↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
願いの外交官  作者: トコトコ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
27/37

第27話 国境

 友香里達が大学に行っている間、明日香は情報網を駆使して調べていた。

 古道という男にはなんやかんやで手伝ってもらえた。

 そのことに明日香は便利だと思っていた。

「明日香さん、この人……旦那さんですか?」

「敬語じゃなくていいですよ。それに……」

 明日香は目つきが鋭くなり、確認する。

 ――確認した。

 ふー、とため息をつきながら書類をさらに詳しく見る。

 『一ツ橋倉(ひとつばしそう)。生死不明だったが、最近になって裏社会に再び姿を現すようになった。現在はレガシー所属。明日香の正体を知っている珍しい存在である。』

「……へぇ。何も知らなかったです。ありがとうございます。調べてくださって」

「大丈夫。このぐらいどうってことは……」

「貴方、良い人ってよく言われるでしょう?」

「え?まぁ、はい」

「どうして裏社会に関わっているのですか?」

「それは……金が無くて仕方なく」

 明日香は彼のことを物をみるような目で見つめていた。

「そう……よく、分かりました。構いませんよ。貴方の選択ですから」

 明日香は書類を置く。

「とにかく……私の旦那が生きていることが分かり、良かったです」

 明日香はそんなお世辞を古道に告げる。

「なら、良かった」

 古道は純粋に喜んだ。

 明日香のお世辞であることに気づかずに。

 彼にとっては、明日香はヒーローだ。

 ヒーローは嘘をつかない。

 そんなありふれた理想を明日香に押し付けているのだろう。

 彼女の本当の姿を見ようともしない。

 古道は……本当に、彼女は味方だと信じている。

 彼女はただの人間だ。

 良い面も悪い面もある。

 それでもなお彼女のことを神聖視してしまう。

「ニュースでは、レガシーについて報道されてる。レガシーの本拠地の国なんて強調されて。何かあるのかな」

「……」

 明日香にとってレガシーは懐かしい思い出だった。




 レガシー。

 元々はなんの変哲もないただの一般企業だった。

 それを変えたのは、他でもない明日香の旦那である倉だ。

 彼は三船連合を終わらせたかった。

 というよりも、明日香を連れ出したかった。

 彼女を連れて逃げて幸せになれたら。

 ただ、明日香は承諾しなかった。

 彼女は三船連合の使者だ。

 逃れることはない。

「どうして……貴方はいつもいつも、私を憐れむのですか?私が、間違ったことをしていますか?」

「してる。間違いなく。こんなことを君にさせるなんて、君の宗教の神はどうかしている。何故、従うのか僕には全く分からない」

「貴方は、私のことをそう思うのですか……」

「何人殺してきた?」

「さぁ……覚えていません。覚えておく必要がありますか?」

「君はどうして……。……何故こんなことを」

「はあ。もう良いでしょう。この話はもうやめてください」

 明日香は出て行ってしまった。

「待ってくれ!明日香、話を」

 こちらを向くことは無かった。

「貴方は……根本から間違っています。私は、この仕事をしていたいです。信者の方は救われていますし、何も貴方に迷惑はかけていないではありませんか。それではダメなのですか?」

「ダメに決まってる。裏社会とはもう関わるべきではない。君は死ぬのが怖くないのか?」

 明日香は物悲しそうな目で倉を見つめる。

 彼にとってみれば明日香は守るべき対象だ。

 ただ、明日香の守るべき対象は他でもない三船連合、及び信者達だ。

 彼女にとってみれば全てを捨てて逃げるということ。

 それを了承するのは容易ではない。

 明日香とは最近上手くやれていない。

 倉はどうするべきか悩み、一つの結論にたどり着いた。

「そうだ……三船連合を終わらせればいい。そして、明日香と一緒に逃げればいい。失うものを無くしてしまえばいい。ずっと一緒に居られるように」

 彼は、結構しつこいというのが明日香の見解だ。

 重い、とも言える。

 明日香からすれば刺されたくない、と思っている。




 明日香は帰路を辿る。

 視線を感じながら。

 車から誰かが降りたが明日香の知っている人だ。

 名前は漆井。

 ……教授だ。

「すみません。明日香さん、でしょうか。こちら、友香里さんの担任の漆井と申します。宗教団体に入っているのですかね。実は……うちの上司が貴方のことを探していましたよ」

 ……まずい。

 明日香はそう予感した。

「宗教団体を復活させたのは明日香さんだそうですね。それって貴方なんでしょうか。せっかく、レガシーが潰してあげたのに。ああ、覚えていませんかね。何度でも、同じこと。このままじゃ埒があかないのも分かっています。交渉しましょう。出来るのであればですが」

 漆井教授はとある神と似たようなことを告げる。

 ……出来るはずがない。

 どう考えても彼の要求なんて分かりきっている。

「……貴方は、何者なのですか?」

 明日香は恐る恐る尋ねる。

 はったりなのかはよく分からないが。

 仮に忘れているのなら。

 レガシーが神像に宿っていた神の消息に関わっているのではないか。

「私は……貴方の味方だ、とだけ言っておく。好きにすればいい。やはり、友香里さんは貴方の隠し子らしい」

「……信用できません」

「なるほど。私は元々発展途上国出身でね。宗教に関する理解は人よりも多いつもりだ」

「外国人なのですか?」

 全然そういう風には見えない。

「一応。そもそも私は……国からの使命を背負ってきた。戦争を終わらせたい。レガシーによる戦争を」

「随分と大胆に教えにきましたね……。それってつまり、レガシーのスパイ。それも国からのということになりますが」

「信じないのか?」

「そう簡単に信じるわけにはいきませんね……」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。