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願いの外交官  作者: トコトコ


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23/37

第23話 予兆

 リビングに向かうと、テーブルには既にハンバーグが置かれていた。

 暖かみのある木の皿とスプーン。

 ハンバーグの匂いは……私にとって特別だ。

 慌てて椅子に座り、ハクと「いただきます」と頂く。

 ハクは私のことを待っていてくれていたようで、食べながら私はにこやかに目を向ける。

 美味しそうに食べているが、どこか哀愁が漂っている。

 何かあったのだろうか。

 あっという間に食べ終わり、「ごちそうさまでした」とリビングを後にする。

 部屋に来て、ふとこれまでのことを思い出していた。

 暇だからだろう。

 今……思えば凄い体験をしていると自分でも思う。

 ハクは、私達の味方だ。

 神様が味方なんて、これほど嬉しいことはない。

 ハクって寝るところあるのだろうか。

 一応、鳥にも戻れる気がするけど……。

「神界に寝床があるから、そちらで寝る」

「え!?ハク、神界に行けるんだ……」

 てっきり実体化してるから、無理なのかと。

「あくまでも、実体化できるようになっただけだからね。それに……わざわざこの家にいる意味がない。今までもそうしてたよ」

「そっか。……でも、それだと鳥籠はもうお役御免なの?」

「……やはり、鳥に戻るよ」

「いやいや、好きにしたらいいよ」

「鳥籠は……預かっておくよ」

「そ、そっか。ならバイバイだ」

「そうだね。また明日。一旦、自販機で買ったコーヒーは神界の家で飲むよ。それじゃあね」

「はーい」

 行ってしまった。

 夜は更けるのが早く、満月が不気味なほど明るい。

 何かの前兆を伝えているかのように。

 満月が一瞬赤くなり、静音が満ちていく。



 

 暗い夜に、スマホで連絡をする者がいた。

 路地裏に入っていき、繋がったようだ。

「私――漆井(うるい)です。三船連合の様子はどうなっているか、確認を。……我々と敵対している組織の様子を聞いている」

 静かに、だが力強い声で男は言う。

「……なるほど。では、早速、その神の力とやらを見せてもらおうじゃありませんか。実に、楽しみだ」

 その日は、確実に迫っていた。



 

 鳥のさえずりで目が覚めてしまった。

「友香里ー、朝ごはんが出来てますよー」

 母の声がする。

 いつも通りの朝だ。

 なんとか起き上がり、ようやくリビングにたどり着いた。

 ……ハクがいない。

 鳥籠も無くなっている。

 「お母さん、ハクは?」

 「神界の友人に会うと言って朝ごはん食べた後出かけましたよ。それと……鳥籠についてですが、その友人に渡すと言ってましたよ」

 「確かに昨日預かると言ってた」

 「そうでしたか……とりあえず、私達は朝ごはんを食べましょう」

 


 

 友香里達は仲がいい。

 きっと私が何かしたところで怒らせるだけだろう。

 私は今神界の友人である、天罰の神に会うところだ。

 しばらく歩いて、三つの道が現れた。

 ここは、真ん中の道を行こう。

 正しい選択をしないと迷子になってしまうからね。

 分かっている。

 過去は変えられなくて、過去の選択を選ばなきゃいけないことぐらい。

 笛の音が近づいてきた。

 昔の記憶を呼び起こす。

 「探偵殿、お時間です。その屋敷はもう存在しないのですよ。……まさか自殺に追い込んでしまったことを悔やんでいるのですか。貴方が余計なことをしたからでは?」

 笑われている。

 「何がおかしい?」

 「いや、貴方の悪趣味のせいでこんなことになったのに、気にするんだなぁ、と思いまして」

 「君、私の執事だよね。クビにしていい?」

 「はっはっは。相変わらず、ひどい扱いだ」

 「君は、いい趣味しているよ」

 昔の回想が終わったのか静かになる。

 そして扉にたどり着いた。

 ノックを三回し、魔力を込める。

 うめき声のような音を立てながら重々しい扉が開いた。

 目の前には神社があった。

 すぐに建物がいや、空間そのものが歪み、屋敷に移動していた。

「お待ちしておりました。探偵殿。……調子はいかがですか?」

「元気だよ。それとこの鳥籠、引き取ってくれないか?」

 執事は一瞬目を見開きすぐに落ち着き払った。

「分かりました……引き取りますが、この籠どうしたのでしょうか。それに……実体化しているようです」

「ああ、私が人間界に行く時、鳥の姿でしか現れることが出来なかったから、そのときのだよ。実体化は、功績が認められてね」

「なるほど……私の知らぬ間に大きな事件に巻き込まれていたようですね」

 執事は……飲み物の準備をしていた。

 おそらく紅茶だろうか。

「執事……明日香についてはどう思っている?」

 少しだけ無言が続いた後、ニヤリ、としていた気がした。

「さぁ……天罰なんて下せばいいものではありませんから」

「そうなのか?」

「ええ……天罰を下すことで最悪の結果を招くこともあります。例えば、天罰のおかげで不誠実な恋人と別れられたとしても、その逆恨みで刺されたら意味がない。無理に神の力で裁くより、放っておく方が安全なこともある。そもそも明日香さんに関しては結構気に入ってます。個人的に」

 私は怪訝そうな顔をすると、執事は嘲笑しているかのようだ。

「安心してください……私は贔屓しない主義なのです。ただ、仮に夢幻の神の生まれ変わりが私に交渉ができるのなら、乗っても構いませんが。……出来るなら、ですが」

「なるほど。ただ、私がそうさせない。友香里に……いや、誰にも交渉させるつもりはないからね」

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