第21話 フブキ復活!!
「とりあえず、真白が言う失恋話を信じるとする。美雪嬢が買い取って、来春フブキと種付けをするのもいい。でも、二人とも忘れてないか?フブキは馬だぞ。話しても分からんだろうに…」
先生が呆れ気味に言う。
「任せてください。俺がフブキに伝えますよ!!」
「お願いするわね。セクシーボイスちゃん以外にも、何頭か私のほうでも牝馬を用意するからね」
「フブキはお尻フェチみたいなので、お尻が大きい繁殖牝馬を用意してくれると喜ぶと思います」
「まあ!?フブキちゃんったら、エッチ!!」
俺と美雪さんが二人で盛り上がる。だが、そんな俺たちを先生は半笑いで見ている。
完全に『こいつら、何言ってんだ!?』という目をしている。
「それじゃあ、真白が今決まった事をフブキに伝える。それでもフブキの走る気が戻らなかったら、有馬記念を回避して引退する!!いいですね!!」
先生は半ば切れ気味に言う。
「真白君、お願いね!!」
「お任せください!!」
俺は美雪さんとガッチリ握手を交わし、緊急会議は終了したのであった。
次の日…
「フブキ、調子はどう?」
「…真白か」
「熱発は収まったんだろう?馬場入りしようぜ!!」
「我には、もう…走る理由が見つからぬ。放っておいてくれぬか」
「…セクシーボイスの消息がつかめた」
下を向いていたフブキが、ピクリッと耳を動かした。
「今、北海道にいる。廃用寸前だったが、美雪さんが探し出して購入した」
「本当か!?嘘なら許さんぞ!!」
「本当だ。俺がフブキに嘘などいうか!!」
「ふふふっ、あの女馬主もやりおる!!またセクシーボイスに会えるのか。こんなに嬉しい事はない!!」
「会えるだけじゃないぞ。今、美雪さんの所有馬になったといっただろう。美雪さんはお前との種付けのために、セクシーボイスを購入したんだ!!」
「な、何とっ!!」
「どうだ?フブキ。たぎってこないか?」
「わ、わはははっ!!真白、たぎってきおったわ!!」
フブキが見事なまでの、馬っ気をたぎらせる。
俺はそれを見て、フブキの復活を確信する。
「さあ、走ろう!!有馬記念を勝って、気持ち良く北海道に帰ろうぜ!!」
「心得た!!」
俺はフブキを馬房から出し、坂路へと向かった。
俺はフブキに跨るが、一向にたぎらせた馬っ気が収まる気配がない。
「フブキ、たぎらせすぎ!!種付けは来春だよ。気が早い」
「分かっておるわ!!しかし、抑えられぬこの気持ち。お前にも分かるであろう?」
「まあ、分かる…が、そのままでは走れない。自嘲しろって!!」
「…善処しよう」
俺はフブキの馬っ気が収まるまで馬上で待ち、軽快に坂路を駆け上がっていった。
「真白、どういう事だ!?何があった!!フブキが走る気満々だったじゃないか!?」
「だから『来春にはセクシーボイスと種付けできるよ』って伝えただけですよ」
「いやいやいや、分からんだろう?お前、いつから馬語を話せるようになったんだ?」
「馬語は話せないですけど、意思が通じる感じがするんですよ」
「…そうか。にわかには信じがたいが、走る気が復活してくれたんならそれでいい。有馬記念まであと三週間、真白、休んだ分、取り戻すぞ!!」
「はい!!」
俺はフブキの首を撫でながら、ラストランとなる有馬記念にベストの状態に持っていく事を誓う。
『フブキ復活!!有馬記念に出走!!』というニュースが駆け巡る。
師走の日本中が盛り上がる。
連日、スポーツ新聞の一面を飾り、ネットでも話題を独り占めにする。
追切も無難にこなし、いよいよラストランになる、有馬記念の当日になった。
中山競馬場は良馬場。しかし、上空は雪雲に覆われていた。朝から雪がチラつき、天気予報では夕方から大雪になる模様だという。
(フブキにはいい条件で走らせたい。有馬記念の11レースまでは降らないでくれ!!)
俺はやきもきしながら上空を見上げる。
前検量をすまし、北風が吹き荒れるパドックへとやってきた。
「真白君、白井先生から話は聞いてるわ。フブキちゃんに伝えてくれたのね。ありがとう。心から感謝します。それから、とにかく無事に…ね」
「最善を尽くします!!」
「真白、もうお前には何も言う事はない。全てお前に任した!!」
「信頼してもらい、感謝します」
「ふっ、成長したな!!」
俺は二人とグータッチを交わし、フブキに騎乗する。
(おい、真白。セクシーボイスの事、女馬主に礼を言っておいてくれ。褒めて遣わす、とな!!)
(その言い方…ほんとにお礼なのか?)
(我から声をかけてやるのだ。本来はそれだけでも栄誉な事なのだぞ!!)
(…まったく、フブキは意外とツンデレなんだね!!)
(だ、誰がツンデレなのだ。からかうでないわ!!)
(はいはい)
俺は美雪さんにフブキが感謝していると伝える。
美雪さんは『まあ、嬉しい!!もう一頭くらい、お尻の大きな牝馬を用意しようかしら!!』と、上機嫌になる。
俺は苦笑いをし「じゃあ、豪華な祝勝会を期待しています!!」と言って、フブキを促し本馬場へと向かうのであった。




