第26話 オーラ
「ぜひとも明日香をサポートしてほしい」
と、ハクから頼まれた。
「いいけど、どうやって?」
「私が状況を教えるから友香里はそこから行動して欲しい。友香里なら出来る……それに私も出来る限りサポートするからね」
ハクは期待しているようだった。
私になのか、それとも前世の神としての私と重ねているのか。
母が帰宅後、私が駆け寄る。
「何か悩んでいるの?」
「ちょうど、今一人で三船連合の仕事の作戦を練ろうかと思いまして」
「なら、三人で立てようよ。もしかして、レガシーについてなの?」
「ええ。そうです……ハクから聞いたのですか?」
私はうなずく。
ハクはこちらの話を黙って聞いていた。
「ひとまず、私が考えているのは私の『武力行使』の裏で、友香里が『神の記憶』でハッキング返しをすることです」
母の明日香としての姿を初めて見た。
「ハッキング返し?」
私の質問に対して母は真剣な目つきだ。
「レガシーが『神の力』を使って『願い』を消そうとするなら、友香里は逆にその接続を逆探知をするんです。私が前線で暴れている隙に、友香里はハクのサポートを得て、前世の記憶を『鍵』としてレガシーの管理システムに潜入します。『願いを奪う』プロセスを書き換え、逆に『奪われた人々の願いを増幅させて暴発させる』ことで、レガシーの管理体制を内部から崩壊させる――という作戦です」
母のオーラに圧倒されている自分に遅れて気づいた。
これが……裏社会の人間。
母は特に、警察からはお咎めがない存在だ。
今まで黙っていたハクが口を開いた。
「良いとは思うよ。私が友香里をサポートしていいだろうからね」
「そうですね……お願いします。友香里は巻き込みたくなかったのですが……」
と母は申し訳なく思っていた。
作戦を決め、レガシーの動きを待った。
その間、私は大学生活にわくわくしていた。
――そして、事件が起きた。
「緊急ニュースをお伝えします。発展途上国同士の間で紛争が始まりました。この紛争では、レガシーというコンサル組織の本拠地である国が関与していると疑われており……」
――え?
国が紛争に関与しているかもしれない?
そんなことって。
「調べてみましたが……発展途上国のどちらとも、レガシーの本拠地である国とは仲が悪いようですね」
母はパソコンから目を離さない。
「ええ!?そんな国同士が喧嘩するなんて……」
私に電撃が走る。
と、とにかく……準備しなきゃ。
ハクと共に大学へ向かった。
今日から大学の授業が始まる。
漆井教授を見つけた。
「友香里さん、落とし物を取りに来ましたね。こちらです」
白いフカフカのハンカチを受け取った。
私のだ。
ハクは「良かったね」と微笑んだ。
「あの、漆井教授。教授は司書の資格の授業もやってくれるんですよね。どんなことをやるんですか?シラバスを見ましたがいまいち分からなくて」
と、尋ねてみた。
「なるほど。まず、司書の資格を取る方法はいくつかあります。この大学では授業に出席し単位を全て取れればそれで問題はありません。そして、何をやるかは……授業を受けてからのお楽しみです」
教授はニコリとした。
「そうなんですね。分かりました。ありがとうございます」
「それでは私はここで」
行ってしまった。
「友香里……怖くないのか?もしかしたらやばい人かもしれないのにさ」
ハクは心配している。
「大丈夫だって。教授だよ?そんな目立つことはしないよ。それに、いい人そうじゃないか」
私は漆井教授を信じている。
だって……なんだか懐かしい感じがするから。
こう私の周りは良い人に恵まれていたからそのせいだろう。
「……友香里がそう思うならそうかもしれないね。ここだけの話だよ……実は、友香里の死因を知っているよ」
「――え?」
「仕方がなかった。明日香にやる気を出させるために、了承してくれるように仕向けただけ。これは秘密だからね……」
ハクはこちらを見て、愛でるようだった。
……怖い。
でも聞かないと。
「ちなみに、死因って何だったの?」
「それは……」
教えてくれた。
「……え?それだけなの?」
「そうだね。私の力が及んでくれているみたいでね」
「主君よりも格上なの?」
「格上ではないけれど……真っ向からの戦い以外なら私の力は効くと思う」
ま、まじか。
秘密にしておこう。
ハクって嘘つくんだ……。
「お母さんにそんなことしなくても大丈夫だったと思うけどなー」
「明日香を主君の駒から対等な関係にするのが目的だからね。仕方ないよ」
「そういうもんかな?」
「そうそう」
「なるほど……やっぱハクもお母さんに幸せになって欲しいんだ。嬉しいよ」




