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魔王と侍の封印生活 The Survivors  作者: 霜月立冬


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第七十話 黒と黄金

 二匹目の飛竜を倒した。結果、魔王軍(我が軍)は新たな真銀(ミスリル)の素材を得た。


 今度は、黄土色の鱗である。黒い飛竜と併せて二種類の飛竜の素材を得たことになる。この事実は、私、ウィルミア・デストランドの祖創作意欲を大いに刺激している。造りたいものが、次々脳内に閃いた。それを具現化したい衝動に駆られる。

 しかし、現況に於いて、何より早急に解決しなければならない問題が有った。


 飛竜に破壊された「真銀弾射出装置」の修復。いや、新造である。


 当時の出来事を鑑みると、同じものを造る訳にはいかない。それなりの工夫が必要だ。それなりに時間が掛かる。成果が出るまで待つ必要も有る。

 新たな真銀弾射出装置を造る(かたわら)らで、私は防具の改造を行った。

 折角黒と黄土色の鱗を手に入れたのだ。これを利用しない手は無いのだ。


 先ず、現在使っている革鎧から真鍮製の板を剥がした。それに替えて、新たに黒と黄土色の真銀板を張り直した。当然、それぞれの革鎧の色に合わせている。

 ケルベロスの革鎧には黒い真銀板。グリフォンの革鎧には黄土色である。


 鎧の色を変えたことは、魔王軍の皆に好評であった。私は調子に乗った。

 額当、面頬、グローブ、ブーツ――と、全ての防具に同様の改造を行った。これもまた、大好評である。しかし、唯一人来寿(ライス)様だけは苦笑いした。


「男女で色分けも良いとは思うがな? 軍隊ならどちらか一色で統一した方が良いかもな?」


 今更言うな、である。当然ながら、私は全力で無視した。それどころか、私は更なる色変更に挑戦した。


 次の標的は人形(ゴーレム)達の新たな体だ。私は、それぞれの頭髪を弄ってやった。

 男子は黒髪で、女子はブロンド。

 この作業に打ち込んでいる最中、私は或る重要な共通点を直感した。

 

 これは――私(白金髪)と来寿様(黒髪)の髪色と同じでは?


 気付いてしまった以上、他の部分にも手を加えたくなる。そう、顔だ。

 顔を、私達に似せたい。しかし、ここで大きな問題が発生した。


 解像度が――違い過ぎるうううううううっ!!!


 男子の顔は来寿様ソックリにできた。目を瞑っていても余裕であった。

 対して、女子の顔が――誰? である。どこの誰ともつかない顔になる。

 男女で差が有るとなれば、不満を覚えるなと言う方が無理がある。由々しき事態である。面倒だからと、魔王の威光を笠に着てのゴリ押しは――駄目だ。悪手だ。

 何故ならば、魔王軍(我が軍)に於ける魔王()の地位は盤石ではない。私が初夢トリオから冷遇される光景は、現実のように鮮明に想像できる。余計な火種は無い方が良いだろう。うん。

 こうなると、打てる手は一つ。


 全員、来寿様の顔にしてしまおう。


 やってみた。結果、全く駄目だった。

 そもそも、来寿様は男性なのだ。女子の顔には不向き。その事実を、やってみてから思い知らされた。これで打つ手は無くなった。さて、どうしたものか?

 私は考えた。考えに考えた。その最中、私の脳内では人形達と育んできた記憶が走馬灯のように閃いた。


 人形達は、最初は三人だけだった。

 土人形として生まれ、一度体を失っている。

 再起して、最終的に黄金の体を手に入れた。その際、新たに初夢トリオが加わった。

 ガルガンチュアとの死闘を経て、鉄人形の蹄鉄も加わった。

 

 皆、私にとっては我が子も同然。来寿様にしても、殆どの人形の名付け親なのだ。人形に対する想いは、私と同じだろう。

 即ち、人形達は私と来寿様の子どもなのだ(極論)。

 私達の子ども。その事実(錯覚)が、私に素晴らしい考えを閃かせた。


 私達の子どもと思って顔を造ってみてはどうか?


 やってみた。これは――上手くいった。自分でも驚くほどの高解像度である。これには人形達も満足するだろう。しかし、今直ぐ披露する訳にはいかない。


 もう少し手を加えたい。新機能も付与したい。


 私は引き続き人形の体を弄り始めた。

 一体、いつになったら完成するのやら? 一応、脳内では「どこかで妥協せねば」と思っている。

 しかし、燃え上がった創作意欲は安易な妥協を許さない。その為、人形達の新しい体のお披露目は、先延ばしになっている。

 結果、人形達の体より先に新たな真銀弾射出装置の方が完成した。


 新しい真銀弾射出装置の名前は、「新・真銀弾射出装置」とした。これを告げた際、来寿様から「そのままだな」と呆れられている。その評価を聞いた際、私の口が「へ」の字に曲がった。だからと言って、(へそ)まで曲げるほど幼稚ではない。

 私は仏頂面を晒したまま、来寿様達に新・新銀弾射出装置に付いて説明した。

 そもそも、前回のものとはあらゆる点で異なっているのだ。


 先ず、砲台の設置場所が違う。

 魔王の森の離れから、城の屋上へと変更してている。それに伴って、砲身や砲台の材質を変更した。

 砲身は真銀製。しかし、大きさは五メートルに縮小した。それに伴って、口径は二十センチとなっている。当然ながら、前作のものより物理的破壊力は減少する。

 しかしながら、小さくなった分、砲台や砲身の旋回機能は向上した。より素早く照準を定めることができるので、より目標に当て易い。

 そもそも、当てなければ意味が無い。その事実は、前作が破壊された際に思い知らされている。


 砲身を変えた以上、砲台も変えねばならぬ。こちらも真銀――ではなく、木製にした。重量を抑える工夫(苦肉の策)だ。

 当然ながら、鉄より強度が低い。故に、砲身を縮小せざるを得なかった訳だ。

 だからと言って、以前のものより劣っている訳ではない。様々な工夫を凝らしている。


 私は創世記の記述を参考に、新たに「薬莢」を造り上げた。

 鉄の筒を造って、弾丸と炸薬を一体型にしたのだ。それに伴って、砲身に空薬莢を輩出する機構を設けている。これらの工夫により、より素早く連射が可能となった。

 次に飛竜が現れたときは、これでハチの巣にしてやる。がはは。


 かくして、封印魔王城の防衛機構は鰻登りに向上した(願望)。新・真銀弾射出装置は飛竜はおろか、ドラゴンにも対抗できるだろう(切望)。

 しかしながら、ドラゴンは世界を破壊するほどの魔物である。無策で挑めば敗北は必至(落涙)。そもそも、現状のままでは攻撃を受けた瞬間終了なのだ。

 滅亡の運命を回避する防御手段も講じねばなるまい。その指針となるドラゴン必勝法も必要だろう。

 思い立ったが吉日。私は直ぐ様全魔王軍を中央広間に招集した。

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