの理性が戻る。


 ハッとしたように、目を見開き。


 アルフレッドの弾けていた魔力が収まっていく。


「…………すまない」


「アルフレッド様の初めての恋に惑い、苦しむ姿もまたお美しい!

 ですが、愛し合う二人が寄り添い会う瞬間!

 まさに、運命の比翼の鳥が仲睦まじ……」


「シルヴァン……」


「おや、申し訳ありません。

 私としたことが、美しさに心が昂ぶってしまいました。」


 優雅に一礼をして、爽やかに微笑むシルヴァンにアルフレッドは苦笑する。


「さて……初恋に惑うアルフレッド様に一言。」


「……何かな?」


「まずは、素直な気持ちを伝えて謝罪することから始めるべきかと。

 いくら婚約者で有ろうとも、想いを伝えなければ、恋は始まりません。」


「……そう、だね」


 今にも歌い出しそうなシルヴァンの忠告だけは、的を得ている。


「……今まで、蔑ろにしていた分を取り戻すためにも……努力をしようと思うんだ。」


「それが宜しいかと!」


 まるで舞台役者になったかのように。


 恋の演目を演じ始めたシルヴァン。


「(……このクセさえなければ……とても頼りになる側近なんだけどね……)」


 アルフレッドは、シルヴァンの演じる舞台のたった一人の観客として。


 諦めたように遠い目をするのだった。





 同じ頃。


 王城内の小会議室。


「この度は、私が王都を飛び出したことでご心配をお掛け致しました!

 お詫びの品と言っては何ですが!

 細やかながらお土産をお持ちしましたの!

 もちろん、護衛のグラさんの分もありますわ!」


「土産か……貰っといてやるよ。」


 一応なりとも、兄の婚約者と白昼堂々と自室で二人っきりで会うわけにも行かず。


「……誰もいねぇとは思うけどな、グラさんはやめとけ」


 第二王子の護衛も同席した上での謁見。


 しかも、勿論のことだが、扉は全開である。


「辛口のカーマイン様の唯一無二、数年来のご友人である方から。

 異国のお土産を頂けるとは嬉しい限りござるなぁ!」


 ハッハッハッ!と大きな声で笑うグラさんこと、カーマインの近衛騎士、グラディウス・ボニートが豪快に笑う。


「お前ら、いつの間に仲良しになった?」


 呆れたように、ため息をつくカーマイン。


「去年ですわ!

 グラさんが、いけ好かない皇太子殿下を落とすために掘った落とし穴に、転んで落ちた私を助けてくれた時からですわ!」


 明るく元気に返事をするヴァイオレット。


「あの時は、驚いたでござるよ。

 まさか、貴族のおなごが穴の中に落ちているとは露にも思わず。

 穴を埋める前に気が付いて良かったでござる。」


「えっ?!

 私、一歩間違えば生き埋めの危機っ?!」


「ハッハッハッ!

 ヴィー殿なれば、生き埋めになっても這い出てきそうでござるな!」


「そうですわね!

 生き埋めにされた程度で諦める私ではありませんわ!」


 ねー!と、二十歳ほど年の離れた仲良しな二人。


「いや、言ってる内容が案外酷い気がするのは俺だけか?」


 王族と貴族の謁見という建前も忘れて、カーマインは突っ込んでしまう。


「そんなことよりも!

 お土産ですが、キノキノ大密林のタンザ族特製調味料セット、砂漠の国特製スパイス詰め合わせですわ!」


 そんなことか、と首を傾げるカーマインだったが、並べられたお土産に目を輝かせる。


「マジか!

 オリースト帝国のスパイスって興味があったんだよ!

 だけどさ、あの国って交易がウチと途絶えてて、手に入れるのが面倒だから諦めてたんだよ!」


 すっげえ嬉しい!と笑うカーマインに、ヴァイオレットは満足げに微笑む。


「グラさんには、氷の国の短剣ですわ!

 これは、あちらの将軍のオススメの一品で切れ味抜群!

 緊急時は、包丁としても大活躍しましたわ!」


「ほほう!

 包丁でござるか!

 スパスパっと切れ味の良い包丁は、重宝するでござるよ!」


 邪気のない笑顔で受け取るグラディウス。


「……あー、ちなみにさ……兄上にも、お土産ってあるのか?」


 カーマインの護衛であるグラディウスにまで用意されていたお土産。


 純粋に喜ぶグラディウスを横目に、カーマインは恐る恐る訊ねた。


「ありませんわ!」


 元気に答えたヴァイオレットだったが、一拍置いて首を傾げる。


「……どうして、皇太子殿下が飛び出しますの?

 私と皇太子殿下は、そのような関係性では有りませんわ」


「あー……うん、そっか」


 心底に不思議そうなヴァイオレットの表情に、カーマインとグラディウスは顔を見合わせてしまう。


「あの、ヴィー殿?

 ヴィー殿は……皇太子殿下のことを……」


「いつか絶対に、いけ好かない完璧な笑顔を歪ませてやりたい相手ですわ。

 もっとも……次の春になりましたら、また旅に出る予定ですし……。

 以前のように、悪巫山戯でご機嫌取りをする時間は有りませんわね。」


「「………………」」


 脈が無さ過ぎて、同仕様も無い。


「それに、皇太子殿下も似たようなものでは?

 婚約者となってから、そのような扱いを受けた覚えも有りませんので。」


「(……恐らく事実だろうから……フォローのしようが無いな……)」


 カーマインは、兄の恋路の険しさにから笑いを浮かべるしか無かったのだった。



ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


ヴァイオレットの領地再建と、アルフレッドとの恋の行方を「続きが気になる!」「面白い!」と思っていただけましたら、ブックマークや評価で応援していただけると嬉しいです!


皆さまからいただく応援が、続きを書く力になります!


これからもヴァイオレットたちを見守っていただけましたら幸いです!!

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