表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と侍の封印生活 The Survivors  作者: 霜月立冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
96/108

第九十五話 ドラゴンの気遣い

 空を埋め尽くす、毒々しい色を吐く大渦群。その下に広がるひび割れた大地、荒野。そのど真ん中に、三つの山が有った。


 三つの山とは、三基の移動魔王城である。


 私達魔王軍は、これより壺の底に向かう。そこに至る手段は「壺の中心で魔法、超瞬間移動を発動する」である。その為の準備として、三基の魔王城は合体する。


 合体。心ときめく言葉である。それを実行することに躊躇いは無い。例え大声で「合体の合図」を叫ぶことになろうとも。


 合体を命じる三基の城の主、私、ウィルミア・デストランドは、只今二号機の操縦室の中にいる。同室内には、私の他に二人の男性がいる。


 私の王子様(仮)、愛洲来寿様(アイス・ライス)と、私達の息子(妄想)、真銀人形(ミスリル・ゴーレム)の蹄鉄だ。


 来寿様と蹄鉄は、それぞれ室内最前面の操縦席に着いている。私はというと、室内中央に設えた背もたれ付きの豪奢な椅子、通称「魔王席」で踏ん反り返っていた。


 魔王城が移動中であったなら、私の出番は魔力供給以外に無い。しかし、合体となれば相応の役目が有る。それを、今から実行する。


 私は軽やかに腰を上げて、仁王立ちしながら大声で叫んだ。


「合体するぞっ!」


 傍から見れば大きな独り言。しかし、私の声に応える者がいた。

二号機の操縦室内に、年若い男女の声が響き渡った。


「「分かった」」

「「了解だ」」


 前者の声主は、一号機にいるドラゴン、奈落の破壊者アバドン・デストロイヤーアトゥルム。

 後者の声主は、三号機にいるドラゴン、万魔殿の簒奪者パンデモニウム・ユザーパーアウルム。


 移動魔王城の操縦室には、他の魔王城に声を伝える「遠距離通話装置」という魔法道具(機構)が備わっている。


 一号機と三号機からの返事を受けて、私は大きく息を吸い込んだ。体内に入り込んだ空気が、肺を押し広げて行く。

 肺が限界一杯まで広がった直後、私は一息に全ての空気を吐き出した。


「レッツ、魔王城デモンローズキャッスル合体(コンバイン)っ!!」


 私が叫んだ直後、城内に格好良い音楽(全員で合唱した音声付き)が響き渡った。その音は、城内だけでなく、城外にも響き渡っている。

 移動魔王城に搭載した魔法道具「魔力音楽演奏機」の効果である。


 合体の合図や格好良い音楽(音声付き)は、アウルムが「絶対に必要」と主張するので設定した。念の為に消音機能も付けてある。

 今回は、試験的に鳴らしてみた。当然ながら、他の移動魔王城内にも響き渡っている。

 格好良い音楽に紛れて、操縦室内にアウルムの音声が響き渡った。


「「これだっ、こうでなくてはっ」」


 アウルムの声は弾んでいる。大層お気に入りの様子。彼女の奇声が耳に入った直後、今度はアトゥルムの声が鳴り響いた。


「「まあ、やっていることは地味だがな」」


 地味。その言葉の意味は、何となく想像が付く。移動魔王城の合体は派手ではない。何しろ、それぞれの城を積み上げるだけなのだ。

 移動要塞には、本体の大きさに見合った二本の巨大な腕が生えている。それを使って、上の城を持ち上げて乗せる。


 先ず、三号機が二号機の上に乗る。二号機が三号機を掴み、それを持ち上げて――合体。その際、三号機は移動用クローラーを要塞下部に収納している。

 次に、合体した二号機と三号機を、一号機が持ち上げて――合体。その際、それぞれの城のクローラーは、それぞれの要塞下部に収納している。


 かくして、三基の移動魔王城は一基の不動魔王城となった。


 合体してしまえば、それはもう只の城だ。尤も、腕や砲塔は機能する。その様子がどんなものか、城外から確認したい。それよりなにより、合体した魔王城の威容を心行くまで眺めたい。今直ぐ城外に飛び出したい衝動に駆られて止まない。

 しかし、私は腰を上げない。全く動かなかった。


 今の私は不動魔王。そもそも、今は作戦遂行中だ。どこかのドラゴンと違って、私は私情を挟まない。


 私が大人しく畏まっていると、操縦室内にドラゴン達の声が、アトゥルム、アウルムの順番で響き渡った。


「「アウルム、そちらで確認できるか?」」

「「ああ、見えている。今から城の腕で――掴んだ」」

「「呪文を頼んで良いか?」」

「「ああ、良いぞ」」


 ドラゴン達は、何やら勝手に話を進めている。一体、何の話だ? 気になる。

 私の心情は兎も角、何も理解しないまま事を起こされて、私達に迷惑が掛かるのは御免被(ごめんこうむ)る。被害が出たら悔やみ切れない。


一寸(ちょっと)待て」


 私はドラゴン達の会話に割って入った。すると、ドラゴン達は「「何だ?」」と声を上げた。その返事を受けて、私は大きな声で質問した。


「今、何をしているのか説明してくれ」


 私の言葉に対して、真っ先に反応したのはアウルムだった。


「「何って――」」


 アウルムは何事か言い掛けた。しかし、途中でアトゥルムが割って入った。


「「ちゃんと説明する」」


 アトゥルムは現況の意味を解説し始めた。

 先の約束通り(第九十四話)、私達に理解できるよう気を遣っている。殊勝な心掛けである。しかし、アトゥルムの気遣いは解説だけに止まらなかった。


 話の途中、私は何度か質問した。すると、アトゥルムは全ての質問に返答した。お陰で現況の意味を理解した。要約すると――


「壺の底に移動する為には、単に呪文を唱えるだけでは駄目。壺の底に通じる鍵、『黒球(ブラックボール)』を捕らえた状態で呪文を唱える必要が有る」


 私が自分の理解を披露すると、アトゥルムとアウルムが「「そうだ」」と肯定した。それを聞いて、私は「ほっ」と息を吐いた。


 因みに、鍵である黒球は、直径一メートルの黒い金属球らしい。それが、現況の空中、三号機の手の届くところに浮かんでいた。頭上を見上げていなければ、見落としていただろう。しかし、ドラゴン達のお陰で確保できた。


 後は呪文を唱えるだけ。


 アトゥルムは、詠唱の役目をアウルムに託した。「私に無断で勝手なことを」と思わないこともない。しかし、餅は餅屋(創世記由来の諺)である。


「アウルム、よろしく頼む」


 私もアウルムに託した。すると、操縦室内に女神の大魔法、超瞬間移動グレート・テレポーテーションの呪文が響き渡った。


「「天之御中主アメノミナカヌシ様、お助け頂き有難うございます。この世全てを司る偉大な力をお貸しくださいませ。此方より彼方へ。次元の門を開き、我らを(いざな)(たま)え――超瞬間移動グレート・テレポーテーションっ」」


 アウルムの詠唱が終わった瞬間、私達の視界が真っ暗になった。正確には「外の景色が真っ暗になった」というべきか。

 一体、何が起こったのか? 私は反射的に周囲を見渡した。操縦室内の様子は――確認できた。


 そもそも、この世界には「照らす光(シャイニング・ライト)」という可視化の魔法が掛けられている。灯りは無くとも周囲の色や像を確認できる。そのはずである。

 ところが、操縦席の窓の向こう側、外は真っ暗闇だ。幾ら目を凝らしてみても、何も見えない。闇しかない。一体、ここはどこなのだ?


 私は首を傾げた。操縦席に座った来寿様達も、一様に首を傾げている。

 皆で頭上に「?」を浮かべていると、操縦室内にアウルムの声が響き渡った。


「「着いたぞ」」


 どうやら、この真っ暗闇の場所が壺の底のようだ。その事実を目の当たりにして、私と来寿様は、


「「ええ~っ」」


 揃って情けない声を上げていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ