【第6章】 偽りの策士と、迫る真の策士の影
「ふぅ……満足した?」
呆れたような、でもどこか面白がっているような秋也の問いかけに、私は満足気にお腹から手を離した。
「うん、ありがとう! さあ次! さいしょはグー、じゃんけんポン!」
【勝者】 春樹:グー ✊
【あいこ】 冬香:チョキ ✌️ / 夏向:チョキ ✌️ / 秋也:チョキ ✌️
「よしっ! ひとり抜け!」
「あいこで、ショ!」
【勝者】 秋也:パー ✋
【あいこ】 冬香:グー ✊ / 夏向:グー ✊
「悪いね、あとは頑張って」
ヒラヒラと手を振って勝ち抜ける秋也。
「あいこで、ショ!」
【勝者】 夏向:チョキ ✌️
【敗者】 冬香:パー ✋
「あちゃー! もぉぉ、また私なの!?」
頭を抱えて叫ぶ私に、男子たちの視線が集まる。
私は仕方なく、ブラウスのボタンを上からひとつずつ外していった。パサリと床に落ちるブラウス。
とうとう、重装備の砦だった制服が破られ、下に着込んでいた体操着(Tシャツ)が露わになってしまった。
残っているアイテムは……スカート、体操着上下、そして下着上下。
持っていたカードは残り5枚。さっきまでの余裕が、スーッと消え去っていく。
(やばい……さすがにちょっと余裕なくなってきたかも。もう負けないように気を引き締めないと!)
「いくよ! さいしょはグー、じゃんけんポン!」
【勝者】 冬香:チョキ ✌️
【あいこ】 春樹:パー ✋ / 夏向:パー ✋ / 秋也:パー ✋
「やったーーー!! 初めての1番抜け!!」
私は飛び上がらんばかりに歓喜した。私の勝ち抜けに、残った男子三人が苦々しい表情を浮かべた。
「あいこで、ショ!」
【勝者】 春樹:グー ✊ / 秋也:グー ✊
【敗者】 夏向:チョキ ✌️
「チッ! まあいい」
すでに裸足の夏向は、舌打ちをひとつ漏らすと、勢いよくブレザーを脱ぎ捨てた。
(よしっ! これで夏向は私と同じ条件! もしTシャツの下に何も着てなければ、着衣枚数は私より少ないはず……!)
「さいしょはグー、じゃんけんポン!」
【勝者】 冬香:パー ✋ / 夏向:パー ✋
【あいこ】 春樹:グー ✊ / 秋也:グー ✊
「「よしっ! 調子が出てきたぞ!」」
夏向と綺麗に声がハモる。二人でニヤリと顔を見合わせた。
「あいこで、ショ!」
【勝者】 秋也:グー ✊
【敗者】 春樹:チョキ ✌️
「ハハハ! また負けてしまったか。仕方ない、俺の自慢の大腿筋をお見せしよう!」
「いや、足見せる宣言いらんから」
春樹は脱ぎかけのズボンの裾を引っ張り上げようとして、「チッ、上履きが邪魔だな」と眉をひそめた。見かねた夏向が呆れ顔で声をかける。
「ズボン脱ぐのはやめて、先に上履き脱げば?」
「いや大丈夫!」
春樹はバシッと右足と左足の上履きを壁際まで蹴飛ばすと、そのまま豪快にズボンを引き抜いた。
(……何がどう大丈夫なの!? ていうか、上履き蹴飛ばしてまで脱ぐ順番がおかしいでしょ!?)
私の心の中のツッコミをよそに、ハーフパンツ姿になった春樹はバッチリと腿に力を込める。筋肉バカの言う通り、そこには見事にしなやかな大腿筋が浮き出ていた。
さすがの夏向も頭を抱えている。
「……なら、蹴飛ばした上履き履き直せよ」
「いや、そんなものは要らん!」
(……自分、何やってるか分かってるの!? 本当に頭の中身まで筋肉で詰まってるんじゃないでしょうね!?)
完全に脱線の域に入った春樹と夏向のやり取り。
——だが、その横で、秋也だけは一切笑わず、静かにその光景を見つめていた。
いや、「見ている」というよりは……冷徹なまでに鋭い目つきで、何かをじっくりと計算し、考え込んでいるようだった。




