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離れの若様  作者: 真木
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霜月

11月になると各病室にストーブが配られ、すっかり寒くなった。

私の病は、また小康状態に落ち着いた。

治ってきているのかと医者に尋ねたら、6月よりはマシだと言われた。

ところで、この所、智香子は毛糸で何か編んでいる。女中たちは、自分たちで靴下やら手袋やらを毛糸を使って作り、寒い冬を乗り切るものらしい。

そんな智香子の手元を今日も飽きずに私は見ていた。この間、智香子に私の手元がそんなに面白いですかと言われたので、線だった糸が巧みに編まれ面になっていく姿が面白いといったらやっぱり大学出の方は面白い表現をなさいますねと笑われた。理屈っぽいという事なのだろうが、だから、それ以来、黙って見ている。突然、智香子が編むのをやめた。編み棒がそのままなのをみると編み上がったわけではないらしい。

「なぜ、やめたの。」

「そんなにじっと見られては続けられるものも続けられません。」

智香子は立ち上がってストーブの上のヤカンに水を足した。

「そう言えば、医者が6月よりマシと言っていた。」

「ええ。お話は伺っています。お顔の色も大分良くなりましたし。お医者様もお心持ちが変わったからではないかと仰っておりました。」

「医学は化学の最たるものだろうに心持ちなんて。」

私はそう言って笑った。

「確かにそうですね。でも、確かに悲しそうに窓の外をご覧になっている時間も減りましたし。『病は気から』あながち間違っているというわけではないかもしれないですね。患者さんからしたら少し無責任な発言ですけど。」

と智香子も笑う。しかし、私はそんなに悲壮な顔で窓ばかり見ていたのだろうか。

「今はどう?」

智香子は、それをお聞きになりますかとまた笑った。

「編み物を熱心にご覧になっているのじゃありませんか?」

これは一本取られたなと私はまた笑った。智香子もつられて笑った。



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