表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
鬼哭廻眼〜その眼は一度死に蘇る〜  作者: 松本ハヤテ
一章 今は昔、頼光四天王というものありけり
PR
7/52

第六話 今は昔、頼光四天王というものありけり

「【百雷破びゃくらいは】!」

 真っ直ぐ振り下ろされた刀から、無数の細かな雷が地面に向かって炸裂さくれつする。たちまち土砂とコンクリートがえぐぐれてめくれ上がると、それらは雷をまとって前方に吹き飛んだ。

 無数のつぶては散弾銃の如く。校舎を穿(うが)、その奥の渡り廊下を破壊する。

 しかし、先ほどまでそこにいたはずの能面のうめんの敵の姿がまた消えている。

「またか! どこに…………上か!」

 動く影を視界に捉えた悠月は新校舎側の屋上に向かっている能面のうめんの敵を追った。

 どういうつもりかは分からないが、単純な速さ比べで悠月ゆづきが負けることはない。

 ほぼ同時に屋上へ降り立つと、悠月ゆづき能面のうめんの敵に向き合って口を開いた。

「その能面のうめん小面こおもてって事ことは、お前は女なのか?」

 小面こおもて能楽のうがくで女性役が付ける面だ。加えて能面の敵は小柄で、実に身長一七五センチある悠月ゆづきよりも二十センチ近くは低く感じられる。

「お前は昨日、俺に酒吞童子しゅてんどうじの事を話してきたやつか?」

 能面のうめんの敵に対して、悠月ゆづきはまた別の問いをぶつけたが、やはり返答はない。

 しかし、沈黙が続くかと思われたその時、能面のうめんの敵が左腕を真横に伸ばして指をさした。

「!?」

 その奇妙な行動に悠月は思わず眉をひそめた。

 指先が示す方角は北東。しかしその先には学校裏の山と森しかない。陽動か、それとも時間稼ぎか。どちらにせよ、それではあまりにも杜撰ずさんすぎる。

 しかし悠月ゆづきいぶかしんでいたのも一瞬、能面のうめんの敵は左腕を下げた。そして、今度は右腕を正面に向かって真っ直ぐ伸ばすと、黒刀こくとうの切っ先を悠月ゆづきに向ける。

 来い、と言わんばかりの余裕ある振る舞いに、悠月ゆづきはとうとう苛立いらだちを覚えて声を荒げた。

「お前の目的は一体何なんだ!」

 悠月ゆづきも刀を構え直し、再び間合いへと踏み込もうとする。

 しかし、その直前に足が止まった。

 見ると、能面のうめんの敵が握る刀の切っ先が微かだが不安定に揺れている。それはまるで———

悠月ゆづき!」

 波留はるの声だ。姿は上空にあり、切っ先を能面のうめんの敵に向けて降下してきている。

「【炎円獄爛えんえんごくらん】」

 一瞬で悠月ゆづきの目の前に逆巻き円を描く炎が出現した。天高く伸びるそれは内側に術者である波留はる能面のうめんの敵を閉じ込める。

 能面のうめんの敵が上空の波留はるに視線を向けて黒刀こくとうを構える。しかし、

「なーんてね。透哉とうや君、今!」

 波留はるが冗談めかした口調で言うと、一瞬のうちに炎をかき消した。

「【氷結縫ひょうけつぬい】」

 いつの間にか屋上のフェンスの上に立っていた透哉とうやが合図に合わせて瞳術どうじゅつを行使する。それは能面のうめんの敵の足元に水色の輝きを生み出すと、瞬時に足首から膝までを凍結し、動きを封じた。

逞真たくま君!」

「う、うん! 【闘瞬とうしゅん】!」

 すかさず能面のうめんの敵のふところに入り込んだ逞真たくまが、強烈な張り手を食らわせる。

 能面の敵も防御の構えを取ったが、それでも瞳術どうじゅつによって金属の硬度と、何倍にも膨れ上がった筋力を持つ逞真たくまの一撃は防ぎきれない。

 能面のうめんの敵は勢いよく吹き飛ばされ、屋上の入り口上に接地されている高架水槽こうかすいそうに直撃した。

 無惨むざんにも水槽すいそうは破裂し、中から大量の水が流れ出てくる。そして時間差で吐き出されるように能面のうめんの敵が姿を現わすが、今の一撃が効いたのだろう。力なく落下していく。

明日香あすか! 捕まえるから威力いりょくしぼって!」

「うっさい、私に指図すんな!」

 波留はるの指示に声を荒げると、明日香あすかは自身の持つ【正飆眼せいばつがん】を翡翠ひすい色に発光させた。風を生成し、操る瞳術どうじゅつだ。右手の人差し指と中指を揃えて突き出し、拳銃の構えを取る。

「言われなくたって殺しゃしないわよ。でも私をあんなダサい目にわせたんだ……多少は痛い目みてもらうけどね!」

 乱回転し、高圧縮された翡翠ひすい色の風が指先に球体となって集中する。そして左手で右手首を固定すると、能面のうめんの敵に狙いまして明日香あすかはぶっ放した。

「【風羅貫ふうらかん】!」

 翡翠ひすいの輝きが軌跡きせきを描いて一直線に飛ぶ。

 明日香あすかの攻撃は見事に落下途中の能面のうめんの敵の額に直撃した。

 カラン、カラン、と能面のうめんが真っ二つ割れ、地面に転がる。

 しかし、敵の姿が見当たらない。

 ———まただ。消えた!?

 二度、いやおそらく三度目でもその事象を全く視認できなかったことに悠月ゆづきあせりを覚える。しかし次の瞬間、真横を通り過ぎて行く———藍色の雷光らいこうがあった。

 悠月ゆづきだけではない、その場にいる全員が息をんだ。

 そして、こうなればもう悠月ゆづき以外の誰も、その速さに追いつくことは出来ない。

 能面のうめんの敵が屋上から飛び降り、校庭の端にある鳥居とりいを目指しているのが見えた。

〝裏〟へ入る方法は二つあり、そのうちの一つが先ほど波留はるがしたように術式じゅつしきが刻まれた札を使用する。もう一つは〝表〟へ戻る唯一の方法と共通しており、瞳力どうりょくを帯びた状態で〝裏〟の結界として機能している神社仏閣じんじゃぶっかく境内けいだいの正面入り口、主に鳥居とりいをくぐる事だった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ