↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願いの外交官  作者: トコトコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
33/37

第33話 人助け

大学の定期試験がようやく終わったので投稿を再開します。遅くなってすみません。

「実は友香里に話したいことがあったんだ」

 ハクは真剣な眼差しで私をじっと見つめ、そのまま口を閉ざした。

 よほど大事な話があるのだろう。

 朝だというのに窓の外はどんよりと曇り、冷たい強風がガラスを打ちつけている。

 昨日まであったたんぽぽの綿毛が、いつの間にか散っていた。

 ハクはいつも私を守ってくれた。

 だから、私にできることがあるなら、今度は私が彼の力になりたいんだ。

 肌がひりつくような沈黙の中、私はまっすぐハクを見つめ返した。

「……なんですか? その話したいこととは。私、何も聞いていないのですが」

 遮るように響いた母の声には、いつもの笑顔が消えていた。

 横目でハクを睨みつける母の瞳には、冷酷なほど光がない。

 『大事なことは先に言ってください』が口癖の母にとっては心配なのだろう。

「……友香里の力には、代償があるんだ」

 ハクは母の視線を無視して、静かに、意を決したように言葉を紡いだ。

 代償。その単語を聞いた瞬間、じっとりと手汗が滲む。 

 深刻になりたくないのに、恐怖が勝ってしまう。

「え……?」

「そう、だから友香里に話しておきたいのは……友香里の場合、神の力を振るった分を返さなきゃいけない。いわば、借金がある状態なんだ」

 どうして皆、こんなに強いんだろう。

 一般人の私だけが、ここで怯えている気がして、自分がひどくちっぽけだ。

 負けたくない、成長したい……。

 私は震える声を必死に抑えて、恐る恐る尋ねた。

「……どうすれば、その借金を返せるの?」

「それはね、人々を救うこと。それが条件になる」

「そ、それなら!」

「ただし……力を使わないで、だよ」

 ハクは、私の淡い期待を打ち砕くように、はっきりと言い放った。

「……何故、そのような条件があるのですか?」

 口を挟んだ母の表情には、怒りよりも困惑と疲れが見えていた。

「それは分からない」

 ハクは静かに首を横に振る。

「……そうですか」

 母は悔しそうだった。

 私はお茶の入った湯呑みをいじりながら、救う……か、と頭の中で考えてみる。

「救うって言っても、困ってる人なんてそう簡単に見つからないというか……どうすればいいか分からないよね」

 私が言うと母は思い当たる節があるようだった。

「……それなら、ちょうどいい仕事がありますよ」

 あるんだ。

「ほ、ほんと!?」

 母は人差し指を口の前に置く。

「三船連合の仕事です。我々の神として、責務を果たしてもらいます。それは……発展途上国の支援ですね」

 私はキョトンとしてしまった。

「それって……私には難しいような……」

 私のこと……信じてくれてるのかな。

「一旦、別の仕事を先に頼むつもりですから大丈夫ですよ」

 ……良かったぁ。

「その仕事って……一体なんだろう」

「三船連合の信者の悩みを聞くことです。私としては、是非主君にも会っていただきたくて」

 どっちにしろ、大役だ。

「え?緊張する……ど、どうしよう」

「そうは思わないね。友香里にとって丁度いい練習になると思うからね」

「そうですよ、友香里。貴方ならきっと出来ますよ。もちろん、私もいますから」

「明日香が良ければ私もいることにしようか?」

「構いませんよ」

 母は力強く頷いた。

「わ、分かった。やってみるよ。上手く出来るかなぁ」

「いずれ出来るようになると思いますよ」

「えっと、いつからなの?その仕事は」

「そうですね……1週間後にしましょうか」

「研修はある?ま、まぁ、お母さん達がいるから大丈夫だろうけど」

「作りますよ。一緒に頑張りましょう」

「はーい」

 私、願いの外交官なんてなれるのかな。

 ——1週間後

 お母さんとハクによる即席の研修を終えたものの、私の緊張がほぐれることはなかった。

「なんということだ……来てしまったよ、この日が」

 内心は心臓の音がうるさかった。

「大丈夫。私達がいるからね」

「その通りですよ。大船に乗ったつもりでいてください」

 私の心を察してくれているのだろうか……?

 母の車に乗せてもらい、着いた先は。

「おお……ここが三船連合かぁ。でかぁ〜」

 素直に感心してしまった。

 建物は一面真っ黒で、どこか異質な雰囲気が漂っている。例えるなら、古い迷信がそのまま形になったかのような、不気味な気配だ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。