表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と侍の封印生活 The Survivors  作者: 霜月立冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
53/108

第五十二話 警報の森

 凡そ、この世のものとは思えない森林地帯。石の樹木、凍り付いた樹木、樹木型の炭。異常な樹木が立ち並んでいる。


 ここは魔王領、通称「化石の森」。しかし、その呼称も今日限り。


 領主である私、ウィルミア・デストランドは、化石の森改造計画に着手した。魔王軍総出(九名)の大事業である。


 森というだけあって、それなりに範囲が広い。その為、魔王軍を二つの班に分けている。私の班と、愛洲来寿(アイス・ライス)様の班である。


 来寿様班のメンバーは、来寿様と松竹梅。

 私の班のメンバーは、私と初夢トリオ。それと――蹄鉄(ていてつ)である。


 班の分け方に付いては、私も色々考えた。正直に胸の内を言えば、私は来寿様と一緒に行動したい。しかし、それでは戦闘力の偏りが著しい。

 私は泣く泣く、渋々、仕方なく、来寿様とは別の班に入った。この判断に関しては、我ながら成長したなと思う。


 少し前の私であれば、全力で駄々を捏ねていた。そんな訳はないと否定したいが、その様子が鮮明に想像できてしまう。

 嘗ての私は、無様というか、我が儘が過ぎるというか――まあ、考えないようにしよう。


 私と来寿様が別の班になったことで、私の脳内に「男女」というカテゴリーが閃いた。その直感に従えば、蹄鉄は来寿様の班に入ることになる。

 しかし、私は躊躇いを覚えた。


 蹄鉄は、私の目の届くところに置いておいた方が良いのでは?


 蹄鉄には様々な改造を施している。それが十全に機能するか否か、造物主としては確認しておきたい。そもそも何か有った場合、対応できるのは私しかいないのだ。


 私は造物主としての責任を果たすべく、蹄鉄を自分の班に入れた。その判断に対して、来寿様達も「それが良い」と首肯した。

 班分けが完了したところで、私達は早速行動開始した。


 封印世界では何が起きるか分からない。できるときにやらなければ、永遠に機会が巡ってこない可能性は否定できない。


 私達は、それぞれ秘密道具が入った革製リュックを背負った。結構重い。魔力で膂力を底上げしていなければ、持ち上げることすらできなかっただろう。重いので、荷車を使いたい衝動に駆られる。

 しかし、今回の作戦は個々で作業することになる。荷車はお城で留守番だ。


 私達はリュックを背負ったまま、それぞれ森の東端(来寿班)、西端(ミア班)を目指して移動開始した。

 移動に関しては、魔力で体力を底上げしているので余裕である。


 私達は調子に乗って、結構な速度で走った。その甲斐有って、一時間と経たずに森の際(西端)に到着した。その事実を直感したところで、私達は本格的に森の改造を開始した。

 具体的に何をするかと言えば、森の樹木群に「音叉」を付けて回るのだ。


 音叉。「U」字型に曲がった鉄の棒である。衝撃を与えることで特定の振動、或いは音を発生する。しかしながら、私が作ったものは衝撃では機能しない。


 私の音叉は、魔力に反応して振動する。


 音叉の振動は、周囲の音叉と共鳴して、森全体に響き渡る。その振動が、封印魔王城に設置した巨大音叉を震わせる。その際、城内に警報が鳴り響くよう設計している――と、いう訳だ。

 要するに、森に魔物が入ったことを知らせる警報装置である。


 警報装置に付いては、以前から構想を練っていた。ガルガンチュアの巨躯(きょく)を得たことで、漸く完成することができた訳だ。ガルガンチュア様々である。

 その事実を思う度、私は蹄鉄に向かって手を合わせている。


 今も、初夢トリオの後ろ(最後尾)にいる蹄鉄に向かって、心中で礼を言いながら頭を下げたところだ。

 蹄鉄の方も、私に向かって会釈した。私が頭を下げたのだから、当然の反応だろう。そもそも、私は蹄鉄の造物主である。蹄鉄(被造物)(造物主)に敬意を払うのは当然なのだ。そのはずなのだ。

 しかし、何事にも例外は有るようだ。


 私はチラと初夢トリオに一瞥をくれた。それぞれの額に浮かんだ文字(富士、鷹、茄子)を見ると、私の眉は歪に歪む。脳内には文句の言葉が閃いた。


 何で? この子達は、私ではなく、来寿様に懐くの?


 一体、誰に似たのだろう? 私は「はあ」と溜息を吐いた後、引き続き音叉設置作業に取り掛かった。


 私達は現場で散開した。それぞれが、リュックに仕舞った音叉を樹木に取り付けていく。

 因みに、音叉の最下部(『U』の字カーブ辺り)にはドリル状の太い針が付いている。樹木に取り付ける際、針を木の幹や枝に捻じ込めば良い。我ながら、気が利いていると思う。来寿様からもお褒めの言葉を頂いている。


 掛かる手間は、なるべく省いた方が良い。例え自分がやらない作業であっても。


 私達は鼻歌を歌いながら、楽しく音叉設置作業を続けていた。その最中、私が握る音叉が震え出した。

 一瞬、私の魔力に反応したかと錯覚した。しかし、直ぐに「それは無い」と思い直した。


 私の魔力の周波数は分かっている。それに反応しないよう、予め設定している。それに反応してしまっては、警報がずっと鳴り響くことになるからな。


 私は咄嗟に周囲を見回して、魔力の許を探った。すると、近距離から音叉が震える音が聞こえた。

 結構な数の音叉が震えている。その事実が、私に一つの事実を確信させた。


 これは、間違いなく魔物だ。


 私は最も音が煩い音叉の方へと走った。

 化石の樹木が密集する中に、リュックを背負った蹄鉄の姿が有った。他の人形(ゴーレム)達の姿は無い。未だ作業中なのだろう。


 蹄鉄は作業を止めていた。いや、できなかったというべきか。

 蹄鉄は、腰に差していた金属製の打刀を抜いていた。それを正眼に構えている。蹄鉄の足下には、取り付けそこなったと思しき音叉が落ちていた。

 音叉は、現在進行形で激しく震えている。その変調の原因は、蹄鉄の真正面にいた。


 そいつは巨大な獅子であった。全長は五メートルほども有るだろう。別の生き物と錯覚するほど大きい。しかし、外観は獅子そのものである。それを見て、私は巨大な獅子と錯覚した。

 しかし、どうやらそうではないようだ。

 獅子の頭の上から、大きな山羊の顔が覗いている。獅子の顔に匹敵するほど。それを見て、私は獅子の背に巨大な山羊が乗っているのかと錯覚した。

 しかし、そうではなかった。

 私が山羊の頭を見た直後、今度は獅子の背後から大蛇の顔が飛び出した。それを見て、私は獅子の体に大蛇が絡みついているのかと錯覚した。

 しかし、そうではなかった。

 山羊の頭(及び首)は、獅子の背中から生えていた。大蛇は、獅子の尻尾であった。その異様な全容を直感した瞬間、私の脳内に創世記に記された魔物の名前が閃いた。


 こいつ「キメラ」か。


 キメラ。様々な生物を合体させた合成魔獣、或いはその総称である。以前戦ったコカトリス、及びグリフォンもキメラである。

 キメラの語源というべき存在が、蹄鉄の目の前にいる魔物であった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ