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吹雪とフブキ  作者: 爆進王


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22/22

最終話 猛吹雪の有馬記念

 本馬場へ出ると、大歓声が俺とフブキを迎えてくれた。




 返し馬に入ると雪がチラついてきて、一段と風が強くなってきたと感じる。





(雪で前が見づらいな。フブキは大丈夫か?)




(うむっ、今のところは大丈夫であるが、さらに雪が強くなると、視界が悪くなるであろうな。だが、それは全馬同じ条件である。問題ない)





 俺はゴーグルを付けるが、少しマシになるというくらいで、視界が悪い事に変わりはなかった。




 ゲート前で輪乗りを行うが、刻一刻と雪が強くなってくる。




 誰もが『これ以上、雪が強く降る前にスタートしてくれ!!』と願う。




 ゲート入りが始まる。




 フブキは大外16番、最後まで待つ。




 15頭のゲートインが完了して、最後にフブキがゲートに入った。




 ゲートが開く。




 全馬が3コーナーに殺到すると同時に、猛烈な雪が馬郡に襲いかかってきた。





(真白!!前が見えんぞ!!どうするんだ!?)





 フブキが叫ぶ。





(落ち着け。とにかく、内ラチを頼りに進むしかない)





 俺はフブキを内に内にと誘導し、内ラチピッタリを進んでいく。




 直前を走る馬の姿は確認できるが、その馬より前の馬は姿も見えない。ただ、後ろから来る馬の気配もない。




 どうやら、フブキは最後方を、走っているようであった。





(フブキ、俺たちは最後方のようだぞ!!)




(最後方は問題無いが、先頭を走る馬との差が分からん。どうするんだ?)




(問題ない!!)




(問題ない!?分かるのか?)




(普通に考えて全馬、恐る恐る走っているに違いない。そんなに差はないはず。フブキ、お前は平常心を保って、のんびりと走っていればいいよ!!)




(ふふふっ、今日の真白は何やら頼もしいな!!)





 俺とフブキは4コーナーを回り、正面スタンド前へと入っていった。




 おそらくファンも状況が把握できていないのだろう。 歓声…というより、どよめきが巻き起こる。





(ふふふっ、観客も戸惑っておるわ!!)




(はははっ、たぶん何も見えてない!!)




(JRAも入場料を返さんといかんぞ!!)




(圧倒的一番人気で、ファン投票一位のフブキが勝てば、ファンも許してくれるさ!!)




(っであるな!!)





 そんな会話をしながら正面スタンド前を駆け抜け、1コーナーから2コーナーを回り、向こう正面に入っていく。




 向こう正面では、強烈な向かい風が吹き荒れる。短時間で積もった雪が舞い上がり、さらに空からは猛烈に雪が降るという、まさに猛吹雪。





(全く見えん!!真白、どうするんだ?)





 フブキがじれ始める。





(どうもしない。今はじっと耐える時間だ)




(耐えるって…お前!!目を閉じているじゃないか!?)




(どうせ見えないんだから、目を閉じても問題ないだろ?逆に雪に惑わされず、冷静な判断ができる。フブキも目を閉じてみな。俺には全馬の姿が見えてるよ。手に取るように他馬の息遣い、手ごたえまで分かっている)




(………真白よ、成長したな!!)




(ふふふっ、その言葉、勝ってからもう一度聞かせてくれ!!)




(心得た!!お前の指示に従おう。我はハミに集中する。いつでもゴーサインを出してくれ!!)





 最後方のまま、3コーナーに入る。





(フブキ、4コーナーに入って4のハロン棒を通過したら、徐々にスピードを上げてくれ。いいか、一気に上げるなよ。徐々に、徐々にスピードを上げて4コーナーを回りきったところで、大外に進路を取るんだ)




(了解した!!)





 フブキはハロン棒を過ぎたところから、少しずつスピードを上げていき、持ったままで内の馬を交わしていく。




 そして4コーナーを回ったところで、大外に進路を取る。





(よし!!真白、行くぞ!!)




(まだだ!!あとワンテンポ待て!!三秒待つんだ!!)




(くっ!!じれったい!!)




(3・2・1、行け!!フブキ!!末脚を爆発させろ!!)




(おうよっ!!!!!)





 フブキが中山の直線を、まるで飛ぶように駆け抜けていく。それは、天まで昇るように、地の果てまで駆けていくように、大外を突き進み、他馬を置き去りにしていく。




 急坂を駆け上がると、猛吹雪が嘘のように収まる。




 突然、ゴール前にフブキが姿を現し、大歓声が巻き起こる。




 俺とフブキの前には馬はいない。少し振り向くと、7馬身後ろに二番手の馬が見えた。ゴールまでの僅かな距離でさらに差を広げる。




 フブキは二着の馬に大差をつけてゴールを駆け抜けた。





(勝ったぞ!!フブキ!!)




(うむっ!!素晴らしい騎乗であった)




(全部フブキ、お前のおかげだよ!!)




(そんな事は無い!!お前はすでに一流の騎手である。自信を持つがよい!!)




(ありがとう。俺の事を認めてくれるんだな)




(当然である。これで我も思い残す事もなく、種牡馬生活を送れるというものである!!)





 俺とフブキは正面スタンド前に戻ってきた。




 雲の隙間から日が差し込み、フブキの馬体を照らす。




 フブキの馬体は白金のように、キラキラと輝く。




 静まり返る中山競馬場 。誰もがその美しい馬体に見惚れている。




 


「…フブキ」




「吹雪!!」




『フブキ!!』




『吹雪!!』




『フブキ、吹雪!!!!!』





 静寂の後、割れんばかりの、大フブキ(吹雪)コールが巻き起こる。





(わはははっ!!真白、我を称賛する声を聞くがよい!!)




(何を言っている?これは俺の苗字、吹雪を称賛する声だよ!!)




(馬鹿を言うな!!我への声である!!)




(いや、俺だね!!)




(まあ、良かろう。我とお前は一心同体、無二の親友である)




(…あぁ、そうだな。セクシーボイスとの子。楽しみにしているぞ!!)




(うむっ!!よろしく頼むのである!!)





 フブキは7戦7勝の戦績を残して、ターフを去ったのであった。





 完

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