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離れの若様  作者: 真木
6/7

正月

「明けましておめでとうございます。」

 滅多にこない看護婦が新年の挨拶をしに回ってきた。

私は、とうとう病院で年を越したのだった。

「明けましておめでとう。今年もよろしくお願いするよ。」

「はい。こちらこそよろしくお願い致します。」

 我々も一応、新年の挨拶をしておく。

それにしても今日の智香子はどことなく嬉しそうだった。何かあったのかと聞くと智香子は良い話がありますと笑って答えた。

「実は退院の目処がつきました。」

しばらく、私を焦らすように黙った智香子は嬉しそうにそう言い今後の予定を話し始める。

それによれば、私の病は完治したわけではなく、退院できるというのは、呼吸器や点滴の世話にならないでも済むまでは回復した。伝染りもしないし自宅療養を、ということらしい。ここにいても、どっちも使わなかったじゃないかと言いたいが、やはり家に帰れるのは喜ばしい。

最後に智香子は今まで黙っていたことを詫びるのを忘れなかった。私をびっくりさせたかったから、医者にも、たまに来る看護婦にも緘口令を引いたというのだ。

しかし、智香子の想像とは違い、私が抱いた感情は驚きではなかった。

「ありがとう。智香子のお陰で、いままで何不自由なく過ごせた。」

「いえ。私も無事、退院できることになって嬉しいです。離れにもたまには伺ってもよろしいでしょうか。」

私の言葉に慌てて、そう言った智香子の頬が寂しげにほんのり赤くなった。そうか。退院すれば、智香子はまた店の仕事に戻るのだ。私の世話は門番の五助がやるのだろうか。

「もちろんだよ。いつでも来てくれ。」

私の言葉に智香子は安心したように微笑んだ。

しかし、智香子の笑みの裏で私は違うことを考えていた。


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