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吹雪とフブキ  作者: 爆進王


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6/22

第6話 新馬戦③・快勝!!

(…どうしよう。先頭とは差が開いているし、馬場も極悪。全馬、内を避けて外、外を回っている。普通に乗ったとしたら、さらに大外を回らないといけない。出遅れが痛かった。挽回する方法が…)




(真白、何を迷っているのだ!!)




(…フブキ、俺にはどう乗ったら勝てるのか…分からない)




(何を言っている。内がポッカリ空いているではないか!!)




(でも…今年は雨が多くて芝の生育が悪いんだ。ただでさえ阪神競馬場の芝は京都競馬場よりも重い。しかもこの大雨で田んぼのように足抜けが悪くて走りづらい)




(馬鹿者!!貴様は我の力を信じていないのか!!)




(し、しかし、常識的に考えて…)




(常識だぁ~、お前が二流騎手の理由が分かったぞ。お前は騎乗した馬の力をまるで信じていない。そして最大の欠点が勝負所で怖がって勝負をしない)




(……………)





 俺はフブキの指摘に言葉を失った。自分でも思い当たる節がある。いや、あり過ぎる。悔しくて歯を『グッ』と噛みしめるが、レースはもう4コーナー手前まで進んでいた。





(分かったよ、フブキ。俺はお前の力を信じる。4コーナーで内に切れ込んで勝負を賭ける!!)




(そうだ、それでいい!!)





 4コーナーを抜ける位置どりで、俺とフブキは最短距離を選択し内へ切れ込む。コーナーでの距離ロスを最小限にとどめる。その結果、直線に入る時には集団に追いつく事に成功した。





(良し!!追いついた。でも…)




(我を信じるのではなかったのか!!)




(!?………あぁ、そうだったな!!)





 俺はフブキを信じ、懸命に手綱をしごく。




 フブキは重戦車のごとく、極悪の馬場を駆け抜けていく。『アッ』という間に他馬を引き離し坂を駆け上った。




 そして2着馬に4馬身もの差をつけてゴールした。




 俺とフブキがゴールした瞬間、観客席はざわついていた。ファンも『まさか、あの出遅れから勝つのか!?』という気持ちなのだろう。しかし間もなく大歓声に変わった。




 検量室前まで戻りフブキから降りると、先生と握手をする。





「出遅れた時には『ヒヤッ』としたぞ!!」




「…俺はフブキを信じていましたから」




「そうか!!とにかく良く勝った。お疲れさん」




「…ありがとうございます」





 俺は後検量のために検量室へと入っていくのだったが、素直には喜べなかった。『俺はただフブキに乗っていただけで何もしていない』そんな思いが心の中で渦巻いていた。






 残念ながらこの後のレースでは騎乗予定がない。明日の日曜日も騎乗予定はない。そういう事で後検量を終えると俺は競馬場を後にする。




 その日の夕食は祝勝会という事で、美雪さん主催の食事会に厩舎のみんなと参加する予定だ。まだ時間的に余裕があるのでSNSなどをチェックする。





「フブキ、ありがとう!!単勝頂きました!!」


「絶対に負けたと思った」


「スノーフェアリーの一回目のエリザベス女王杯を思い出した!!」


「強すぎワロタwww。キタサンの秋天、そのものだろう!!」


「スノーフェアリーっていうより、ゴールドシップの皐月賞じゃね?」


「それなっ!!俺も思った」


「パドックでの立派な『アレ』、今でも目に焼き付いています!!」


「伝説の始まりですね!!」


「極悪馬場専用機かもよ!?」


「ダート馬じゃね?」





 反応はさまざまだったが、多くの感想は好意的なものであった。




 そうこうしているうちに、美雪さんが予約をしているレストランに向かう。





「真白君、今日はありがとう。出遅れた時は負けを覚悟したけど、4コーナーから直線に向かう時の内への切れ込み、素晴らしい判断だったわよ!!」





 美雪さんはワインを手にご機嫌に話す。





「あの時は無我夢中でした。でも、ここから大外に出していたら間に合わない。一か八かでも勝負を賭けようと思って…」




「ふふふっ、分かるわ。ビジネスでも成功する人間は勝負ができる人間よ。勝負所を見極められない人間は決して成功する事はできないわ」





 俺は美雪さんの言葉を聞きながら『グッ』と唇をかみしめる。




 フブキにも同じ事を言われた。俺はフブキのいう通りにしただけ。自分の不甲斐なさを思い拳を握り締める。





「どうしたの?」





 美雪さんが俺の顔を覗き込む。





「いえ、今日は勝ちましたけど出遅れましたし、まだまだ俺は力不足です。がんばりますので、これからもよろしくお願いします!!」





 俺は頭を下げる。





「ふふふっ、よろしい!!私はクールで感情に流されない女と思われているんだけど、意外に人間関係を大切にするのよ。実益を考えるなら一流ジョッキーに替えた方が合理的だと思うけど、これからもフブキちゃんの事は真白君に託すわ。純白軍団のメンバー変更はなしよ」




「美雪嬢、それがいい!!なぜだか分からんが、フブキは真白以外の人間を乗せようとしない。無理やり鞍上を替えても良い事は何もないと思う」




「ありがとうございます!!」





 俺はお礼を言い、再び頭を下げるのだった。





「ところで美雪嬢、次のレースの事なんだが…」




「まずは白井先生の意見を伺いますわ」




「成長を促すために、一旦牧場に返す事も考えたんだが…。おそらく牧場に返しても良い事はない。厩舎に留めてじっくりと秋まで乗り込んでいきたい。次のレースは…11月の東京スポーツ杯2歳S(GⅡ)か京都2歳S(GⅢ)。もしくは…年末のホープフルS(GⅠ)あたりと考えている。どうかな?」




「…ホープフルS………GⅠ」





 俺は先生の言葉を聞いて身震いをしたのだった。

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