表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と侍の封印生活 The Survivors  作者: 霜月立冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
51/108

第五十話 被造物の悲哀

 身長二十メートルの鉄巨人、ガルガンチュアを討伐した。歴史的快挙である。

 しかし、魔王軍(我ら)の偉業を称賛する者は、この世界(封印世界)にはいない。その事実を思うと、ほんの少し眉根が歪む。

 しかし、魔王ウィルミア・デストランドにとっては些事である。どうでもいい。

 私が気になっていることは、偉業達成の為に払った代償の方だ。


 封印魔王城半壊。

 玄関部分は完全に破壊された。その周辺から、外の景色を眺めることができる。とほほである。外部からの侵入を防ぐためにも、早めに修復すべきところ。

 しかし、今はできない。何故ならば、私を含めた魔王軍一同、誰も動いていないからだ。


 私達は円卓を囲んで睨めっこしている。私達の視線の先には、円卓の上に乗る拳大の赤い球が有った。


 ガルガンチュアの魔石。


 十個ある内、九個までは破壊した。相手は城を破壊した憎き敵。全部破壊しても良かっただろう。

 しかし、一個だけ残された。何故なのか? その理由は、来寿様が教えてくれた。


「俺は壊そうとした。だが、人形(ゴーレム)達が止めたのだ」


 何と、黄金人形(ゴールド・ゴーレム)達の意志である。人形達は、この魔石に何を見たのか? 興味が有る。

 故に、我らは円卓の上に魔石を置いて、それを囲んで睨めっこしている。


 私の視界に映った魔石は、綺麗な真紅である。凡そ狂った人形のものとは思えない。その事実が、私の首を斜めに傾げさせていた。


 私自身、魔石は何個か造っている。魔石に関する知識も万全だ。尤も、私が創る物に間違いはない。不具合のある魔石など、見たことは無い。それでも、それが如何(いか)なるものかは分かる。


 真面な魔石は綺麗な赤。不具合が生じるほど濁り、くすみ、黒に近付いていく。その知識が有るからこそ、今見ている魔石が正常であると分かる。その想いが、口から零れ出た。


真面(まとも)な魔石も有ったのだな」


 ガルガンチュアは狂った人形だ。奴の暴走で、三つの国が滅んだ。その例を鑑みると、奴に埋め込まれた魔石が真面であるはずが無い。しかし、その想像は外れていたようだ。


 因みに、破壊された魔石は全て真っ黒であった。ガルガンチュアの体が鉄であるが故、見分けが付かずに斬り捨てられている。

 しかし、この一個。胸部から飛び出た魔石だけは綺麗な真紅であった。何故なのか?

 私は首を捻った。来寿様も首を捻っている。しかし、六人の人形達は、直立不動の姿勢で魔石をジッと見詰めていた。


 一体、此奴(こやつ)らは魔石に何を見ているのか?


 人形達が話せたならば、その胸の内も分かるのだろう。しかし、それを可能にする手段は、今の私には無い。私にとって、現況の原因を知る手掛かりは、ガルガンチュアが記されたネフィリムの歴史書の知識だけ。


 歴史書を紐解けば、何か分かるのかもしれん。


 私は脳内に記憶された知識の断片から、ガルガンチュアに関する記述を(そら)んじた。


「昔、昔。或るところに聡明にして暗愚な王がいた」


 何という国だったか。滅んだ国に興味は無いので覚えていない。しかし、ガルガンチュア誕生の記述だけは、忘れようもないほどハッキリ脳内に刻み込まれている。


「彼の国は山の際に在り、鉄が豊富に有った。王『鉄を使って、最強の兵を造る』と(のたま)った」


 巨大鉄人形開発計画。その発案者が、件の王である。王命とあらば是非も無し。 

 王国宮廷魔術師団を中心にして、国を挙げて巨大鉄人形(ガルガンチュア)の制作に取り掛かった。


 このとき、現場で指揮を執っていた者が宮廷魔術師団長である。その名前は不明である。忌み名として、件の王共々歴史書には記載されていない。


 魔術師団長に付いて分かっていることは、若年の女性であったということ。それから、王国始まって以来の天才ということ。その下りに関しては、私も共感を覚える。私も「魔王」と呼ばれるほどの天才だからな。


 天才は、常人に無い発想をするが故に天才だ。例の十個の魔石は、魔術師団長の発案であった。初期案では、彼女一人で十個の魔石を造ることになっている。

 ところが、ここで王の横槍が入った。


「魔石は、師団の魔術師が一個ずつ造るが良い」


 彼の国の宮廷魔術師団は、師団長を含めて丁度十人いた。それぞれが魔石制作を担当することで、ガルガンチュア制作時間の短縮を企図していたようだ。王命とあらば是非もなし。

 しかし、この判断が裏目に出た――と、私は思っている。


 王の目論見通り、ガルガンチュアの完成は幾日か早まった。しかし、それは自らの最期を早めることとなった。


 出来上がったガルガンチュアの威容を見て、王は浮かれた。身長二十メートルの鉄人形である。それが手足の如く動くとなれば、是非もなし。

 王は、自身が世界の主になったかのように錯覚した。


 王はガルガンチュアに隣国侵攻を命じた。その際、王城を含めた国の重要施設の破壊を第一義としている。

 ガルガンチュアは、王命に従って、王城を破壊した。しかし、それは他国のものではなかった。


 ガルガンチュアが真っ先に破壊した城は、自国のものであった。


 ガルガンチュアは狂っていた。その変事を目の当たりにして、王は錯乱した。彼は宮廷魔術師団長を捕らえ、彼女に全ての罪を被せて処刑した。

 この愚行が、王国の滅亡を決定的にした。


 師団長が処刑されたところで、ガルガンチュアは止まりはしない。引き続き国の重要施設を破壊して回っている。

 この事態に際して、王は漸くガルガンチュアの強制機能停止を命じた。しかし、それの命令を遂行できた者は、誰もいなかった。


 強制停止方法を知っていたのは、処刑された魔術師団長だけ。その事実を知らされて、王も、国民も絶望した。 

 かくして、彼の王の国は自らが生み出した鉄巨人に滅ぼされた。


 ガルガンチュアは、自国以外にも二つの国を滅ぼした。さらに被害が拡大する可能性も有った。しかし、忽然と姿を消している。

 ガルガンチュアの消失。その理由に付いて、歴史書では「女神の奇跡」と記されている。

 確かに、女神の奇跡と言えなくもないだろう。ガルガンチュアは女神の神器、封印の壺に封じられたのだから。

 ここまでが、私が知るガルガンチュアに関する記述である。


 全てを諳んじた後、私は「はあ」と息を吐いた。その直後、不意に視線を覚えた。それも複数個。


 何となく、誰が見ているのか直感した。ユックリ視線を巡らせると、私の視界に黄金人形達の顔が映った。


 黄金人形達は、それぞれ何か言いたげに私を見ている。もし、此奴らに声が出せたならば、私に想いを伝えただろう。私も、視線だけで意図や意思を理解できるとは言い難い。

 それでも、言わんとしていることが何なのか、何となく分かった気がした。此奴らの想い、汲みたいと思う。しかし、その前に言わねばならぬことが一つ有る。


「この魔石、恐らく処刑された魔術師団長のものだろうな」


 唯一真面に機能した魔石。件の師団長が全ての魔石を造っていたならば、歴史の内容は変わっていたのだろう。

 私が魔石の正体(推測)を告げると、魔王軍一同「そうですね」と頷いた。


 これにて魔石の謎は解決した。しかし、皆の顔に笑みは無い。それぞれ、顔に愁眉(しゅうび)を浮かべている。私の顔にも、きっと似たような表情が浮かんでいるのだろう。


 ガルガンチュア、及び魔術師団長のことを想うと胸が痛い。何とかしてやりたいと思う。しかし、全て過去の出来事。私達には、ガルガンチュアも、彼の魔術師団長も救えない。だからと言って、何もできないという訳でもない。


 私達の目の前には、魔術師団長の遺志が籠った魔石が有った。

 私は、私にできる唯一の弔い、魔術師団長の遺志を継ぐ方法を告げた。


「私は、これを使って新たな人形を造ろうと思う」


 新人形の制作。それを告げた後、私は来寿様を見た。

 来寿様は、私を見ていた。私と視線が合うと、コクリと頷いた。その反応を確認した後、続け様に黄金人形達を順番に見た。

 黄金人形達は、全員私を見ていた。私と視線が合う度、それぞれコクリと頷いた。

 かくして、魔王軍に新たな仲間が加わった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ