表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
魔王と侍の封印生活 The Survivors  作者: 霜月立冬


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
47/108

第四十六話 魔王の家庭菜園

 不死の王の攻撃で、封印魔王城は損害を被った。大変遺憾である。しかし、今回の出来事は様々な教訓、或いは気付きを与えてくれた。

 それらを活かすべく、私、ウィルミア・デストランは封印魔王城に新たな施設を作り上げた。

 その内の一つが、城内菜園場である。


 菜園場の大きさは、凡そ十八平方メートル(アシハラの単位で十畳)ほど。他の部屋と同様、樹木網で囲まれている。しかし、床は違う。

 床は地面である。それも、タップリ養分を含んだ真っ黒な腐葉土だ。態々そのように創った。


 面倒な手間を掛けて菜園場を創った理由は、幾つか有る。その中で最大の理由は、籠城を見越した自給自足体制の確立だろう。


 時間軸が狂った(或いは停滞した)封印世界であろうとも、消費したエネルギーを補給しなければ、何れ動かなくなる。私達の体も、運動した分の栄養を補給する必要が有る。それを得る手段として、魔物の肉だけでは不十分。ビタミンや炭水化物も必要だ。

 尤も、植物性の栄養素に関しては、化石の森で賄えないことも無い。採取して溜めておくことも、この世界(封印世界)ならば可能だろう。

 しかし現在、必要量の植物を見付けてくることは困難な状況になっている。その主因は、サラマンダーである。


 サラマンダーの一件で、化石の森は焼けたり、石化したり、凍結したりと、酷い状況になってしまった。全てサラマンダーのせいである。私達は何も悪くない。私達は対処したに過ぎない。

 しかし、森林破壊のツケは私達に回ってきている。現況で真面な植物を探すにはそれなりの手間が掛かる。

 故に、野菜は自作する。これが現況における最適解である。幸いにして、魔王城は屋内菜園に適した条件が揃っていた。


 封印世界に太陽は無い。しかし、世界全体に「照らす光(シャイニング・ライト)」という魔法が掛けられている。城内(屋内)であっても、その恩恵に預かることができる。

 しかも、魔王城の前には湖という無尽蔵の水源が有った。


 光も水も、必要十分以上に確保できる。後は土壌の性質のみ。これは私が魔法で何とかした。肥料など、その辺も魔法で何とかした。

 肥料に使用した素材のことを深く考えてはならない。真相は、絶対に明かされることは無い。


 兎に角、私の魔法で城内菜園場が完成した。今現在、現場では三体の黄金人形が作業中である。


 黄金人形達は、人間の子どもと見紛うほど精緻な容姿をしている。私が造形を頑張ったからだ。えっへん。

 私の傑作達は、それぞれ今の私に似た格好をしていた。裾を切り詰めたアラクネ糸の着物である。女物である。

 そもそも、人形達の全体的なシルエットは()()()()()である。そのように、私が拘ったのだ。拘る余り、それぞれに固有の名前も付けた。

 名前を考えた者は、当然、私――ではなかった。我が騎士、愛洲来寿(アイス・ライス)様である。私が付けた名前は、人形達に不評であった。ちくせう。

 人形達は、来寿様が付けた名前を大いに気に入ったようだ。それぞれの額には、名前に因んだ文字が浮かんでいる。


 (くわ)(うね)を作っている人形の額には「富士」というアシハラ文字が浮かんでいる。名前は「富士子(フジコ)」である。「松太郎」ではない。

 富士子の後ろで種を植えている人形の額には「鷹」という字が浮かんでいる。名前は「鷹乃(タカノ)」である。「竹次郎」ではない。

 別の畝で野菜を収穫している人形の額には「茄子」という字が浮かんでいる。名前は「茄子華(ナスカ)」である。「梅三郎」ではない。


 此奴(こやつ)らは、松竹梅(しょうちくばい)(初期製造型の略称)とは別に創った、新造黄金人形である。

 松竹梅と区別する為、敢えて女性体形にした。尤も、額の文字を見れば、個々の判別は容易である訳だが。


 現在、初夢トリオ(第二期生産型の略称)は畑仕事に勤しんでいる。しかしながら、これは固定の役職ではない。松竹梅にも作業させている。今日は偶々(たまたま)初夢トリオが担当しているだけだ。


 そもそも、人形には学習能力が有る。学んだことは、それなりに身に付く。様々な経験をさせた方が良い。その事実は、松竹梅達が証明していることである。


 六体の黄金人形達は、それぞれ家事と菜園管理を任せている。私と来寿様が素材集めに出る際は、何れかのチームが随伴して、他方が城に残る。この役割分担が上手く機能していた。黄金人形を増やしたことは大正解であった。

 現況を鑑みて、私の心中に更に黄金人形を増やしたい気持ちが沸いた。しかし、今は黄金人形の増産が難しい状態になっている。


 そもそも、黄金人形の素材は幽霊船から得たものである。その幽霊船が、今は影も形も無くなっているのだ。


 私が松竹梅を造った後、船倉の宝物を船外へと運び出していた。あの腐敗した板の間で作業することを忌避したからだ。しかし、この判断が大間違いであった。


 宝物の一部を船外に下ろした瞬間、何と幽霊船が崩壊し出したのだ。


 私達は宝物を投げ出して船外に飛び降りた。その為、全員無事であった。しかし、残りの宝物は幽霊船と共に消滅した。

 この現象を目の当たりにして、私も、来寿様も、松竹梅達でさえも、アングリ口を開けてしまった。


 宝を他人に渡すくらいなら、全て無きものにしようという魂胆なのか? リッチの執着恐るべし。


 運び出した宝物は、全て黄金人形(初夢トリオ)になった。余ったものなど無い。


 因みに、初夢トリオの魔石(心臓部)には宝石を使用している。純度が高い分、そちらの方が魔力の通りが良いのだ。


 かくして、封印魔王城は自給自足の体制が確立された。籠城しても、暫くは耐え忍ぶことができる。尤も、援軍が望めない状況での籠城は自殺行為に等しいだろう。


 未だまだだな。足りないものが沢山有る。


 現況を見詰める私の視線は厳しい。現状で満足できない理由が、私の脳内の片隅に閃いていた。


 女神が創りし最大最強の魔物「ドラゴン」。


 世界を破壊できるほどの化け物を如何に攻略するか? その為に有用と思える設備や装備を、今の内に、可能な限り模索、創造し続けたい。

 尤も、それらが役に立つ日が来ないことが一番良い訳だが。

 この世界では、嫌な予感が良く当たる。本当に、おうまい、がでぃすである。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ