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願いの外交官  作者: トコトコ


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34/37

第34話 閉ざされている

「さて……入りますよ」

 母はなんてこともないように扉を開いた。

 こんなに恐ろしい、けれどどこか安心する場所。

 母は慣れているらしい。

 懐かしい。

 私はこの地に、再び戻ってきた。

 その扉の先。

 大勢の人がいた。

 なお、そこには異常なほどの静けさがあった。

 「宗教団体……初めて来たけど……こんな感じなんだなぁ」

 初めて見る光景に私は畏怖せざるを得なかった。

 私、洗脳されなきゃいいけど。

 もっとも、ここは由緒あるところだと思うから大丈夫だろう。

 ていうか、高そうな物を身に着けてる人が多い。

 中にはヤクザまで……。

 およそ宗教団体とは思えない。

 私は完全に場違いだ。

 ……ん?

 ふと隣を見ると、ハクがさっきまでつけていなかった時計や帽子、ネックレスを身につけていた。

 「ハク、その身に着けているものは一体……?」

 ハクは一度咳ばらいをし、口を開いた。

 「場に合わせてるんだ。ほら、ついでに金持ちアピールしようと思ったんだよ、友香里」

 何言ってんだこの方は。

 「なるほど。私だけ浮いちゃった」

 「友香里。大丈夫だ。一部だけ身に着けてもしょうがないよ」

 「ハクが言うの!? それを」

 「仲が良さそうでなによりです」

 母はにっこりと笑った。

 「と、とりあえず、行こう。まずは主君から? それとも願いを叶えることから?」

 「そうですね……まずは主君に会いましょうか」

 一行は人混みを通っていく。

 母がいるからなのだろう。

 母が先に歩き、皆よけてくれた。

 女王様と呼ばれるにふさわしい光景だった。

 お母さん、かっこいい。

 歩き続けていたら地下への階段を見つける。

 関係者以外立ち入り禁止という看板。

 わくわくが止まらない。

「ねぇ……お母さん。私ね、正直今でも信じられない。私は本当に、神なの?」

「正確に言えばまだ、人間のはずですね。貴方の前世が神であっただけですから」

「そっか……これで私の前世が違ったら面白いのに」

「……そうですか」

 ハクはそんな私達を暖かな目で見守っていた。

 正直、病気のこともあるから嘘だったらと思うと怖い。

 大体、これって客観的に見ればあれじゃない?

 娘を神だと言っているのは絵面としてどうなんだろうか。

 はたから見れば、やばい親子にしか見えない気がする。

 ま、まぁ、そんなことを気にしてはいけない。

 こつこつと足音を響かせながら薄暗い通路を進む。

 本当なら早く帰りたいけれど、小さい頃に死んでいたかもしれない私が、今こうして不思議な体験をしている。

 その事実だけで、嬉しかった。

 気づけば扉の前まで来ていた。母が鍵を取り出し、鍵穴に差し込む。

 ガチャリ、と重い音が響いた。

 母が扉を開く。

「これって……凄い。——綺麗」

 地下には真っ白な世界が広がっていた。

 三柱の像には、様々な部屋に続く扉や道がある。

「色々な部屋があるみたいだけど、これって何があるの?」

「実は……どの部屋にも入れないんです。なにせ鍵がありません。何より……特殊な魔力が必要らしいです。神聖な場所ですからね。中には神様のお家もあるらしいです」

「凄!え。それって開けてみたくなるやつだ」

「そうなのですけどね。まぁ、なので……旅してみたり情報収集してみたりしてもいいかもしれません」

「ちょっと待って。どうしてその情報は集めていなかったのか、聞かせてほしい」

 ハクは気になっていたようでハテナが浮かんでいた。

「そうだよね……どうしてなんだろう」

「それは正直、私としても忙しかったっていうのもありますが……一番大きい理由は主君からの言葉です。まだその時ではない、とおっしゃっていたので」

「じゃあ、今まさにその時が訪れたんだよ」

「そうだといいね」

 ハクが微笑んでいると、一柱の像から声がする。

「珍しい顔ぶれじゃのう。それに……久しぶりに会う神もいるしのぉ」

 この方が主君かぁ。

 なんか威厳が凄い。

 語彙力が無くなる。

「は、はじめまして。一ツ橋友香里です!」

「……ハクです」

「ほぉ〜ん。……まぁ、良い。明日香……確かに、君の娘がわしの同僚——夢幻の神で間違いないと思うが」

「やはり、そうなのですね」

「それと、この地下の部屋については探ってみてもいい頃合いなんじゃないかのぉ。明日香もまだまだ学ぶことがあるじゃろうしな」

 まさか本当に像が喋るなんて。

「ねぇ、ハク。本物の神様って、本当に像の姿で喋るんだね……」

 私のささやき声に、ハクは優しく微笑みながら声を潜めて返してくれた。

「確かに初めてだと驚くよね。でも、友香里にとってはそこまでショックじゃなかったんじゃないかな?」

「どうして?」

「私がいるからね。すでに色々不思議な体験をしてるだろう?」

「確かに」

 ハクの言う通り、私の日常はとっくに普通じゃない。まさかまた本物の神様に会えるなんて、なんだか信じられないくらいラッキーだ。

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