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第一話 デストラ樹海の魔王

 私の名前は「ウィルミア・デストランド」。その名の通り、「デストランド」という国の王族である。

 デストランドが在る場所は、この世界(ネフィリム)最大の陸地である「フォリス大陸」の東北部。

 大陸東北部には「デストラ樹海」と呼ばれる針葉樹林地帯が広がっている。その奥には、果てを想像できないほど開けた場所が在る。そのど真ん中に、奇妙な――樹木を編み込んだ城塞都市が有った。


 その都市こそがデストランド。王都兼、国だ。一個の都市が国を成す、所謂「都市国家」である。


 私はデストランドの第一王女として生を受けた。それ故、自分の国に対する思い入れは、人一倍強い。「世界の国の中で一番好き」と言える。しかし、私の国に対する想いは複雑だ。

 地図を広げて我が国の位置を見る度、私の脳内に「辺鄙(へんぴ)」の二文字が閃く。


 何故、我が御先祖様は斯様な僻地に国を建てたのか?

 

 大陸東北部、特にデストラ樹海には魔物も多く生息する。このような人の寄り付かぬ場所に国を建てる理由。それは、実は私個人にもかかわりが深いものであった。


 我がデストランド王家には「女神直伝」と言われる秘宝が有った。それを秘匿する為に、態々人跡未踏の僻地に国を構えたのだ。


 秘宝とは、魔法である。その名も「失われた女神の大魔法ロスト・グレートマジック・オブ・ガディス」。ネフィリムの造物主、創世の女神ネフィリア様が使用したと言われる、この世の理を曲げるほどの大魔法だ。

 女神の使った魔法だ。それ故に、使い手も選ぶ。いや、「人間には使えない」と言うべきか。そう断言できる理由が有った。


 女神の大魔法を使うには、女神と同等か、それに迫るほどの魔力が必要なのだ。


 人間の中に、女神と同等の魔力を持つ者はいない。魔法の名称に「失われた」と付いているのは、伊達でも何でもなく事実なのだ。

 しかし、何事にも例外が有る。


 異国から来た人外の魔女「ウィルリル」。我が祖母である。


 ウィルリル様は「人外」と評されるほど膨大な魔力を持っていた。その見た目も、女神の生まれ変わりと錯覚されるほど美しい。

 ウィルリル様は、魔女であるが故に魔法に執着している。どこからか女神の大魔法の存在を聞き付けて、我が国へと訪れた。そんな彼女を、当時の王が見初めた。

 

 我が祖父ノアル・デストランドは、ウィルリル様に惚れ込み、大恋愛の末、彼女を王妃とした。強引である。

 しかし、祖父の判断は正しかった。少なくとも、デストランドにとっては大正解だった。


 ウィルリル様は女神の大魔法を用いて、デストランドに様々な恩恵をもたらした。

 デストラ樹海に巣くう魔物を駆逐したり、周辺の樹木群を使って都市を城塞化したり、人々の生活に便利な魔法道具を想像したり――と、枚挙に暇が無いほど。

 正に救国の英雄である。


 ウィルリル様は、私が最も敬愛する人物である。その稀有にして偉大な才能を、私、ウィルミア・デストランドは受け継いでいる。こんなに嬉しいことはない。

 私も女神の大魔法を使用することができる。その事実を祖母に伝えたかった。しかし、それは叶わなかった。


 ウィルリル様は、私が生まれて直ぐにお隠れになった。そのように、私は聞いている。


 ウィルリル様が身罷られた後、私は彼女の跡を継いで宮廷魔術師長となった。この事実は、デストランドにとっては僥倖だった。しかし、快く思わない者も、少なからずいた。

 デストラ樹海に接見する周辺国である。かの国々の為政者にとっては不幸以外の何ものでもなかったようだ。


 周辺国の為政者達は、祖母を脅威に思っていた。思うだけでなく、実行もした。祖母が存命の頃から、様々な国がデストランドに攻め入った。

 しかし、我が国は負けなかった。


 侵略者達は、全て、ウィルリル様の大魔法で駆逐された。


 ウィルリル様は、偉大な護国の英雄である。彼女亡き後、私がデストランドの守護者(二代目)となった。私もまた、ウィルリル様同様、単身で敵を蹴散らした。


 あるときは、魔法の矢の雨を降らせ敵軍を壊滅させた。

 あるときは、竜巻で敵軍を吹き飛ばした。


 例え使用者が変わろうとも、女神の大魔法は強大無比。それを使う私に敵う者はいない。戦闘は、いつも私の一方的な蹂躙である。その事実は、周辺国の国民達を震え上がらせた。


 私を恐れる者達は、私に異名を付けた。それが「デストラ樹海の魔王」である。

 魔王。可憐な王女の二つ名としては不適当。遺憾である。尤も、私と戦う相手側にしてみれば――まあ、妥当なのだろう。

 何しろ、私一人で敵軍を圧倒するのだ。如何に大軍が押し寄せようと、私が出ていけば、その日の内に終戦する。「がはは」と高笑いしたくもなる。


 私は無敵なのだ。恐らく、フィリス大陸を征服できる力が有る。しかしながら、私にその意思は無い。父王シュバリスも、臣下達も、国民も、誰も征服を望んでいない。

 そもそも、我らの祖先は女神の大魔法を秘匿する為に樹海に入っている。魔法の恩恵を受けるのは、我らだけで良い。

 故に、私は防戦に徹した。城壁の上から魔法を放つだけ。実に楽である。今では慣れ切っていて、条件反射的に作業している。

 それで良かった。これからも、それでよいと思った。しかし、その考え方は慢心以外の何物でもなかった。

 私達は失念していた。「女神の恩恵を受けている者は、我らだけではない」という事実を。


 我らの敵国に、女神が使用した「神器」が存在していた。それが、私に牙を剥いた。その出来事が起こった現場で、私は愛洲来寿(アイス・ライス)様と出会った。

 これが運命。しかし、私にとっては余りに残酷な巡り会わせであった。

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