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1ページ目

思考の自動書記だけど本当にどうでもいいことは行間に省略されているという裏設定


○月×日




改めて記念すべき日。


昨日のことはなかったことになってるので今日が勇者様召喚の日だ。


予定通りギリギリで召喚の間に到着。


昨日よりも不機嫌度が高そうなルナの横に立って大臣が来るのを待つ。


そう言えばやり直しにはなったけど昨日のゴブリンもどきがまた召喚されたらどうするんだ?


彼が唯一無二の勇者だというなら何回やっても彼が呼ばれることになるはず。


気になったのでルナに聞いてみたら「その時は諦めてソルと結婚します」ってだからなんでだよ。


何を諦めた? 俺と結婚しないことをか?


別に俺と結婚してもしなくても俺とお前が勇者の旅に同行するのは半ば確定事項だよ。


腑に落ちないやり取りをしてるうちに大臣が到着。昨日と同様にルナのよくわからない呪文が始まる。


やがて魔法陣が明滅したと思ったら軽い爆風。


ルナの前に出ておこうかと思ったらルナのほうから俺の背中に回り込みやがった。そんなに嫌か昨日の勇者様(仮)


さて、はたしてどうなるかと思っていると目の前に立っていたのは昨日の勇者とは似ても似つかない大男だった。


妙にてかてかと光沢を放つ日焼けした肌。


ニカリ、と目をつむったまま微笑んでいる口元には実に見事な歯並びの白い歯。


腹筋は見事に八つに割れ腕には岩のような力瘤。


足などルナの腰くらいあるんじゃないかというくらいに太い。


なぜか下着一枚で筋骨隆々の中年のマッチョがアドミナル&サイを決めながら召喚された。


……いや、なんでだよ。


昨日とは違った意味で驚きだ。


周りもリアクションに困ってる。


でも昨日の勇者様(仮)よりはマシなんじゃないか?


普通勇者様を召喚してもすぐには冒険に出ずに実力の確認も兼ねて修行期間を設けるけどこの人もうそこらの雑魚魔物なら素手で倒せそうだし。


どうだ? と後ろで固まっているルナを促すとぶつぶつと呪文を詠唱。


あ、と思った時にはもう遅くいつのまにかポーズがモストマスキュラーに変わっていたマッチョな勇者様(仮)は一瞬でかき消えてしまった。


どうでもいいけどあのマッチョ勇者様こっちのこと全く気づいてなかった気がする。


一応理由をルナに聞いてみたけど「あんな筋肉達磨と共に旅をしなければならないのならソルと結婚した方がマシです」っていちいち俺との結婚を引き合いに出すなよ。


結局この日も勇者召喚はなされずまた明日ということになった。












○月■日




今日こそ記念すべき日。


3度目の正直という諺が東方にはあるらしいからきっとうまくいくはず。


前2回よりも早くついてしまったのでルナのよく分からない長話を聞きながら召喚を待つ。


別に早く来たのは気まぐれであってホントは今日もゆっくり来ようと思ってたんだけど魔法騎士さんにルナを待たせるなって脅されたからでは断じてない。


しばらくして大臣到着。3回目の召喚。


昨日が別人だったからまた違う勇者が呼ばれるのかなーと思ってたら魔法陣が明滅して爆風。


勇者の姿を確認する前に俺の後ろに隠れようとしたルナを今度は無理やり前に出す。


よく考えたら勇者様から隠れようとするとか不敬扱いだろうが。


抵抗しようとしたので腕で拘束したら諦めたのか大人しくなった。


ばたばたしているうちに煙が晴れる。


そこにいたのはやはり前2人とは別人だった。


まず目についたのは清潔感というより簡素な白いベッド。


その上に横たわるのは俺も見たことないほどの歳とった老人。


骨と皮だけになっていると言われれば信じてしまうほどやせ細った体。


焦点の合わない虚ろな光を宿した眼。


前に王国博物館で見た即身仏というのがこんな感じだった気がする。


……いや、これはダメだろ。色んな意味でダメだろ。


どうやって戦うの? というか立てるの? そもそも生きてるの?


よく見てみると胸元が僅かに上下しているので生きてはいるらしい。


とりあえずホッとしたけど根本的な解決にはなってない。


どうしよう? と誰もが同じこと考えてたら何か老人が話そうとしてる。


声が小さくて聞き取れないので(誰も近づかないから)俺が耳を寄せてみると


なになに?ついに極楽が見えてきたか、婆さん今行くよってルナ早く返してあげてー!


流石は幼馴染。俺の意図を既に読んでいたのか詠唱を済ませたルナによる送還でなんとか事なきを得たがこれで3度目の失敗。


いや、召喚自体は成功してるわけだから3度目の送還。


なんだよ、東洋の諺嘘っぱちかよ、って愚痴を聞こえたらしい。


ルナに東洋の諺には2度あることは3度あるというのもあるのだと教えられた。なるほど。














○月◆日




ホントに記念すべき日は来るのか?


だんだん不安になりながら慣れてきた道を通り召喚の間。


待機、詠唱、明滅、爆風


最初の時は皆緊張していたはずなのになんだか流れ作業みたいになってきている。


さて、こんどはどんな勇者様かな?


煙が晴れた先には驚いた顔をした少女がいた。


歳は俺と大して変わらないくらいだろう。


中肉中背で明るい茶髪のショートボブ。


どことなく中性的な顔立ちだが間違いなく美人に分類される。


「え? え? ここどこ? 僕さっきまで本屋にいたのに」と混乱してる彼女の口からこぼれたのは綺麗なアルトボイス。


女性にしては珍しくスカートではなくズボンや変わった一人称も不思議と彼女には似合っている。


だが何より眼を引くのはその胸元。


自己主張をしないささやかにてなだらかな起伏部。


全てがパーフェクト。ボーイッシュな女の子とか完璧に俺の好みです。


やるじゃないかルナ。魔力と胸がデカイだけではなかったようだな。


女の勇者は珍しいけど美形ではあるからルナも文句はないだろう。


ほらルナ、勇者様が説明してほしそうにしてるぞ。


いつまでたってもルナが反応せずにじぃーっと見てたからか勇者様は矛先を変えて俺に話しかけてくれた!


思いがけないファーストコンタクト! ここは好印象にしなければ!


出来る限り真摯な態度で彼女に状況を説明をする。


後ろ(特に魔法騎士さんのほう)から誰だコイツ?と言った視線が伝わってくるけど無視無視。


自分が勇者だと聞かされて、戦うなんて怖いと、困惑してるようだけど、大丈夫です、俺が貴方を守りますからと言ったら顔を赤らめて俯いた。


やべえかわいい! ついに俺にも春が来た!


今まで好みの女性No.1は姫様だったけど勇者様登場で一気に順位が変わってしまった。


わあい勇者様と旅できるなんて光栄だなー嬉しいなー楽しみだなー


旅してるうちになんかあったりしたらどうしようかなー


宿に泊ってるときに着替え中に入るハプニングとかあったらどうしよっかなー


これからの勇者様との冒険を考えると胸が弾む。弾まないほうが好きだけど。


なんて考えていたら唐突に勇者様の姿がかき消えた。


……グッバイマイヒロイン。


じゃねえよ! なにしてんだルナ! せっかくまともな勇者様だったのに!


文句言ったら「ああいう子がソルと旅をしたらセクハラばかりでかわいそうな目にあうに決まってます」って酷い!


セクハラなんざしたこと……ああ、そう言えばこの前ルナの胸揉んだな。


わざとじゃないしそもそもルナの胸なんざ頼まれても揉もうだなんて思わないというのに。 これだから胸のデカイ女は自意識過剰で空気よめないん













途中から口に出ていたらしい。気づいた時には召喚の間には誰もいなかった。


魔法で吹っ飛ばされたらしく痛む体を引きずって帰った。














○月!日




昨日が記念すべき日だったらよかったのに。


まあ過ぎたこと言ってもしょうがない。あまり悩み続けないのが俺の長所だし気持ち切り替えて今日も召喚に立ち合おう。


どうも召喚を数日掛けて行うものだと勘違いしたらしい守護騎士にそろそろ召喚されるころですかな?と聞かれて返答に困る。


適当なこと言ってその場をやり過ごす。一応毎日召喚されてますよだなんて言えないし。


さて、今日はどんな勇者が召喚されるのかな? と予測しながら召喚の間に行ったらルナが少し落ち込んでる。


どうやら王様にいい加減勇者を見せろ(意訳)、と言われたらしい。


つまり今日がラストチャンスか。まあ普通に考えたら何度も召喚を試せるっておかしいもんな。


よく今までOKだったなって聞いたら「やり直しを認めてもらえないならソルと結婚します」と言って納得してもらったらしい。


待って。俺との結婚って国単位で嫌がられてるの? 深く追求したら傷つくことになりそうなので忘れることにする。


まあ俺との結婚云々以前に、普通の召喚師じゃあ人生で一回出来るか出来ないかの大魔法を軽々何度もやってのけるんだから改めて俺の幼馴染ってすごい。


だがそれも最後か。出来れば昨日の勇者様が来てほしいけど今までのパターンから言って無理だろうな。


初日の緊張が戻ってきたのか、はたまた初日の勇者的なのが現れたらどうしようと不安になってるのか固くなっているルナをほぐすために他愛もない話をする。


召喚の時間になった時にはいつものルナに戻ってたから失敗はしないだろう。


問題はどんな勇者が召喚されるか、だ。




ゴブリンもどきか?


マッチョか?


即身仏か?


ボーイッシュか?


はたまた別の色物か?




はたして、5度目の煙が晴れた魔法陣の中央。


正直、驚いた。


黒い髪に黒い眼に黒い服。


初代勇者様を思わせる出で立ちの青年がそこに立っていたのだから。


しかも美形だった。それも半端ないレベルの。


理想の勇者様を想像して見てくださいと女性に尋ねればきっとこういう勇者になるんだろう。


貴族の若い女性なんか特に喜びそうだ。


彼の肖像画を売れば高値で売れるかもしれん。


召喚されたというのにやけに落ち着いている勇者様にルナが声をかける。


どうやらお眼鏡にかなったらしい。


事情を説明して勇者様にも承諾を得られたので晴れて勇者がここに誕生となった。


周りから歓声の声が上がる。


先ほどまで落ち着いていた勇者様も自分が歓迎されているのは恥ずかしいらしく照れているようだ。


うん、でもごめんね勇者様。


多分この歓声の大半はまともな勇者様でよかった、ていう安堵の声だと思う。


ばれたら不味いので絶対に言えないな。


本にするときはこの日が初めての召喚日だったことにしてもらおう。







一人目……次に呼ばれたときに冒険できるように運動を始める。スマートになり引きこもりオタクを脱却


二人目……ボディビル選手権中突如消えたため途中退場とみなされ敗退。本人は全く気付かなかったため筋肉の鍛えが足りなかったとより一層磨きをかけることになる。


三人目……あやうく心臓が停止しそうなタイミングで召喚される。召喚と送還の影響で心臓が再び活動ししばし余命を伸ばす。


四人目……男性らしい恰好が好みでおしゃれなど気にしていなかったが生まれて初めてドキドキするような事を言われて意識し始める。おかげで十人中九人が可愛いと認めるほどになり声もかけられるようになるが本人はしばらくの間、またあの人に会いたいな、なんて夢見る少女を継続中。


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